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「自社らしさを活かしてCS・EXをつくる」
第4回:顧客接点において人がやるべきは状況判断による個別応対
シニア・コンサルタント 渡邉 聡

■“真実の瞬間”から人がいなくなりつつある

 かつて、ヤン カールソンが“真実の瞬間”と呼んだ顧客接点に大きな変化が起きています。それは、人的応対が少なくなりつつあるということです。私たちの周りを見渡してみても、サービス業を中心に顧客接点は機械化・自動化、バーチャル化、セルフ化といった変化が起きています。

 <機械化・自動化>
 ATM、ETC、駅の改札、飲食店でのオーダーや支払いなど、かつて人が対応していたことが機械化・自動化された例は数多くあります。

 <バーチャル化>
 ECサイトでは、そこにある店舗はもちろんバーチャルです。アバターなどもバーチャルです。VRやARも普及し、リアルからバーチャルへの変化は加速しています。

 <セルフ化>
 無人店舗も増えてきました。入店→買い物→支払い→退店のプロセスを全く人がかかわらなくてもオペレーションできるようになってきています。
 このように人が応対しない顧客接点は、企業にとって人件費の抑制や応対クレームの削減といったメリットがあります。では、顧客にとってもメリットのあることなのでしょうか?

■人が応対しないことの顧客メリット

 人が応対しない顧客接点は、顧客にとってもさまざまな良い点があります。

 ・正確でスピーディ…精算や情報提供など、機械やシステムのほうが正確でスピーディなことが多い。
 ・学習システムによるカスタマイズ…利用履歴によるリコメンドなど、システムのほうが数多く提供できる。
 ・バラツキなし…人と違い、自動販売機やATMは機械によってサービス品質に差がない。
 ・接客不満なし…「機械的な応対」とお叱りを受けるのは人。機械やシステムへの応対不満は少ない。
 ・お客さま主導…24時間365日対応であれば、営業時間も休業日もなく、顧客の好きなタイミングでサービスを受けることができる。
 ・ロープライス (ローコスト)…結果として価格が下がれば顧客にとっては大きなメリットとなる。

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 人が応対しない顧客接点には、顧客にとってもさまざまなメリットがある中、それでも人が応対する意義はどこにあるのでしょうか?

■人が応対する意義は「状況判断による個別応対」

 機械やシステムによるサービス提供は、「依頼されたことを正確・スピーディに遂行する」ことや「過去の履歴や関連データにもとづいて提案する」ことが中心です。逆に言えば、人がこれ以外の価値を提供できないのであれば機械やシステムの応対に敵わないことになります。人が提供すべき代表的な価値の一つは、「状況判断による個別応対」と考えます。顧客の状況や心情、真の期待を察して、それに応じて個別に応対することです。

 そもそも、接客応対に“正解”はあるのでしょうか?例えば、丁寧にいろいろと説明してほしいと希望する人もいれば、必要最小限のことだけ説明してほしいと希望する人もいます。さらに、同じ人であっても状況によってどちらを希望するか異なることもあります。これが正解の応対というOne Best Wayがないのであれば、目の前の顧客に個別最適解を提供する以外に人がやるべきことはないのです。

 この状況判断による個別応対を実践するためには、「状況を判断するスキル」と「個別応対をするための応対のバリエーションを身につける」の2つが求められます。

■期待察知スキル

 顧客の状況を判断するためには、さまざまな「手がかり」を使います。対面であれば、服装や言動などから判断できることがあります。電話やリモートであっても使える手がかりはあります。
 例えば、電話やリモートの向こうから赤ちゃんの泣き声が聞こえても聞こえなくても同じ応対しかできないのであれば、それは人がやるべき応対ではありません。そして、もっとも重要な判断は顧客の期待を察知することです。
 
 例えば、ある駅員さんが、「●●線は何番線ですか?」とお客さまから尋ねられたとします。その時、「●●線は3,4番線です。■■方面は3番線、▲▲方面は4番線です。」という案内でよいでしょうか?まず判断できることの一つは、●●線を使うことに慣れていない、詳しくない人ではないか、ということです。そして、本当の目的はなにか?ということが重要です。●●線に用があるのではなく、どこかの駅、さらにはそこからどこかに行くことが真の目的と考えられます。
 この2つから察することができるのは、「慣れてない人が尋ねている●●線に本当の目的である降車駅はあるのか?●●線がベストの選択なのか?」ということではないでしょうか。
 そうであれば、先ほどの番線を案内した後に、「差し支えなければ、降車されるのは何駅でしょうか?」といったことを付け加えると良い可能性があります。
 もちろん、これが正解ということではありません。ちょっと忘れてしまって確認したい、詮索されたくないといった様子が感じられれば、あえて聞かれたことだけ答えるという選択肢もあるでしょう。どちらにするか、その状況判断が重要ということです。
 また、お客さまは、「A駅に行くには、どの電車に乗ればいいですか?」と尋ねればよかったのですが、この例のように質問することは少なくありません。
 つまり、お客さまが尋ねていることは本当に知りたいこととは限らないということもあるのです。したがって、期待察知をすることが求められます。感じ良く、聞かれたことに答えるだけでは不十分なことがあるのです。

■期待察知スキルの高め方


 期待察知スキルを高めるには「ケーススタディ」が効果的です。ここでいうケーススタディとは、「実際にあったこと、ありそうなことを取り上げ、その時自分ならどうするか?を話し合う」というトレーニング方法です。

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 例えば、「すでに接客中なのに別のお客様から"すみません..."と声をかけられました。あなたならどうしますか?」とケースを投げかけます。この場合、次のような意見が出てきたとします。

 Aさん:手の空いている人に応援を頼みます
 Bさん:今、接客中なので少し待ってほしいと言う
 Cさん:声をかけてきた人の用件を聞き、急ぎや簡単な用件であれば応対する
 
 こういった意見に対して、やりとりをしながらさらに気付きを深めていきます。

 例えば、Aさんに対して「全員手がふさがっていたらどうする?」やBさんに対して「簡単な用件なんだけど、急いでいるからなんとかならない?と言われたらどうする?」といった投げかけをします。 こういったやりとりにより、「顧客がどういう状況なのか?どういう期待を持っているのか?」といった期待察知スキルを磨き、同時に仲間の応対方法を共有することで、「どういうやり方や言い方があるのか?」といった応対のバリエーションを増やすことも可能です。

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 毎日のちょっとした時間をつかって行うことも可能です。短時間×多頻度のトレーニングで期待察知スキルや応対のバリエーションを高めていくことをおすすめします。
 JMACでは、状況判断による個別対応を実現するための研修を実施しています。
 ※真実の瞬間、ヤン カールソン(著)・堤 猶二 (訳)、ダイヤモンド社、1990/3/1

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コンサルタントプロフィール

経営コンサルティング事業本部 CX・EXデザインセンター
シニア・コンサルタント
渡邉 聡(わたなべ さとし)  

わたなべさん

CS・マーケティング領域で20年以上のコンサルティング経験を有する。
主な支援テーマは、マーケティング戦略立案、新商品・サービス開発、サービスデザイン、CS経営推進、サービス生産性向上、サービス品質マネジメントなど。

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