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外国人材も活かすためのダイバーシティ経営を実現するために
第2回:外国人材を経営に活用してゆく上での留意点
パートナーコンサルタント ダオ・ユイ・アン

■ はじめに

 前回では、外国人材がポテンシャルの高い「経営資源」という点に触れました。今回は、外国人材を経営資源として活用してゆく上での留意点について述べてみたいと思います。

■ その1:「労働力以前に人であること」の前提認識

 この点について、当たり前といえば当たり前ですが、意外と見過ごされる点であります。どんな立場でも、来る外国人材はみんな夢と期待を背負って日本に来ているのです。夢を実現するために頑張ろうとする人たちですので、きつい仕事も我慢して頑張ろうとしますが、「人」でいるゆえ、我慢の限界というものもあります。従って、日本人のやりたがらない仕事内容、あるいは嫌がる仕事環境を外国人が長く勤めてくれることを期待することが、彼らの「人」の側面を見過ごすことになります。
 
 また、外国人材を経営に活かすということは彼らと長く付き合っていくことになります。そのためには、人間同士の信頼関係を構築する作業が必要なので、この認識が大前提になります。

■ その2:日本語リテラシーの違いによるコミュニケーションロス

 外国人材は日本語が話せるといっても母国語レベルではないので、日本語リテラシーは日本人とは違うということを理解する必要があります。日本語の学習方法とかける時間について日本人と外国人の間に決定的な差があり、この差がなかなか埋まりません。

 この差の一番分かりやすい事例は言葉のニュアンスの感じ方です。私には苦い経験があります。大学の友人(日本人)と会話している時の出来事でした。テスト勉強が大変という話を友人が話したところ、私は応援するつもりで「精々頑張って」と応じたら、友人に怒られました。私は、辞書で調べて精々が精一杯や力限りの意味があると書いてあったから、その意味で言ったつもりだと友人に説明してなんとか理解してもらいましたが、友人との会話を通じてそのフレーズには「上から目線」のニュアンスがあるということを初めて知りました。私の例のように、本や辞書で言葉を学習しても、実際にその言葉を使わなければ、言葉が持っているニュアンスを理解できない外国人が多いのではないでしょうか。私の場合、仲のいい友人だったからちゃんと教えてもらいましたが、顔も見たくない絶縁状態になっても仕方ない「大事故」というところでした。
 
 因みに、言語が不自由であることと能力とは別の問題ということも言及しておきたいと思います。言語学習の時間や経験値が浅い場合は言語の不自由は仕方ないのですが、本人の努力と周りの温かいサポートにより状況が改善できるのです。
 
 ところで、実はこの日本語リテラシーの違いによる壁は外国人材側だけの事象ではなく、周りにも存在し得るものです。例えば、前者は外国人材が自分の日本語でのコミュニケーション能力に自信を持てず、積極的に周りとの会話に参加しない場合ですが、後者は周りが「どうせ分からないだろう」と、外国人材に教えたり、話したりすることを諦めてしまう場合に当たります。壁が存在すると、結果的に外国人材はチームの一員のなれず、孤立してしまうのです。その状態に陥ってしまうと、外国人材はモチベーションを維持することが難しくなり、最悪の場合は離れてしまいます。

■ その3:バックグラウンドの違いによる誤解・すれ違い 


 当たり前といえば当たり前ですが、バックグラウンドの違う人同士にとってお互いの言動が「ちょっと変!」という時があって当然なことです。なぜならば、一方の当たり前が必ずしも他方の当たり前ではないからです。同じ「手で食べる」という行為ですが、場所がニューデリーから東京に変わった途端、周りの反応が違うというのを容易に想像できるのでしょう。従って、バックグラウンドの違う外国人材が「変な言動」をとった場合に、怪訝そうな顔で反応する前に、なぜその人がそのような言動をとったのか確認するようにしましょう。

 また、バックグラウンドが違うというのはお互い様なので、日本人の言動が外国人材にとって「変」となっている場合もあります。私は日本に来たばかりの時に、どうしても理解できないことがありました。それはお笑いの突っ込みの「頭たたき」です。ベトナムでは、頭を叩くのは失礼に当たり、タブーとされているからです。自分はお笑いが好きですが、そういう突っ込みは嫌ですし、絶対にされたくないと思いました。20年以上経った今はテレビを見て、「頭たたき」がお笑いの一部として理解できていますが、やはりされたくないものです。

■ その4:曖昧さから生まれる不安 


 日本人同士では、「阿吽の呼吸」や「以心伝心」という言葉で表されるように、言わなくてもお互いが理解できる独特な「合意状態」があるように思います。しかし、外国人材にとってその曖昧さが戸惑いや不安の元になりうるという認識を持って頂く必要があります。特に業務目的や期待される成果・ゴール等は本人の目標設定やモチベーション維持と直結する部分があるため、これらについて曖昧さがあると、目標がぼやけたり、モチベーションが下がったりすることに繋がりかねません。

 私自身の体験ですが、勤めていた会社がリーマンショックをきっかけにベトナムを含めた海外展開計画を当分凍結することを決めたことで、目指すべきゴールを見失ってしまい、ものすごい不安に襲われたのです。モチベーションも徐々に下がっていきました。その中で、自分の強みとは何かを考えるようになりました。気づけば、「ベトナム」と関わらない日々を送っていました。久しぶりに家族と連絡する時は、ベトナム語でうまく説明できない自分がいて、ショックでした。「ベトナム」が自分のアイデンティティの一部だとすれば、このままの生活では自分を見失ってしまうと危機感を抱きました。ちょうどそのタイミングに、ベトナムと日本との懸け橋を目指す会社を作ろうという誘いが舞い込んで、思い切って飛び出しました。その会社が今の会社、COPRONA㈱です。

■ 今回のまとめ: 

 上記において、外国人材を経営に活用してゆく上での4つの留意点を紹介しました。そういった留意点を配慮し、外国人材が「人」であるという原点に立ち、日本語リテラシーの違いやバックグラウンドの違いによるコミュニケーションロスや誤解・すれ違いが発生する可能性が常にあるということを理解した上で、彼らが不安にならないように意思相通をしっかりと図り、曖昧な部分を排除する努力をすることが課題として浮かび上がってくることを理解して頂けると思います。次回の3回目はこの課題解決について述べさせて頂ければと思います。

ダオ・ユイ・アン のコラム 前号(第1号)はこちらから

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コンサルタントプロフィール

日本能率協会コンサルティング パートナーコンサルタント
COPRONA株式会社 代表取締役社長
ダオ・ユイ・アン

ダオ・ユイ・アン

ベトナム・ダナン出身、高校卒業後来日
東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学研究科建築専攻修士課程修了
日本で5年間企業勤務後、COPRONA株式会社の設立時から参画し、2013年6月より同社代表取締役社長
現在は、NPO法人アジア中小企業協力機構理事を務めるとともに、2018年よりJMACパートナーコンサルタント
日本企業のベトナムビジネスの展開、ベトナム企業と日本企業との連携促進、ベトナム人材採用をサポート
2020年には有料職業紹介業の許可を取得し、事業を拡大

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