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プロフィット・デザイン2.0 ~持続的な利益をデザインする~
第7回:様々なプロフィット・デザイン ~その2~
シニア・コンサルタント 横山 隆史

■はじめに

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 プロフィット・デザインは、これまでの戦略・計画立案における手法やプロセスに限界を感じ、昨今の厳しい経営環境下においても持続的に利益を獲得している企業を研究し、新たな戦略発想の基軸として提唱したものです。 
 初版から10数年の時間が経過しましたが、たくさんのクライアントから支持を頂いており、また昨今の厳しい社会・経済環境に対応していくためには必要不可欠となる考え方だと自負しております。

 今般、社会・経済環境の変化に合わせて若干の加筆・修正を行ったものを、本コラムにて計8回にわけてお届けします。

3.フリーのモデル

「無料」 には別の経済がある
 「無料」 という表示に弱い消費者は多いのではないでしょうか。顧客に支払の負担がない 「無料(フリー)」 において、顧客は有料の際とはまったく異なる行動をとると言われています。
 これまで、経済学やマーケティングの世界において、価格はあくまで値段のあるものであり、「無料」 という世界は考慮していませんでした。ですが、この 「無料」 を武器とするビジネスが登場してきています。
 
 「無料」 は購買における顧客の行動を劇的に変化させます。たとえ 「1円」 であっても値段が付いている場合、顧客には費用対効果を考える負担が強いられるのです。また、支払が発生することで煩雑な手間も増えてしまいます。例えば、インターネット上に魅力的なコンテンツがあったとします。「無料でダウンロード」 と 「1円でダウンロード」 では、ダウンロード数が劇的に異なるであろうことは容易に想像できます。つまり、「無料」 は顧客にとって “支払う” という障壁を取り払う強力な要素が含まれているのです。


「無料」でもビジネスが成立する
 「チャージ要素」 でも説明致しましたので、「無料」でもビジネスが成立することは容易に想像できると思います。

  負担者を変える
  課金の対象を変える
  一部の顧客を無料にする

 が該当してきます。「負担者を変える」 ことができれば、その製品・サービスを利用する顧客は 「無料」 の恩恵を受けることができます。また、「課金の対象を変える」 ことで、製品・サービスの一部は 「無料」 で利用することができるようになります。
 
 もっとも興味深いのが、「一部の顧客を無料にする」 でしょう。この場合、その一部の顧客は永久に無料で利用できる可能性があるからです。このようなビジネスが成立しやすい条件としては、

変動費が限りなくゼロに近い

 ことがあげられます。顧客が一人増加すると、それに伴って変動費が一人分増加することになります。この 「変動費一人分」 が限りなくゼロに近いコスト構造の場合、どれだけ顧客が増えても変動費は限りなくゼロに近いまま、ということになります。一部の有料顧客で固定費が賄えるようならば、一部は無料でサービスを提供しても問題とならないはずです。
 
 このようなコスト構造は、デジタルの世界が当てはまります。ダウンロード件数がどれだけ増えても、変動費はほとんど変わらないでしょう。それならば、まずは無料で利用者を集めて、その一部が有料顧客へとアップグレードしてくれれば、ビジネスとして十分成立するのです。【図13参照】

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4.“場” のモデル

利害が異なる二者を結びつける
 利用者と供給者、情報を提供する側と活用する側、といった具合に、

 利害が相反する二者を結びつける “場” を提供する

 ことでプロフィット・デザインを実現するモデルを「 “場” のモデル」と呼んでいます。【図14参照】

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 事例から考えるとイメージしやすいでしょう。楽天は商品を販売する側と購入する側に “場” を提供することでビジネスを成立させています。料理レシピを提供する 「クックパッド」 は、レシピを供給する側と活用する側に “場” を提供しています。アップルは開発コードを公開することで、アプリを開発する者に “場” を提供しています。
 
 このようなモデルは、デジタルの世界だけとは限りません。リクルートのビジネスが典型的であり、飲食店情報を提供する 「ホットペッパー」、住宅情報を提供する 「SUUMO」 等を提供していますが、いずれも情報の供給者と利用者を結び付ける “場” を提供しているのです。
 
 ポイントはやはり、利害が異なる二者を結びつける、という点にあります。ですので、一般的な会員ビジネスはこの “場” に該当しません。会員はあくまで一つのまとまりであり、それに対してサービスを提供する企業、という具合で、あくまで1対1の関係にすぎません。もし楽天が自ら商品を調達し、自ら販売するのであれば、通常のネットショップと何ら変わりがありません。「楽天市場」 という “場” に、購入する側だけでなく販売する側も乗せていることで、“場” として機能するようになっているのです。
 
 また、質問の多い 「プラットフォーム・モデル」 との違いをここで説明しておきます。「プラットフォーム・モデル」 はあくまで1対1の関係にすぎません。プリンタもスマートフォンもプラットフォームではありますが、あくまで1対1の関係となっています。一方、「 “場” のモデル」 の場合は、1対多の関係になっています。この点が決定的な違いとなっています。


「場」 では、顧客の “関係性・つながり” をロックできる
 ロック要素のところでも説明しましたが、顧客が有している “関係性・つながり” をロックできれば、顧客のスイッチング・コストを劇的に高めることができます。「 “場” のモデル」 では、この “関係性・つながり” をロックできる可能性がとても大きいのです。
 先に説明しましたSNSが典型的な事例で、例えばフェイスブックは顧客相互の関係性をロックしているサービスです。利害が異なる二者を “場” に乗せているからこそ、強いロック要素を勝ち得ることができるのです。
 
 さらにこのモデルは期待できる効果があります。それは「ネットワーク効果」「外部経済性」 と呼ばれる効果であり、収穫逓増の法則が働くことからも、ビジネスの規模を乗数倍で飛躍させる可能性を秘めています。
 
 フェイスブックの事例で説明します。フェイスブックの登録会員数が増加すればするほど満足度が高まるのは、新たに加入した会員となるのです。つまり、会員数が増加するほど、会員になっていない人に 「フェイスブックを利用した方がいいかもしれない」 と思わせることができるのです。逆を言えば、会員数1名の場合はフェイスブックのようなビジネスは成立できません。誰とも関係性が持てないのですから。
 このように、「 “場” のモデル」 においては、「ネットワーク効果」 を発揮させることを意図したビジネス展開が要求されます。
 

>> 「第6回:様々なプロフィット・デザイン」はこちら

>> 「第8回(最終回):プロフィット・デザインの社会性」はこちら

>> 関連する研修:「プロフィット・デザインを活用した新規事業発想研修」

コンサルタントプロフィール

経営戦略事業部 シニア・コンサルタント
横山 隆史(よこやま たかし)

横山さん

政府系金融機関で、営業・審査業務を経験し、当社入社。
前職での経験を活かしてアカウンティング・ファイナンス等の分野で強みを発揮しながら、経営戦略、マーケティング等へ領域を広げてきた。
新規事業検討、ビジョン・中期経営計画策定、ビジネスモデル構築、企業/事業再生等といった分野で実績がある。
近年においては、新たなビジネスモデルの概念「プロフィット・デザイン」の普及に取り組むと同時に、次世代の経営人材育成支援に取り組んでいる。

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