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「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント
第1回:「マネジャーは忙しすぎる」~マネジャーのタイム・マネジメント~

シニア・コンサルタント   佐伯 学

第1回「マネジャーは忙しすぎる」
~マネジャーのタイム・マネジメント~


■「アクティブ・ノンアクション」のマネジャー

 最近、「仕事が大変そうだから、マネジャーにはなりたくない」という声をよく耳にします。確かにマネジャーは忙しそうです。自分がやりたい仕事をしているというより、周囲に振り回されている印象です。
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 「ちょっと課長、いいですか?」部下が相談を持ち掛けます。決裁文書がたまっています。なんでも課長が決裁しないと仕事が先に進みません。メールを開くとccメールがあふれていて、すべてに目を通すことは不可能です。出席が義務付けられているミーティングも目白押しです。トラブルがあると、なんでもマネジャーが関わらなければなりません。また最近ではプレイング・マネジャーが多く、自分の仕事もこなさなければなりませんが、十分な時間がとれず、つい残業になってしまうことも少なくありません。

 さらには近年、経営として配慮しなければならない決まり事も確実に増えています。メンタルヘルス、パワハラ、セクハラ、コンプライアンス、セキュリティなど、何をどこまで気を付けても、次から次へとマネジメントすべき事項は増えるばかりです。これではどんなにパワフルなマネジャーも、体がいくつあっても足りないことは明らかですね。

 マネジャーは日々多忙に過ごしているのに(アクティブ)、本当に重要なことには着手できていない状況、本来自分が成し遂げたいと思っていることが脇に置かれている状況(ノンアクション)について、ロンドン・ビジネススクールのスマントラ・ゴシャール教授は、「アクティブ・ノンアクション」と名付けて警鐘を鳴らしています。これではそもそも経営の期待に応えられていない状況です。
 
 マネジャーは、業務と組織をマネジメントして、成果を出すことに責任を持つ人です。どうしたら、マネジャーは「アクティブ・ノンアクション」の状態から脱して、経営の期待に応えるような「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」になれるのでしょうか。

■マネジャーのタイム・マネジメント

 自己啓発の世界で有名なスティーブン・R・コヴィー氏は、名著「7つの習慣」の中で「時間管理のマトリックス」という考え方を提唱しています。自分の時間を「重要なこと」と「重要でないこと」、「緊急なこと」と「緊急でないこと」でマトリックスを描いたときに、どうタイム・マネジメントしたら幸せな人生が送れるかという考え方で、とても示唆に富むフレームワークです。
 
 「時間管理のマトリックス」を活用して、マネジャーのタイム・マネジメントを考えてみましょう。マネジャーが最初に着手したくなるのは「重要で緊急なこと」ですね。しかし忙しいマネジャーが目の前の仕事を片っ端から「何でも重要で緊急」と、優先順位をつけないで仕事をしていたのでは問題は解決しません。そして仕事を離れると「重要でも緊急でもないこと」で時間を浪費してしまいがちです。帰りの通勤電車で、どうでもよいスマホの情報に興じている人を多く見かけます。これはきっと有意義な時間の使い方とは言えません。
 
 では「アクティブ・ノンアクション」の状態とは、どこに時間を使っているのでしょうか。延々とccメールに目を通したり、出席してもしなくてもよいような会議に出たり、これは「重要ではない緊急なこと」に振り回されて自分を見失っている状態ではないでしょうか。マネジャー自身、充実感は得られないかもしれませんが、周囲からは頼りにされていて、一定の満足感は得られる時間の過ごし方ですね。しかし、これでは本来のマネジャーとしての職責を十分に果たしているとは言えないはずです。

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■自分ひとりではできない大きな成果を上げるには

 マネジャーにとって、「緊急ではないが重要なこと」とは何でしょうか。自分がマネジャーになったら実現したかったこと、自分にしかできない重要な職務とは何でしょうか。じつはここに焦点を当てることが「アクティブ・ノンアクション」を脱するキーになります。なすべきことをやり遂げるために、じっくり構想を練ったり、人間関係をつくったり、学習をしたり、あるいはリフレッシュしたり、といった時間です。この領域は「時間があったらやろう」と思っていたら、いつまでたってもできません。むしろ、「毎日寝る前に30分」「毎週水曜日の午前中はこれに集中」と最優先でスケジュール化して実践すべき事項です。
 
 では、マネジャーが「緊急ではないが重要なこと」に集中するとどうなるでしょうか。「重要ではない緊急なこと」が溢れてきますね。ではどう対応したらよいのでしょうか。自分でなくてもよい業務は、周囲の人に助けてもらう、協力してもらう、権限委譲して任せていく、という姿勢が大切になります。自分ひとりではできない大きな成果を、周囲の人の力を借りて実現するのが、マネジャーの仕事なのですから。このパラダイムシフトが、「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」への第一歩です。

【参考】

  • ハイケ・ブルック、スマントラ・ゴシャール著、野田智義 訳「意志力革命 目的達成への行動プログラム」(ランダムハウス講談社)
  • スティーブン・R・コヴィー著、フランクリン・コヴィー・ジャパン翻訳「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」(キング・ベアー出版)

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「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント_オリジナル版(約18分)

「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント_ダイジェスト版  (3分30秒)
from 日本能率協会コンサルティング on Vimeo.

コンサルタントプロフィール

シニア・コンサルタント
佐伯 学 

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経営コンサルタントをなりわいとして今年で30年目。これまでのプロジェクト経験を集大成して、ここ10年は経営幹部やマネジャー、次世代リーダークラスの育成に力を注いています。
経営環境は極めて厳しい状況にありますが、こういう状況だからこそマネジャーの発する言葉や振る舞いは組織の成果に大きく影響します。
ピンチにいかにリスクテイクして、メンバーの力を引き出し、次のチャンスと希望を見出すかが問われています。
コンサルティングプロジェクトや実践研修、階層別研修を通じて、クライアントの心ある皆さんと日々一緒に考え、実践しています。

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