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新規事業検討体制の構築と推進ポイント
第6回(最終回):新規事業創出ワークショッププログラム紹介

チーフ・コンサルタント  栗栖 智宏

 第1回~第5回は、新規事業を企画立案するワークショップに於ける検討方法を紹介してきました。
 最終回の第6回では、新規事業検討活動の推進事務局の活動を対象に、新規事業創出活動を如何に会社全体に根付かせるか。
 これら活動に関するポイントを紹介します。

1.新規事業活動の類型


 企業内で取り組む新規事業創出活動には大きく4つの類型があります。

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 これまで第1回~第5回で紹介してきた手法は、社内メンバーを中心にワークショップ形式で新規事業検討を推進するものです(左上象限)。一般的には、既にテーマ化された新規事業案件の個別プロジェクトを、自薦・他薦で選抜されたメンバーで検討推進する実践活動が中心です。また、社内のアイデアを広く拾い上げる為に、新規事業アイデアコンテストを開催する企業もあります(左下象限)。これにより、全社員に今の仕事だけでは無く、新しい事を考え、挑戦する事を奨励する目的とする会社も多くあります。

 一方、外部メンバーと連携して新規事業創出を行うアプローチもあります。近年では、オープンイノベーション活動の一環で、企業間の連携も積極的に取り組まれているかと思います。また、ベンチャー企業との連携も活発です。企業がファンドを組成してベンチャー投資活動を行うコーポレートベンチャーキャピタル(右上象限)や、ベンチャー企業の育成に取り組むアクセラレータプログラム(右下象限)などの活動も行われています。社内メンバーだけでは、発想が限られたり、行動様式が固定化していたりと懸念されている企業は、積極的にベンチャー企業や外部との交流を図り、新しい知識や考え方を社内に取り込む活動を行っています。

 これら新規事業創出活動の類型も考慮しながら、自社の置かれた状況、新規事業活動の経営的な目的を踏まえて、新規事業創出活動のアプローチを定めることが重要です。

2.新規事業アイデアのマネジメント


 新規事業活動の事務局として重要となる活動として、新規事業アイデアのマネジメントが挙げられます。既存事業では、社内の予算策定や投資判断の承認フローや決済権限が定義されています。しかし、新規事業アイデアの意思決定を既存事業の承認基準にそのまま適用すると、確実性を求める既存事業の承認基準に対し、不確実性の高い新規事業の提案は、ほぼ全てが却下されてしまいます。これが、多くの企業で新規事業が生まれにくい要因の1つにもなっています。

 せっかく、新規事業企画を立案しても、意思決定者が、重箱の隅をつつくような指摘を行い、「ここの検討出来ていない。」とか、「いくら売れるのか?」という質問が出てきます。不確実性が高い新規事業で、確実に売れると答える事も出来ず、企画自体が却下されるシチュエーションが発生します。まだ、明確に新規事業企画が却下されるなら良いのですが、意思決定が先延ばしされ、「もう少し調べる様に。」と言う差し戻し指示を何度も出されると、新規事業担当者としては、頭を抱えるばかりです。

 このような状況を避ける為に、不確実性の高い新規事業の意思決定は、既存事業と異なる基準と管理方法を行う必要があります。研究開発テーマのマネジメント手法としても知られるステージゲート法の考え方を適用することが有効です。

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 新規事業アイデアの管理にステージゲート法を適用する際には、「①事業テーマ評価」、「②事業企画評価」、「③実現性評価」、「④事業化評価」の様にゲートを設定する方法が一般的です。まずは、良いアイデアを探索するフェーズでは、実現性よりも、経営方針適合性や市場規模、成長性など、事業の魅力を評価します。イメージは1,000のアイデアを出して、5~10個のアイデアに絞り込む形です。そして、良いアイデアを選定して事業企画に仕立て、ターゲット顧客の調査や差別化の可能性、ビジネスモデルの優位性など検討を進め、収益性も含めて評価をします。この段階で、5~10のアイデアが、1~5程度の事業企画に絞り込まれます。事業企画評価を通過した企画案は、実際に商品開発やパートナー探索を行います。この段階で1~5の企画案は、さらに篩にかけられ、事業化の断念や、有望企画案は、テストマーケティングを実施する判断を行います。

 この様に、個別の新規事業アイデア評価にステージゲート法を適用することで、不確実性を徐々に排除しながら、有望なアイデアを事業企画まで育てていく事が可能となります。また、全社的に新規事業のタネがどの段階が豊富で、どの段階が枯渇しているかを把握する事が出来ます。ある会社では、これら管理を通じて、上流の新規事業アイデアが枯渇している場合は、全社的に新規事業アイデアを発想する活動に取り組み、一定のアイデアが社内に蓄積されると、今度は事業化を促進する活動により多くのリソースを投入するなど、メリハリを付けた新規事業創出活動を行っています。

3.新規事業検討メンバーへのインセンティブ設計の類型


 新規事業創出活動の運営事務局から良く受ける相談事項として、新規事業検討メンバーの評価やインセンティブをどの様に考えると良いか。というものがあります。不確実性の高い新規事業創出活動に、既存事業の人事評価を適用すると、特に事業化が進まない場合、予算達成などの評価基準も無く、相対的に評価が低くなったり、評価自体の信ぴょう性の担保が難しくなったりします。これにより新規事業に挑戦する社員が限定される恐れもあります。

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 そこで各社は色々な工夫を取っています。代表的には金銭的リターンか、金銭以外のリターンを設定しています。最も金銭的リターンを期待されるものには、新規事業企画者自身に出資を許可するものです。いわゆる社内ベンチャー制度を設定し、会社側もマジョリティの株式構成を維持しつつ、起案者にも出資を許可し、将来的なキャピタルゲインの可能性を付与します。逆に金銭以外のリターンは、個人目標自体を緩和や、業務時間内に新規事業活動を行う時間を設定する方法があります。また、新任管理職研修など社内の人材教育プログラムに新規事業検討を組み込んで、昇格要件としたり、エース級人材は必ず新規事業企画を経験する機会を設けたりする仕掛けを行っている企業もあります。

4.新規事業推進体制の整備


 最後に、新規事業を推進する社内体制の全体像をご紹介して6回の連載を終えたいと思います。

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 図④に、新規事業を推進するポイントを1~5の観点で記載しています。最も重要なのは、「1.経営トップのビジョン・方針」です。新規事業創出活動は企業の将来の収益の柱を見出す重要な活動です。ここにトップの強いコミットメントが無い限り、積極的なリソース投入が行われず、新しい事業は生まれてきません。新しい挑戦に踏み出す事は、非常に大きな苦労や、時に組織的なハレーションをもたらします。しかし、それでも新規事業に取り組むんだ。というトップのメッセージが、新規事業創出活動の後押しとなります。

 このトップのコミットがある前提で、「2.新規事業創造を行う専門チーム」や、「3.事業化推進プロセス」、「4.事業推進インフラ(能力開発・人事評価など)」が活きてきます。これらが、新しい事業を起こすことが当たり前と考える企業文化・組織風土を育んでいきます。そして、「5.新規事業支援チーム」が、1~4の新規事業創出活動を全体的に支援します。更には、外部パートナーとのコネクションも維持しながら、社内に外部の知見を取込み、社内だけに留まらない発想へと新規事業創出活動を導きます。 

 新規事業創出活動は、これから産業構造が大きく転換する世の中に於いて、不可欠の活動となっています。しかしながら、体系的に新規事業創出に取り組む企業はまだ限られているのではないでしょうか。本コラムが読者の皆さまの参考になりましたら幸いです。

>> 栗栖 智宏 のコラム 前号(第5回)はこちらから

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コンサルタントプロフィール

経営コンサルティング事業本部
経営戦略センター センター長 
チーフ・コンサルタント
栗栖 智宏

チーフ・コンサルタント 栗栖さん

2006年にJMAC日本能率協会コンサルティング入社以来、製造業を中心に100社以上の改革活動を支援している。
経営計画や事業計画策定を中心に、多数の収益改革や業務プロセス改革の支援実績を有する。また、新規事業創出支援も手がけるなど、事業全般のテーマに対するコンサルティングを展開中

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