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「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント
第2回:「マネジャーに期待されるリーダーシップ」~マネジメントとリーダーシップはどう違うのか~

シニア・コンサルタント 佐伯 学

第2回「マネジャーに期待されるリーダーシップ」~マネジメントとリーダーシップはどう違うのか~

■マネジメントだけでは成果は上がらない

 マネジメントの父と言われるピーター・F・ドラッカー教授は、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具」と定義したことは有名ですね。マネジャーは「組織に成果を上げることに責任を持つ人」です。つまり周囲の力を引き出して、自分一人でできない大きな成果を上げる責任者として、マネジメントを駆使しなければなりません。

 目標を設定し、計画をつくり予算を策定し、組織化して業務を分担し、周囲とコミュニケーションを図りながら動機づけし、問題解決を図り業務を安定的に運営し、人材を育成して、仕事や人を評価測定することが求められます。「仕事の管理」と「人の管理」の2側面から、マネジメントの3要素「Q(品質)、C(コスト)、D(納期)」を管理し、PDCAのマネジメント・サイクルを回すのです。
 
 教科書的には、そうですね。マネジャーになったら基本を学んで、これらを自身の組織で実施することは重要です。しかし実際にそれをそのまま職場で実践しても、なかなか成果は上がらないことが多いようです。マネジャーがまじめに適用しようとすればするほど、周囲は指示待ちになり、周囲の力は十分には引き出せない現実に突き当たるのです。
 
 ドラッカー教授の「マネジメント」を最後までよく読んでみると、「マネジメントのパラダイムが変わった」と書かれています。職場は社員のほかに、派遣社員、契約社員、パート、アルバイトなど、さまざまな雇用形態のナレッジワーカーで構成されるようになると、命令と服従の関係では人は動かない、誰かの部下ではなく同僚であり、対等の関係になると述べられています。さらに一人ひとりの人間の強みと知識を活かすためには、マネジメントするのではなく、リードすることが重要だと示唆しているのです。この慧眼、さすがは泰斗です。

■マネジメントとリーダーシップを使いわける

 ハーバード・ビジネススクール教授のジョン・P・コッタ―は、管理偏重の経営を変革する手法として、マネジメントとリーダーシップをうまく使い分けることの重要性を提唱しています。これは権限移譲のリーダーシップ、「エンパワーメント・リーダーシップ」とも呼ばれています。ダイバーシティの時代は、マネジメントだけでは組織は機能しません。これからの時代、マネジャーはマネジメントとリーダーシップを上手に使い分けなければならないのです。

 マネジメントは、組織が計画的に効率的かつ効果的に成果を出すために機能します。「見えるもの」(事実)を分析し、目標を設定し、計画を作り、組織化して問題解決していく考え方です。一方、リーダーシップは、環境変化に対応して、組織を変革し、顧客を創造するために機能します。「見えないもの」(ビジョン)を創り語り、共感と共鳴で動機づけしてその実現に向けて組織の自発的な協働を促すのです。一言で言うとマネジメントは「事を正しく行う」、つまり組織で決められたルール通りに仕事をすることが求められます。あるマネジャーだけ人事評価が甘いということは許されませんね。しかし、リーダーシップは「正しい事を行う」、つまり組織で決められたルールなどが環境変化に合わなければ、正しいことは何なのか、と考えて変革し、創造していくのです。両方とも大事なのですが、企業を取り巻く環境変化が著しく、変革や創造が求められる時代には、リーダーシップがより強く求められるわけです。
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■マネジャーに期待されるスキルとは

 これからのマネジャーは、マネジメントとリーダーシップの違いを理解して、状況に応じて上手に使い分けることができなくてはなりません。マネジメントは組織で均一でなくてはなりませんから、組織のルールをしっかり把握して、その中で成果を上げていく行動が求められます。一方、リーダーシップは個の価値観を起点にして、「私らしいリーダーシップ」を探求しなければなりません。私はどういうリーダーになりたいのか、自分自身で内省して、私らしいリーダー像を確立することが求められるのです。

 最後に、企業ではどのような人材開発を目指しているのかを見ていきます。2008年秋のリーマンショックまでは、高い専門能力をもって、言われたことを迅速に実行して、結果を出せる、成果主義で成果を出せる人材開発を各社が目指していました。しかし、そうした企業も軒並み業績が悪化してしまったことはご存知の通りです。

 これからの時代、マネジャーは「ビジョンをもつリーダー」になることが期待されています。そのためには大きく次の4つの力を獲得しなければなりません。

答えのない世界で、自ら考え行動する力:「これからどうなるかわからないけど、みんなで力を合わせてがんばろう!」などと意気込みだけのリーダーには、怖くて誰もついていきません。キーワードは「大局観」です。将棋や囲碁の世界の言葉で、将来と現在の状況を見極め最善の判断をするという意味です。経営環境変化にアンテナを高くして、先手を打って対処していく、ドラッカー教授の言葉を借りると、「自己の意思決定に、世界の情勢を反映させる」といったところでしょうか。具体的には事業環境分析のための情報収集能力や仮設設定能力などを高める必要があります。

常に最高を目指して変化し、成長できる力:DXなどの技術革新で、業界の垣根を越えて変化の激しい経営環境では、「まあそこそこの成果でいいや」と現状に満足していると、大きく足をすくわれます。真摯さをもって前進し続ける向上心と具体的な行動が重要視されます。戦略や財務、マーケティングなどのスキルが必須です。

世界に通用するコミュニケーション力:これは英語ができるとか、中国語ができるとかといった意味ではありません。「コーチング」や「ファシリテーション」といったグローバルに通用するコミュニケーション・スキルが駆使できるということを指しています。

他者の力を最大限に引き出し、活用できる力:「私はこんなに仕事ができます」というマネジャーは、世間ではあまり価値がありません。「私がリーダーになれば、組織の力を大きく引き出すことができます」というエンパワーメント・リーダーシップやサーバント・リーダーシップ、EQリーダーシップといったスキルが求められるのです。
さて、皆さんはいかがでしょうか。

【参考】

  • ピーター・F・ドラッカー著、上田惇生翻訳「エッセンシャル版 マネジメント 基本と原則」(ダイヤモンド社)
  • ジョン・P・コッタ―著、村井章子翻訳「実行する組織 大企業がベンチャーのスピードで動く」(ダイヤモンド社)

⇒「管理職・マネジャー研修」の詳細はこちらから

>> 佐伯 学 のコラム 前号(第1回)はこちらから

>>  佐伯 学のコラム 次号(第3回)はこちらから

コンサルタントプロフィール

シニア・コンサルタント
佐伯 学 

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経営コンサルタントをなりわいとして今年で30年目。これまでのプロジェクト経験を集大成して、ここ10年は経営幹部やマネジャー、次世代リーダークラスの育成に力を注いています。
経営環境は極めて厳しい状況にありますが、こういう状況だからこそマネジャーの発する言葉や振る舞いは組織の成果に大きく影響します。
ピンチにいかにリスクテイクして、メンバーの力を引き出し、次のチャンスと希望を見出すかが問われています。
コンサルティングプロジェクトや実践研修、階層別研修を通じて、クライアントの心ある皆さんと日々一緒に考え、実践しています。

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