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女性コンサルタントが語る「一人ひとりが輝く組織とは」シリーズ
第4回:現場と本人と人事部門みなで実現する「一人ひとりが輝く組織」
チーフ・コンサルタント 才木 利恵子
◆はじめに
本コラムは、JMACの女性コンサルタント6名が自身の経験にもとづき、女性活躍やダイバーシティの観点も含め、これからの組織マネジメントに関する考えをお届けします。
◆高年齢者も輝いて働けているのか?
私事で恐縮ですが、先日60歳の定年を迎えました。ありがたいことに、再雇用社員として、ほぼ今までと変わらない形で、お客さまとの仕事を継続させていただいています。弊社の場合、再雇用の人事制度はある程度整備されているので、私本人は比較的スムーズに再雇用に移行できています。ただし、夜遅くまでの仕事がきつかったり、加齢による視力の問題で作業効率が落ちたり、若い頃と同じような働き方はできないと感じてもいます。
ちなみに、私は、HRM領域でコンサルティング支援を行っています。ここ数年「高年齢者雇用」に係る相談、支援も多くなっています。各社とも、国の政策、経営ニーズ、従業員ニーズを踏まえ、自社ならではの制度改革・運用に苦労されています。
◆働かない『妖精さん』も、働き過ぎてしまう『元エース』も居る
2年ほど前でしたか、とある企業の若手社員が、自分の職場の働かない中高年を『妖精さん』と名付けたという記事がありました。朝きちんと出勤するが、いつのまにか席から居なくなり、何の仕事をしているのかわからないので『妖精さん』だそうです。
企業の人事担当者からも、再雇用世代について、関連するような悩みが聞かれます。
「うちは60歳定年後の再雇用の選択コースが分かれている制度なのに、再雇用者は、みなフルタイムを選びます。週何日というコースもあるが誰も選ばないのです。でも、モチベーションが高いかというとそうでもありません。職場の若手層のモチベーションにも良くないのではと危惧しています。」
一方、私の友人Aさんは、再雇用の選択コースがある会社で働いており、60歳定年後に週3日勤務コースを選びました。毎日遅くまで残業をしていた生活を、これを機に少し変えたい、やりたいこともあるという理由でした。しかし、ふたを開けてみると、後輩の現職部長から人が足りないと泣きつかれ、実質は週5日勤務になっているとのこと。部長職も経験した彼女は言います。「社内の大概の人は、フルタイム勤務を選んでいるし、人が足りないと言われると助けたいし、しょうがないので、がんばる。」
人事制度上は、再雇用の選択コースはあるものの、なんとなく皆フルタイムになっていて、制度を作った側にとっても従業員側にとってもしっくりこず、一人ひとりが輝いていない状況があります。働かない『妖精さん』問題と、働き過ぎてしまう『元エース』問題は、根っこは同じです。
◆制度と従業員ニーズとがかみ合わない要因を考えてみる
根っこを考えてみました。①~③は、関わる部門・人、④は日本国内や、その組織内にある雰囲気です。
① 制度と現場とのギャップ埋めがしきれない人事部門
数年来、多様な人材に活躍してもらうための高年齢者・女性・非正規社員などに係る国の政策が活発です。
人事部門は、それに対応するため、経営ニーズ等を踏まえながら制度改定・施策に取り組みます。他社の好事例や、判例(これをやると訴えられて敗訴する)も参考にしながら、工夫をする中、多様な人材に活躍してもらおうとすると、意外と制度・施策は複雑になることもあります。また、他社が実施していないことは、リスクを恐れてチャレンジしにくいこともあるように感じます。
また、人事部門にとって、様々な制度の「現場での運用実態」は悩みの種であり、「制度を有効に使ってくれないなあ」と思いながらも、「現場の運用には介入しづらいなあ」と、二の足を踏む場面もあるでしょう。
② 多様な人材マネジメントに対応しきれない現場マネジメント
一方現場では、マネジャーが多様な人材を抱えて部下をマネジメントしなければなりません。再雇用社員、地域限定勤務社員、時短勤務社員、非正規社員などなど。また、後継者育成、新人育成、部下のキャリア開発支援なども期待されます。多忙にかまけて一律な人材を一律な方法でのマネジメントスタイルでは、ひずみが生じます。
③ 自律した生活・仕事の将来設計がしづらい従業員
かたや一人ひとりの従業員は、意外と自社の人事制度や施策をよく知らないことが多いです。特に、定年後再雇用制度、育児・介護に関する制度など、現在の自分と関係なければ気にはしないものです。人事制度・施策も改定があり、その背景には国の政策もあるので、従業員自らが知識をアップデートしないと、無用な不安・不満を抱いたり、思わぬ意思決定をしてしまったりということも考えられます。日々の業務に追われる中、突然人生の岐路に立たされることもあると思います。
④ 「フルタイムでないと責任・権限のある仕事がしづらい」雰囲気
「フルタイムでないと責任・権限のある仕事がしづらい」という雰囲気がありませんか?
もちろん、業種・職種特性により、様々な課題はあり、今のやり方を変えないとできないことも多いでしょう。ただ、それにより、「輝くはずの人」を失っていることもあるでしょう。
◆それぞれがやれば、「一人ひとりが輝く組織」は実現できる!
要因考察を踏まえると、課題は4つです。
① 制度が現場で活かせる人事部門へ
本来、人事制度は手段であり、目指すところは人材と組織の活性化です。人事部門のみなさんは百も承知です。それを行動に移し、どっちみち多様な人材に対応する制度・施策をやっているので、それに加えて各現場の実態に即したきめ細やかな制度・施策をやっていくだけです。言うは易く行うは難しですが、人材と組織の活性化のため、現場に有効であるために、現場との綿密な双方向コミュニケーション、おせっかい、啓蒙作戦など打ち手は様々あります。
② 多様な人材一人ひとりをみるマネジャーへ
当シリーズ3回の前回で、マネジャーのマネジメント領域は、業績・業務・人材とありますが、3つ目の人材に係る役割が、ぐんと大きくなってきています。ここに焦点を当てたマネジャー自身の意識・行動変革や、マネジャー任用育成が重要です。 また、マネジャーの負荷を軽減し、本来重視する役割に時間を割いてもらう施策も重要です。
③ 自分の人生・仕事の将来設計を自律して考える従業員へ
各社では、キャリアデザイン研修や、キャリアデザインのための面談など実施されていると思います。 人事部門目線で言えば、必要な人材に、必要なキャリアデザインのための情報・知識が行き渡り、考える機会、チャレンジをする機会を提供できていることが重要です。 従業員目線で言えば、一人ひとりが自ら、それらの情報・知識を得る努力をし、自分で自分が輝ける将来設計をすることが重要です。
④ 今までの働き方・働かせ方の価値観転換
今回のコラムでは、再雇用社員が輝くためという視点で、短時間勤務に対する価値観の転換について述べましたが、これは女性活躍・非正規社員活躍にも通じる点です。また、それ以外にも今までの働き方・働かせ方について、もっといい方法はないか?昔からの価値観に縛られていないか?と、人事部門・現場マネジャー・従業員全てが考えることが大切と思います。
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>> コラム 前号(第3回:一人ひとりに向き合い、伝えるべきことを伝える 執筆:チーフ・コンサルタント 皆越 由紀)はこちらから
>> コラム 次号(第5回:個を生かす、巻き込み型マネジャーとは 執筆:チーフ・コンサルタント 沼田 千佳子)はこちらから
コンサルタントプロフィール
HRM革新センター チーフ・コンサルタント
才木 利恵子(さいき りえこ)
人と組織が力強く楽しく成果に向かえる組織文化づくり、働きがいのある組織への変革のために、組織文化の診断、マネジャーの意識・行動変革支援、非正規雇用社員含む第一線の活性化およびそのために必要な人材マネジメント・人事制度改革をご支援しています。