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「R&D組織・チームを変えていくためのインターナル・コンサルタント養成のヒント」
第3回:IC養成 基礎編のプログラムとアウトプットの特徴
コンサルタント 仁木 恵理
■はじめに
第2回コラムでは、IC養成の全体像と適用事例についてお話をしました。
第3回は、前回紹介した事例を通して、IC養成プログラムの中身についてご紹介します。
1.IC養成プログラムの進め方の特徴
プログラムは座学とワークショップで構成される全5回の基礎編と、ICが主体となってチーム支援を行う実践編に分かれています。
基礎編の基礎1を除く各講座は1日コースです。午前中に支援チームの振り返りとして、チームの現状共有と課題に対する打ち手のディスカッションを実施します。午後に各講座のテーマに沿ったワークショップを実施するという進め方です。
IC養成と変革の取り組みの大きな流れは(図1)の通りです。基礎講座での学習⇒技術KIの場でのチーム支援⇒次の基礎講座で実践したことを振り返り、次の支援に活かすといったサイクルを回すことで、ICがチームとの相互作用のなかで成長し、チームの課題解決や成果出しに貢献できる進め方が特徴です。
2.基礎編
(1)基礎編の講座内容
まず基礎編について、各講座の目的と実施内容を紹介します。
①基礎1のテーマは、組織変革の理論です。
変革の取り組み手法の基本的な理論を学ぶことが目的です。本事例では、変革の取り組み=技術KIです。通常、技術KIは最初にチームメンバー全員を集めて導入研修という2日もしくは3日間コースの実践研修を行います。技術KI導入研修=基礎1という位置づけで、ICも支援チームと一緒に技術KIの理論を体系的に学んでいきました。
②基礎2のテーマは、チームワークです。
チームとメンバーを理解し、信頼関係を構築していく上での自己変革に向き合うことが目的です。チームの実態と課題を客観的、構造的に捉える体制バラシ手法や、チームとの信頼関係構築、多様性理解、解決志向アプローチをベースとしたコミュニケーション法について学んでいきました。
また、マネジャーとしてではなく、ICとしてチームに関わる際に、自身が変えるべき自己変革課題についても考え、チーム支援のなかで実践すべきアクションに落とし込みました。
③基礎3のテーマは、チーム変革です。
チームの目指すありたい姿をビジネス的観点や人・組織的観点で捉えなおすことが目的です。チームのビジョンを捉えなおし、ありたい姿実現に向けた変革シナリオを作成しました。そのなかで、顧客との関係性のあり方や顧客の潜在ニーズについて改めて考える機会をもうけました。
④基礎4のテーマは、技術バラシです。
本事例では「チームが主体となり、技術課題を発掘し、解決のために知恵を絞れるようになる」というのが変革の目的のひとつとなるため、「技術バラシ」は、IC養成の肝となります。
基礎4は、チームが技術議論を主体的かつ効果的に運営できるよう、ICとして促せるようになることが目的です。講座では、IC養成の場に支援チームのリーダー層を巻き込み、実際のチームの技術議論のネタを使って、自社にとっての技術議論の理想的な型を創っていきました。加えて、開発工程ごとの技術議論の目的や目指すゴール、議論のフレームワークのたたき台を創っていきました。
⑤基礎5のテーマは、振り返りです。
気づきを重ねて、個人とチームの成長を加速させることが目的です。チームメンバーの振り返りの実物を考察し、自社にとっての”よい振り返りのポイント”を抽出し、振り返りの型を創っていきました。
また、IC養成の場にリーダー層を巻き込み、実際のチームのプロジェクトを題材としたプロジェクト振り返りを通して、ICとリーダー層が一緒に教訓や肝を見出していきました。
このように、基礎編は上記内容を基本としつつ、変革の目的によって内容をカスタマイズしていきます。
(2)基礎編の主なアウトプット
基礎編のアウトプットの特徴はチーム支援で即活用可能なアウトプットを期待できる点です。アウトプットは、自社が変革を継続していく際の資産として活用することができます。
①各手法の手引書のたたき台
基礎編のワークショップを通して、各手法の目的、手順、実施の際に大切にすべきポイント、実際の支援チーム事例での解説が書かれた手引書のたたき台を創ることができます。ICがチーム支援をする時に参考にしたり、チームが自律的に手法を活用したい時に、参照できるものです。JMACから与えられた教科書的なものではなく、ICが自社事例を用いて作ったオリジナルの手引書ですので、実施イメージが湧きやすく活用しやすいのが特徴です。
例えば、技術バラシの手引書であれば、開発の各工程での技術バラシの位置づけと、それぞれにおける目的や手順、実施のポイントに加えて、技術議論をする際に活用すべきフレームワークについて、事例を踏まえて解説しています。
手引書のたたき台は、ICだけでなく変革に挑むチームが参照できるように社内のポータルサイトで共有されます。更に、今後はチームの事例を追加しながらブラッシュアップしていきます。
②各手法の活用場面の考察まとめ集
講座で学んだ各手法について、ICとして今後効果的に活用していくために、「どんなチーム」の「どんな場面」で「どの手法」を活用すると効果的である、といったまとめ集を創ることができます。
例えば、「若手や社歴の短い社員が多く、人数も多いチーム」で「言いたいことが本音で言えず、もやもやが溜まっているような場面」では、「階層別に分かれて、定期的に問題の吐き出しを実施し、出てきた問題に手を打っていく」といったやり方を実践するとよい。といったように、支援チームで想定される活用場面をまとめておくことで、今後のICとして、適切な支援ができる再現性を高めることができます。
③支援の際の要点を整理した虎の巻
講座ごとにICとして押さえておくべき要点を検討し、「3ヶ条」として整理をしました。例えば、技術バラシ3ヶ条では、「技術議論では、議論を見える化すべし」「技術議論で目指すアウトプットイメージを絵や図で示すべし」「技術議論の際には、言葉の定義や前提の共有を重要視すべし」といったように、自分たちの言葉にこだわり、納得感のある3ヶ条を創り上げることで、ICは各講座の要点を自分たちの腹に落としていきます。
④JMACコンサルタントのフィードバックによる気づき、行動変容
ICのチームへの関わり方を振り返り、タイムリーにJMACコンサルタントが適切で具体的なフィードバックを行います。また、JMACコンサルタントのチームへの関わりについて、「あの場面でこういった関わりをしたのは、こういう意味があった」ということを解説することで、よき関わりを追体験することができます。
このように、体験から学び、次に活かす経験学習のサイクルを高速回転することで、ICの気づきや行動変容を促していきます。
ここまでは、基礎編の内容とアウトプットの特徴についてお話ししました。
次回は、実践編についてご紹介する予定です。
コンサルタントプロフィール
コンサルタント
仁木 恵理(にき えり)
2010年にJMAC入社以来、主にR&D部門の組織変革や技術KI活動、チームやプロジェクトのマネジメント力強化、企画提案力強化を中心にコンサルティング経験を積む。
最近は、"変革し続けられる組織文化の醸成"を目的としたインターナル・コンサルタントの養成に力を入れている。
コミュニケーション、ファシリテーション、ダイバーシティといったテーマで新人から管理職まで幅広い研修実績がある。
臨床心理士というバックグラウンドを活かして、ひとりひとりと向き合い、多様性を尊重した適切な関わりやフィードバックを行う。また、フィードバックによって、人の自己効力感を高め、「わたしならできる!」と一歩を踏み出すことを促していく活動スタイルを大切にしている。