コラムCOLUMN
外国人材も活かすためのダイバーシティ経営を実現するために
第3回:外国人材を経営に活用してゆく上での7つのポイント
パートナーコンサルタント ダオ・ユイ・アン
■ はじめに
第1回では外国人材がポテンシャルの高い「経営資源」という認識を確認した上で、第2回では外国人材を活用する上で4つの留意点についてご紹介しました。
では、日本企業において、どうすれば外国人材のポテンシャルを発揮できるのでしょうか。
今回の3回目では、外国人材活用のポイントについて述べさせて頂きます。
さて、日本企業における外国人材活用のためには、外国人材と日本人材が一緒にタッグを組める体制構築が必要不可欠だと考えます。そのために、外国人材の日本社会やビジネスへの理解促進のための①外国人材の経営リテラシーの向上を図ると同時に、②外国人材と一緒にチームビルディングし、体制を整える必要性は当然ながら、全体がうまくいくように、やはり③日本人側の思考様式の転換も必要になると考えます。
①外国人材の経営リテラシーの向上
■ ポイント1:日本人が求めるビジネスマナーへの理解
やはり、日本企業で働くわけなので、基本的なビジネスマナーへの理解は必要です。特に、日本ではビジネスマナー違反は人物判断に悪い影響を与えることがありますので、重要なポイントであります。しかし、「こうしなければならない」と押し付けては逆に外国人材の良さをフルに活かすことが難しくなります。説明して理解してもらえてから、「こうしてもらえたら嬉しい」と希望を伝えれば、本人と折り合える着地点が見つかるはずです。
私の留学の仲間(ベトナム人)の話です。彼の顔のホクロに毛が生えておりましたが、日本での就活面接の際に「採用された場合はその毛を剃ってほしい」と言われたそうです。そうしたら、「この毛は自分にとって大事なモノなので、剃るつもりがなく、それで不採用になっても仕方ありません」と友人が返事し、結果的にその会社に採用されました。本人が会社で活躍し、後にベトナムに戻り起業して、今は元の会社とパートナーシップを組んで事業を発展させています。ビジネスマナーの一つである清潔感を押し付けず、本人のガッツを感じ取った会社の採用担当者に拍手を送りたいです。
■ ポイント2:日本マーケットの特性への理解
ビジネスはその国の特徴に深く関わっています。その関係性を知ることにより、違う国で展開する時に応用が利きます。日本の特徴である、日本特有の国土、位置、面積、人口、季節性、風習などを外国人材に理解してもらうことは、日本社会へのさらなる理解に繋がるのみならず、ビジネス・リテラシーの土台を固める意味もありますので、ぜひお勧めしたいと考えています。
■ ポイント3:言語ギャップを埋める「フレームワーク」志向
意思相通あるいは意思決定のツールとして様々なフレームワークがあります。それらのフレームワークを使っていれば、複雑な文章を使わなくても伝えたいことを伝えることができます。まさに、言語ギャップを埋めてくれる魔法のツールだと思います。因みに、チームの他のメンバーも同じようにフレームワーク志向のスキルを取得すれば、同じツールによる思考様式の共通化を図ることができるようになります。
②外国人材とのチームビルディング
■ ポイント4:孤立させない仕組みの構築とフォロー
外国人材をチームの一員になってもらうためには、やはり本人が孤立しないような仕組み構築が必要です。例えば、教育係を選任したり、相談窓口を設置したりして、本人が業務上・生活上の困りごとについて気軽に相談できるようにすることが有効だと考えます。但し、日本人の場合にも通用しますが、相談する行為は相談する側とされる側との信頼関係があって初めて行われるものであり、窓口があればいいということにならないように気を付けたいものです。
■ ポイント5:基本コミュニケーションルールの設定
コミュニケーションにおいて外国人材側と日本人側に存在しうる壁を無くすために、発言の機会を与えたり、発言内容に対して冷静に受け止めたりできる仕組あるいは社内ルールを作るのをお勧めします。例えば、会議での全員発言ルール、社内基本用語の整理、相談・承認プロセスの明示(PDCAのプロセス等を含む)などが考えられます。
■ ポイント6:業務目的と成果の明示による曖昧さ排除
日本人同士が共有しうる曖昧さは、外国人材にとっては不安のもとになりかねないため、曖昧さの排除を努める必要があります。ここでいう曖昧さは、日々の会話の中での曖昧さもさることながら、どちらかというと業務目的や期待する成果に関する曖昧さの方を指しています。業務目的や期待する成果は目標となり、人はその目標に向かってモチベーションを上げていくわけで、それらが曖昧になれば、人は目標が見えずモチベーション低下に繋がりかねないので要注意です。「とりあえずやって」とか「背中を見て学べ」では、外国人材にとって不安でしかなく、うまく行きません。
③日本人の思考様式の転換
■ ポイント7:経営戦略に基づく、日本人の代替ではない外国人材のポテンシャルを意識した採用
「必要とされている」と感じれば、人は力を十分に発揮できます。逆に雑に扱われれば、人は離れます。ちゃんと人を扱うためにはその人のことを理解し、その人の強みを活かしてあげる工夫が必要です。日本人が来ないから外国人材を入れようという安易な考え方では、外国人材と長く付き合いすることができないと思います。
これまで3回に渡り、外国人財のことについて述べさせて頂きました。お話しした内容は女性・高齢者・障害者等の活用にも通じる部分が多いということにもうお気づきだと思います。結局のところ、女性・高齢者・障害者・外国人といった言葉にくっ付いている固定概念に捉われず、一人ひとりと向き合って、それぞれの力を引き出して、チームのミッションを果たすためにメンバーの力を結集させる技量がリーダーあるいは経営者に求められており、それを実現する経営が正にダイバーシティ経営ということになるのではないのでしょうか。
>> ダオ・ユイ・アン のコラム 前号(第2号)はこちらから
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コンサルタントプロフィール
日本能率協会コンサルティング パートナーコンサルタント
COPRONA株式会社 代表取締役社長
ダオ・ユイ・アン
ベトナム・ダナン出身、高校卒業後来日
東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学研究科建築専攻修士課程修了
日本で5年間企業勤務後、COPRONA株式会社の設立時から参画し、2013年6月より同社代表取締役社長
現在は、NPO法人アジア中小企業協力機構理事を務めるとともに、2018年よりJMACパートナーコンサルタント
日本企業のベトナムビジネスの展開、ベトナム企業と日本企業との連携促進、ベトナム人材採用をサポート
2020年には有料職業紹介業の許可を取得し、事業を拡大