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MOT:技術を核にした事業化展開
第3回:事業化のネタつくり~技術の棚卸と強み評価~
シニア・コンサルタント 細矢泰弘
■はじめに
本コラムでは、著者 細矢 泰弘が40年経験した新商品・新規事業のコンサルテイング事例から原理・原則的なポイント、基本的な考え方・進め方を計12回に渡って連載します。
今回は「事業化のネタつくり~技術の棚卸と強み評価~」についてお話しします。
1.技術の棚卸と見える化
対象となる技術選定は、自社の主要製品を支えるコア技術・技能、それを支える要素技術としました。
技術分解視点として、実現化技術と製品技術に分けています。実現化技術とは、ものづくりの工程を技術化したもので、この場合は材料設計・製品設計・製造技術とわけてあります。製品技術は、製品を成立する上での主要技術です。
技術分類とは、主語と述語の表現として“・・を・・どうする”と定義しています。ポイントとしては、主語、述語を明確に記述すること、共通言語を意識して作ることです。要素技術は主に技術方式、製造方法、ノウハウ等です。
下図はMEMS技術(半導体技術を応用した部品)を棚卸した事例です。日本の製造の強みは、同じ半導体製造装置を使用してもその使い方により、工程能力が大きく違う点です。使い方をノウハウとして記述してここが差別化の源泉になることが多いのも特徴です。まず最初に大切なのは、見える化し、“自社の技術の源泉はなにか、競合と比較してどうか”を客観的、冷静に俯瞰することが必要です。
2.強み(差別化)の評価視点
下図に評価視点を示しました。差別化の源泉となるのは、希少性(R)と模倣困難性(I)です。日本の製造の歴史を振り返るとアナログとデジタルがキーワードになります。デジタル化したものは誰にでも真似され、新興国に追い上げられます。日本の差別化源泉はどこかにアナログを入れておくのもひとつの戦略で、この要素に日本人の改善で積み上げる強みを活かすのは当然のことです。前述した“半導体の工程能力アップノウハウ”は典型的なアナログ視点です。
技術評価の仕方としてVERIOで評点づけをして、総合評価と理由をつけます。評価者は技術者当人、技術部長、第3者の視点として、技術がわかる企画部門、外部者の活用等があります。棚卸表をベースにして、経営者も入れて“なぜこの技術なのか”を議論することが必要だと感じています。そして次に技術を“どんな方向に展開していくか”を議論していただきたいと思います。この議論が次への技術・事業への契機となります。
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>> 「第2回:マーケットニーズと技術シーズからのネタつくり」はこちら
コンサルタントプロフィール
R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
早稲田大学大学院非常勤講師
全日本能率連盟MC(マスターマネジメントコンサルタント)審査委員
細矢 泰弘
技術を核にした事業化を専門とし200以上の事業化をてがけてきた。リサーチ・提案だけでなく、研究開発からマーケテイング、コスト開発、生産技術まで一貫して支援し、キャッシュを回収するまでの"創って、作って、売る"実践を重視することである。技術特性をわかりやすい"顧客価値ことば"に変換して経営者と技術者の橋渡しと 技術者の事業家育成をライフワークにしている