コラムCOLUMN
Withコロナ/Afterコロナ時代の「新しい学びのスタイル」とは
第6回(最終回): 学習効果の高いリモート研修設計のポイント
チーフ・コンサルタント 小河原 光司
■はじめに
これまで5回にわたって、Withコロナ/Afterコロナ時代の「新しい学びのスタイル」とは、と題し、
人材育成の現場の動きを踏まえ、発信をしてまいりました。
本稿は最終稿として、これまでの発信内容の全体整理を試み、現在進行形の「Withコロナ/Afterコロナ時代の「新しい学びのスタイル」について、とりまとめをしたいと思います。
■「新しい学びのスタイル」確立に向けた全体像
これまでのコラムで発信した内容を「新しい学びのスタイル確立に向けた全体像」として、整理すると、以下の図表1としてまとめることができます。
以下、「図表1」を見ながら、これまでのコラム内容を振り返り、「新しい学びのスタイル確立に向けた全体像」を再度確認してゆきましょう。
■学習効果の高いリモート研修のポイント
本コラムにて、第1回に発信したテーマは、コロナにより、トレーニング環境が劇的に変化したことによる「リモート研修」の定着化でした。
1)オンサイトからBOA型トレーニングへの変換
・これまでの集合形態のオンサイトトレーニングのみではなく、BOA型トレーニングへの変換が必要であること
・BOA型トレーニング設計に際しては、
その中身を"Hear"、"See"、"Say"、"Do"、の4要素を組み合わせること
2)OJT(現場成果)と連動したトレーニングへの変換
・トレーニングをOJTと連動させ、現場成果と結びつけること
という、2つの変換と3つのポイントを提示させて頂きました。
単純に集合研修をリモート化しても、効果は上がりません。「リモート環境」という"時間"、"場所"の制約がなくなったこと、そしてそのメリットを最大限に生かすよう、トレーニングコースを「再設計」することが必要不可欠となります。
■「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査結果
次に、第2回~3回のコラムを通じて、「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査結果とその考察を発信しました。
1回目のコラムで発信した、効果的なリモート研修実現に向けた「2つの変換(オンサイトからBOA型トレーニングへの変換、OJT(現場成果)と連動したトレーニングへの変換)の提言」が、実態調査結果から見て妥当性があるか、の検証を試みました。
2つの変換の1つ目である、「オンサイトからBOA型トレーニングへの変換」に関しては、実態調査項目で課題感が抽出された「育成フォロー」と連動しています。特に、「事後課題の設定・実行・支援を通じたマネジメントシステムとの連動」に課題感があることが、調査結果より示されました。
また、2つ目の「OJT(現場成果)と連動したトレーニングへの変換」に関しても、実態調査項目で課題感が抽出された「タレントマネジメント」と連動しています。
中でも、「総合人財レベルへの影響度」として、回答者の主観によらない客観的指標(寄与率)を回帰分析から算出した結果、「総合人財レベルへの影響度が大きく、かつ領域別レベルが低い」、すなわち客観的に「対策が必要な重点領域」は 、「5.タレントマネジメント」の領域でした。
特に、「成功事例の社内共有、暗黙知の形式知化の仕組み」への取り組みへの課題が大きいことが、調査結果より示されました。
つまり、実態調査結果から、その課題を整理してみると、『トレーニング実施後の実務でのトレーニング知識の適用、継続的効果的な計画的な能力向上』の課題と、その課題解決に苦慮している実態が伺えるのではないでしょうか。
■After(実践学習)の仕掛けとイネーブラー
実態調査より抽出された『トレーニング実施後の実務でのトレーニング知識の適用、継続的効果的な計画的な能力向上』、への課題に対する処方箋として、『After(実践学習)を現場へ適用させる仕掛け(イネーブラー)』について、そのポイントを第4回~5回のコラムにて説明しました。 実践学習の仕掛けとは、OJT(現場成果)と連動させることに他なりません。そのポイントとして、3つのポイントを提示しました。
そのポイントとは、
・トレーニング受講生(部下)が何を学んでいるのか、を育成する側(上司)が理解すること
・現場で解決すべき課題とトレーニング実践課題をリンクさせること
・育成する側(上司)のスキルに依存するのではなく、仕掛け(プロセス)として動くようにすること
の3点です。
そして、この3つのポイントを現場に適用させるためには、現場任せではなく、現場が実施できるような業務基盤を整備することが必須となります。
その基盤とは、
・人材育成計画に基づいた知識・スキル体系の設計と重点育成対象の選定及びOJT方針との連動
・LMS/タレントマネジメントシステムの構築
の2つの基盤です。現場にいくらOJTを実施するように言っても、育成時間が明示されない限り、OJTに時間をどのくらい割くべきかがわかりません。
いわゆる「緊急ではないが重要である」業務であるOJTに対して、現場で実施するための指針を示さない限り、組織全体の仕掛けとして動くことはありません。
また、人材育成対象に関しても、成果との連動を踏まえると「重点育成対象」の選定は必要不可欠です。
その対象者を抽出するためには、人材育成情報の一元管理システムとしてのLMS/タレントマネジメントシステムの構築も必要となります。
■ラーニングデザイン
本コラムの第5回は、「ラーニングデザイン」についての発信でした。これまでの第1回~4回までの内容を踏まえ、その実現に向けた重点活動領域の「あるべき姿」を提示したものです。
人材育成は、今後、"効果的"、"効率的"、重点的"な『学び』を"継続的"、"動態的"にデザインする『ラーニングデザイン』への進化してゆくことが想定されます。
『ラーニングデザイン』とは、以下の3つの領域をデザインすることです。
・育成ROI(経営成果との連動)
事業成果を設定し、人材育成目的・目標を設定する
・BOA育成プラットフォーム(トレーニング間の関係性最適化)
目標管理など人事評価・育成のプロセスと統合させる
・(狭義の)ラーニングレベル向上(個別トレーニングの有効性向上)
個別トレーニングをBOA化し、育成効果を高める
「新しい学びのスタイル」を追求してゆくことは、『ラーニングデザイン』を再設計する活動に他なりません。
この活動推進に際しては、個別のトレーニングをどうするのか、ということだけではなく、トレーニング全体、そしてトレーニングを通じた企業活動水準の向上、という全体視点を忘れないことが重要です。
■最後に
本稿を含めて、6回に渡り本コラムを最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Withコロナ/Afterコロナ時代の「新しい学びのスタイル」は、今まさに、各社様にて構築している只中にあると思います。
そして、様々な障害にぶつかっているここと思います。コロナは人材育成機能に対しても大きな変革を要求しています。
大きな変革とは、現在のこれまでの延長線から離れ、新しいことを推進してゆくことに他なりません。新しいことを推進してゆくに際しては、リスクを伴います。
しかしながら、リスクがないところに利益はありません。リスクは恐れるのではなく、計算することが大説です。「やる場合のリスク」と「やらない場合のリスク」を天秤にかけることが、計算するということです。
まずは、変革を「やる場合のリスク」だけではなく、変革を「やらない場合のリスク」も検討して見て下さい。そして、「新しい学びのスタイル」実現に向けた活動を小さくとも継続的に推進してゆくことが、大きなうねりへと繋がってゆくことと思います。
弊社JMACでは、研修に関わる企画・実施に関わる様々なサービスを提供しております。ご興味のある方、お悩みのある方は、無料相談会も随時開催しておりますので、ご連絡を頂ければと思います。
本稿を通じて、人材育成に携わる皆様に変革を推進してゆく上でのヒントの一助となれば幸いです。
「with/after COVID-19時代の「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査」
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コンサルタントプロフィール
ラーニングコンサルティング事業本部
チーフ・コンサルタント
小河原 光司
経営者目線の戦略推進と現場の制約条件双方から見た「実現可能な戦略の実行」に対するコンサルティングと成果創出型の実践研修を支援している。
上場小売業において、商品本部長兼事業開発室長として事業構造改革を主導し収益改革を実現した経験を持つ。
現在、事業開発室長としてリモートコンサルティング・研修の開発と普及を推進中。
ラーニングマネジメントシステム構築を主導する第一人者でもある。
中小企業診断士