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「ラインに貢献!スタッフ人材として「共通の心得」を学ぼう」
第2回:スタッフ概論②
シニア・コンサルタント 塚松 一也

■はじめに

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 スタッフの役割は多岐にわたります。
 それぞれのスタッフの業務内容・職務分掌は社内規定や一般書籍等で詳しく語られていますが、スタッフ職に共通に言える基本姿勢や仕事の考え方について書かれたものは、これまであまり見かけたことがありません。
 本コラムでは、職務内容に係わらず、誰かを支援することが貢献になるという意味で、スタッフたる人が共通して心得ておくべきことについて、8回に分けてお届けします。
 今回は、第2回「スタッフ概論②」をお届けします。

1-5.ラインとスタッフの充足感の源の違い

 スタッフは、ライン(およびトップ)を支援し、間接的に顧客に貢献するという立ち位置にいる存在です。前面に出て仕事をするのではなく、後方で間接的に支援する存在であるため、スタッフの仕事は直接的な手応えが得にくいものです。
 顧客現場でお客様の反応がわかる職務や目に見えるモノづくりをする職務の人は、直接的な手応えがあるので、そこからやり甲斐、役立感、達成感などは比較的得やすいものです。一方、スタッフ(後方支援、事務、管理的な職務の人)は、ラインに比べると、どうしても直接的な手応えが少ないため、やり甲斐、役立感、達成感が得にくいものです。
 時折、スタッフの人の中に、自分の仕事を自ら勝手に「どうせスタッフだから・・・」などと卑下している人がみられます。スタッフの仕事は、他人からみたら「裏方の仕事」、「貢献がみえづらい仕事」に映るかもしれません。

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 しかし、どのような職業・職務であっても、自らの役割にプロとしての、使命感、誇り、美学、哲学などをもって仕事をすれば、役に立っている効力感、やり甲斐、達成感などを得ることができるものです。スタッフにとっては、本人の主観的な意味づけの中で、この「プロ意識」を持つことがとても重要になります。
 
 プロフェッショナル(professional)の語源は、「profess(宣誓)」です。どんな仕事であれ、その道のプロは、自らの仕事において、2つのことを神様に誓っています。
 ひとつは、「社会への貢献」です。私利私欲ではなく、社会(他の人)に貢献することを動機として働くことです。もうひとつは、「全力の発揮」です。人からみて悪い評価をされない程度に適当にやるのではなく、常に自らの持てる力を最大限に発揮し、心を込めて働くことです。たしかに、この2つ(本当に、仕事を、社会貢献目的で、全力発揮したかどうか)は、自分と神様にしかわからないものです。だから、宣誓するしかないのです。この2つの誓いがあることが、プロフェッショナルなのです。
 スタッフは、間接的だとはいえ、まちがいなく世の中の一隅を照らしています。スタッフとして、自らの役割の価値を勝手に過小評価しないことが大切です。スタッフにプロ意識があるならば、自分の仕事に、使命感、誇り、美学、哲学などがあるはずです。プロ意識がないことには、おそらくいいスタッフ業務ができないでしょう。スタッフこそ、自分なりのプロ意識を持つことが大切なのだと考えます。

1-6.スタッフが勉強していないとおかしなことが起こる

 スタッフの中には、改善・革新の類のなんらかの改革を担う役割の人もいます。うまく改革を引っ張れる人もいますが、ラインから「余計な仕事を増やしやがって」などとうとましく思われている人がいるのも現実です。いったい何が違うのでしょうか。それを考察するために、よくある展開の一例をみてみましょう。図6を見てください。
 スタッフが担ぎだされる改革は往々にしてトップが何かを言いだして始まります。ひとつは「大事件きっかけ」で、社内で品質不良などの大問題が発生し、管理のしかたが甘いのではないかということで、管理の強化的な改革がスタートするものです。もうひとつは、「評判聞きつけ」で、トップが他社での成功事例を耳にして、同様なことを自社でもやろうと管理手法の導入的な改革がスタートするものです。
 
 指示されたスタッフが、その改革の内容について既に十分詳しくなければ慌てて短時間に改革の内容(管理手法の中身等)を勉強することになります。短時間でその改革の本質を理解し、適切な改革の展開法が想起されれば問題ないのですが、時間が足りないために表層的な理解にとどまってしまうことが往々にしてあります。そのため、にわか勉強で得た知識で、適当なマニュアルやフォーマットを作って、それを現場に展開することになってしまいます。十分な準備ができないまま、改革をお願いせざるをえなくなりかねません。いきおい「トップからの指示ですので、とにかくやってください。」と虎の威を借りた進め方になりやすく、その顛末として、図6のような展開に陥り、改革推進がうまくいかなくなりがちです。

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1-7.スタッフは、現場感覚と経営感覚をもつこと

 図6のケースで、変革がうまくいかなかった原因はどこにあるでしょうか。思いつき的にトップが変革を指示したことでしょうか。スタッフから依頼をされたラインが真摯に対応しなかったことでしょうか。あるいは、トップから嫌な顔をされないために、スタッフとラインマネジャーあたりで密談して適当な状況報告を上にあげたことでしょうか。それらもそれぞれ原因のひとつでしょうが、本冊子はスタッフにフォーカスをあてていますので、その観点で考察をしてみましょう。
 
 図6のケースでは、トップから変革の指示をうけた後で、急いで準備をスタートしています。“言われてから慌てて”勉強しているのです。トップの指示したことが、まったくもって筋が悪いものであれば話は別ですが、それなりに意味あると思われる変革内容であるならば、スタッフたるもの、あらかじめ「いつかそういう改革を担う日が来るだろう」と察して前もって勉強し、できるところから準備をしておくべきなのです。また、もしトップがおかしなことをやろうとしたら、自分が防波堤になって、「そんなおかしなことをしてはなりませぬ。」と押し返さなければいけないのです。スタッフが殿のご乱心をいさめなければ、被害がラインに及んでしまうからです。
 
 それでは、変革内容の善し悪しは、スタッフはどのように判断すればいいのでしょうか。おかしな変革をラインに迫っては、ラインの迷惑です。意味ある変革を適切にスタッフが支援してこそ、スタッフの存在の意味があります。ラインからみて頼りになるスタッフであるためには、ラインと同等な現場感覚をもっていることが大切です。スタッフに現場感覚があれば、「こういうことで悩んでいるだろう」、「きっと少し経つとこういう悩みが出てくるだろう」、「この作業が面倒なんだろうな」という想像力が働きます。そして、適切に想像された解決すべき問題に対して、日常の目前の仕事が忙しくてじっくりと勉強や準備がしたくてもできないラインに代わって、スタッフがその問題解決の勉強や準備ができて支援貢献ができる可能性が高まるのです。加えて、トップの経営感覚も、スタッフは持っておくべきです。「トップは、もうじきこういうことを言いだすだろう」という予感が持てれば、これまた勉強や準備ができるからです。スタッフには、「現場感覚」と「経営感覚」の両方が必要なのです。

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>> 前号 第1回「スタッフ概論①」はこちら

>> 次号 第3回「スタッフ概論③」はこちら

>> 関連する研修:「貢献するスタッフの姿勢と心得の研修」

コンサルタントプロフィール

R&D組織革新センター シニア・コンサルタント
塚松 一也

塚松さん

R&Dの現場で研究者・技術者集団を対象に、ナレッジマネジメントやプロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとして、魅力的なありたい姿を真摯に構想し、現場の組織能力を信じて働きかけ、じっくりと変革を促すコンサルティングスタイルがモットー。
ていねいな説明、わかりやすい資料づくりをこころがけている。

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