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MOT:技術を核にした事業化展開
第4回:事業化のネタつくり~技術と顧客価値を考える~
シニア・コンサルタント 細矢泰弘

■はじめに

 本コラムでは、著者 細矢 泰弘が40年経験した新商品・新規事業のコンサルテイング事例から原理・原則的なポイント、基本的な考え方・進め方を計12回に渡って連載します。
 今回は「事業化のネタつくり~技術と顧客価値を考える~」についてお話しします。

1.顧客価値(CV:CUSTOMER VALUE)法

 図1に、CV(Customer Value)メソッドの考え方を示します。
 技術シーズは、会社がもっている技術で、第3回で示したVERIO評価法で特に強いものを対象にするのが一般的です。この狙いは技術シーズの強みを顧客価値につなげ、さらに商品化構想を策定するものです。技術特性に関しては、技術者は物理的・化学的特性で比較的容易に抽出できる場合が多いです。問題は技術シーズの顧客価値と商品化アイデアまでつなげる方法です。

 図2に実際の事業化事例を示します。この場合は、従来はできなかった特殊金属どうしの結合を、原子レベルまで完全結合する生産技術が対象です。技術の特性から“超軽量化”と“耐プラズマ性”という物理特性は既知の事実です。これをキーワード的に残しておき、この2つのキーワードから顧客価値につなげるためにモノのイメージや具体的な表現で検討するのが、顧客価値法です。

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 今回は、「耐プラズマ性が腐食しにくいもの」から特殊環境下での製造方法、装置の連想に繋がっています。ここではコンサルタントの経験から、半導体製造という業界に連想がつながっています。ここから半導体製造装置部品で逆に軽量化構造ができるというように、商品化アイデアからまた技術の顧客価値に戻っています。実際の現場では、技術特性、顧客価値、商品化アイデアは行きつ戻りつしながら連想発想し、商品化の熟成をするといったところが現実です。このシーンは技術特性キーワード、顧客価値キーワード、商品化キーワードとキーワード的に展開を進めています。これに、業界経験豊富なコンサルタントの知識、知恵を結集して事業化展開をしていきます。

2.顧客価値からの事業ドメインの横展開発想

 図3は、技術シーズ特性⇔顧客価値⇔商品化アイデアからさらに他の事業ドメインに広げ、商品化アイデアを広げる横展開発想マップです。
 既存事業ドメインは、今ここで、売り上げ・収益を上げている事業分野です。将来の事業分野は、中・長期計画の中で、当該会社がこの分野に戦略的に出たい分野です。その他、参入容易分野、成長分野とかの進出分野をあらかじめおいておき、ここと顧客価値とのポイントで商品化アイデアを発想する場合もよくあります。
 一般的に言われている例であげると、参入容易分野は、スポーツ、衣料分野等があげられます。また、成長分野は、医薬バイオ、環境、半導体、液晶、ナノテク分野等があげられます。これらの分野と既存商品・部品・要素品のマトリックスをあげ、これらの商品群、部品群、要素品群の置き換えを考えていきます。このときに一番重要なのは、顧客価値であることは、間違いないことです。

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 図4に簡単な例を示します。「水滴ができず曇らない」という顧客価値キーワードと既存ドメインの「鏡・ミラー」というキーワードからからいろいろな分野の商品群を発想しています。このときに他の事業ドメインで、顧客価値に戻って「水滴が出来ず、曇らない」が本当に活きる分野で商品価値をつくりこむ必要性があります。

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■執筆書籍・論文のご案内

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>> 「第3回:事業化のネタつくり~技術の棚卸と強み評価~」はこちら

コンサルタントプロフィール

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
早稲田大学大学院非常勤講師
全日本能率連盟MC(マスターマネジメントコンサルタント)審査委員
細矢 泰弘

細谷さん

技術を核にした事業化を専門とし200以上の事業化をてがけてきた。リサーチ・提案だけでなく、研究開発からマーケテイング、コスト開発、生産技術まで一貫して支援し、キャッシュを回収するまでの"創って、作って、売る"実践を重視することである。技術特性をわかりやすい"顧客価値ことば"に変換して経営者と技術者の橋渡しと 技術者の事業家育成をライフワークにしている

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