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プロフィット・デザイン2.0 ~持続的な利益をデザインする~
第1回:プロフィット・デザインの背景
シニア・コンサルタント 横山 隆史

■はじめに

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 プロフィット・デザインは、これまでの戦略・計画立案における手法やプロセスに限界を感じ、昨今の厳しい経営環境下においても持続的に利益を獲得している企業を研究し、新たな戦略発想の基軸として提唱したものです。 
 初版から10数年の時間が経過しましたが、たくさんのクライアントから支持を頂いており、また昨今の厳しい社会・経済環境に対応していくためには必要不可欠となる考え方だと自負しております。
 今般、社会・経済環境の変化に合わせて若干の加筆・修正を行ったものを、本コラムにて計8回にわけてお届けします。

■売上に、将来に、自信がもてない

 これほどまで自社の製品・サービスに対する売上に、そして自社の将来に、自信がもてない時期は、過去になかったのではないでしょうか?
 さかのぼれば、リーマンショックおよび東日本大震災後の経済的なダメージに対して、当時の安倍政権による、いわゆる 「アベノミクス」 という緩和策によって、一時は経済が立ち直ってきたかに見えました。しかし、2020年1月、中国・武漢に端を発した新型コロナウィルスは、世界に、そして日本に、多方面にわたって様々な影響を及ぼしました。さらに2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が世界経済を寸断させ、資源不足や急激なインフレ懸念をもたらしています。

 このような状況について、ある経営者と雑談をしていたのですが、その経営者は、「ポッキリ折れてしまった」 とつぶやかれていました。確かに、その通りなのです。新型コロナウィルスの感染拡大の前は、非連続やパラダイムシフトやら…色々と言われてはいたものの、なんだかんだ、過去の延長線上で考えられたと思うのです。
 しかし今回は、まったく違います。この2年足らずで、社会・経済全体が、一気に異次元に、本来ならもっと時間をかけて変化するべきはずだったものが、まさに早送りでやってきた、ということができると思います。

 その経営者の会社で、戦略の再構築プロジェクトというテーマでご支援させて頂きました。戦略の再構築というテーマなので、当然ながら、 「過去5年分くらいの業績はきちんと分析して振り返ろう」 となったのですが、その経営者からは

 

 マーケットのサイズも変わっただろ
 競合の出方も変わっただろ
 調達のコストも変わっただろ
 リモートで人手の制約もあるだろ
 もうロジックが違うだろ

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 とおっしゃったのが非常に印象に残っております。確かに、もうロジックが変わってしまったのです。それなのに、過去のロジックを適用しても意味がありません。このような急激な変化が、売上に、そして将来に自信が持てない一因だと感じています。

 一方、このような激変する環境にあっても、着実に売上・利益をあげている企業があるのも事実です。売上・利益をあげるロジックの変化に気付き、果敢に、そして俊敏に対応した企業がこのような環境下であっても成長し続けているのです。
 逆を言えば、従来のロジックでは通用しなくなったのです。そのロジックの一に、「優れた製品、卓越したサービスを提供していれば儲かる」 というものがあります。あるビール会社の方が、非常に興味深いことをおっしゃっていました。

 

 うちのビールはうまいと思うんですよ。でも売れないんです。
「なんで?」 って正直思ってしまいますよ。

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 確かにその通りなのです。「うまい!」だけではダメなのです。ロジックが変わってしまったのです。
 今回ご紹介するプロフィット・デザイン「2.0」は、このような社会・経済環境の変化に対して、戦略・計画を検討される方々に、儲けるための “ひとひねり” をご紹介するものです。

■戦略論の流れから

 多少難しくなるかもしれませんが、戦略論の流れからプロフィット・デザインが狙うところを説明します。
 【図1参照】

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 元々軍事用語であった戦略(Strategy)という言葉について、頻繁に経営の場面で適用されるようになったのは1960~1970年代と思われます。その当時は経済が成長段階にあり、成長市場に身をゆだねればおのずと成長できる、という考え方が主流でした。つまりは、いかに成長市場・成長領域を見出し、そこへ参入するかが戦略のポイントだったのです。

 その後時間が経過し、1980年前後になるとポーターに代表されるポジショニングという発想が台頭してきました。この考え方は、「対象市場において、競合他社よりも有利なポジションを占めているから競争優位を確立している」というものです。高度成長期ほどに市場の成長が見込めなくなり、市場や顧客の発言力が強くなってくると、他社と同一の製品・サービスを提供していたのでは競争優位に立つことはできなくなります。したがって、その対象市場の中でいかに独自のポジションを確立するかが戦略のポイントとなってきたのです。

 さらに時間が経過し1990年代前後になると、戦略においてリソース発想という概念が取り入れられるようになりました。これは「競合他社にはない卓越した経営資源(リソース)を保有しているから競争優位を確立している」 という考え方です。1990年代になると情報ネットワーク化やIT化が進み、情報の非対称性が小さくなってしまったことから、ターゲットとなる分野・領域は競合他社と大きな差がなくなってきました。しかし、同じターゲットを狙っても企業によってパフォーマンスの違いが生じてくるのは、内部にあるリソースの違いであり、その点に着目した戦略がリソース発想となります。

 現在では、このポジショニング発想とリソース発想という2つの視点を併用しながら戦略・計画を立案しているケースが大半だと認識しています。ですが、この “定石” となっている着眼で戦略を立案しても、「はたして業績はあがるのだろうか…?」 と感じられる方が多いもの実際です。例をあげると、一時は独自性の高い製品・サービスを提供して市場を凌駕したけれども数年で低迷してしまう企業、あるいは、いわゆる “大企業” で優秀な人材や卓越した設備などを有しているにもかかわらずパフォーマンスが発揮できていない企業、等というものです。

 なぜそうなってしまうのでしょうか? 我々は、利益を創出し続けるための “デザイン” が欠けていたことが大きな要因だと考えています。つまりは、利益を確実に生み出し続ける “第三の軸” が戦略において必要となっているのです。そして、そのエッセンスに挑戦するのがこのプロフィット・デザインなのです。
【図2参照】

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>> 「第2回:プロフィット・デザインとは」はこちら

>> 関連する研修:「プロフィット・デザインを活用した新規事業発想研修」

コンサルタントプロフィール

シニア・コンサルタント
横山 隆史(よこやま たかし)

横山さん

政府系金融機関で、営業・審査業務を経験し、当社入社。
前職での経験を活かしてアカウンティング・ファイナンス等の分野で強みを発揮しながら、経営戦略、マーケティング等へ領域を広げてきた。
新規事業検討、ビジョン・中期経営計画策定、ビジネスモデル構築、企業/事業再生等といった分野で実績がある。
近年においては、新たなビジネスモデルの概念「プロフィット・デザイン」の普及に取り組むと同時に、次世代の経営人材育成支援に取り組んでいる。

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