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  3. 「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント第5回「マネジャーは会議を仕切ってはいけない」~マネジャーとしてのファシリテーション~シニア・コンサルタント   佐伯 学

「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント
第5回「マネジャーは会議を仕切ってはいけない」
~マネジャーとしてのファシリテーション~

シニア・コンサルタント   佐伯 学

■上手な会議とは

 コーチングと並んで、マネジャーに必須のコミュニケーション・スキルがファシリテーション・スキルです。ファシリテーションとは、英語で「促進」を意味します。端的に言うと、会議やミーティングでメンバーの能力を促進させるスキルと言えます。しかし残念ながら上手な会議ができている職場はほとんどありません。あなたの職場では上手な会議が実現できていますか?そもそも上手な会議とはどのような会議なのでしょうか。
 
 上手な会議には3つの条件があります。①決められた時間の中で、②人の力が活用されて、③目的が達成される会議です。しかしこの3条件にはトレード・オフの関係があります。たとえば決められた時間の中で意思決定をしなければならないと、反対意見が封じ込めようとされてしまったり、よいアイデアをたくさん生み出そうと参加者の自由な意見をただ聞いていると時間が足りなくなってしまったりするのです。そして会議はタダではありません。会議開催には、経費として参加者の時間当たり人件費がかかっています。会議ではそのコストに見合った成果が求められるのだと意識すると、上手な会議運営はマネジャーにとって重要なマネジメント課題のひとつなのです。
 
 では、会議の目的とは何でしょうか。そもそも会議は何のためにするのか、考えたことはありますか。煎じ詰めると、会議の目的は大きく3つに整理できます。①「創造重視」の会議:アイデアや意見の発散を求める場です。②「決議重視」の会議:意思決定や判断を求める場になります。③「実行重視」の会議:定例会議のように計画の着実な実行や成功を実現するための情報交換の場です。会議はその目的ごとに招集するメンバーも異なりますし、事前準備や運営方法にも工夫がいるわけですが、ファシリテーション・スキルがないと、ただいつものように集まって「さあ、どうですか?」という退屈な時間がはじまるわけです。ただただ上司や先輩が自分の言いたいことを延々と語るだけの「独演会」になったり、目的もわからず義務的に出席して、皆がパソコンで内職していたりする会議では、職場の成果もチームの一体感も高まりませんね。

■会議運営をレベルアップするための会議デザイン

 チームの会議はマネジャーが、課の会議は課長が司会進行するものと思いこんでいませんか。じつはファシリテーション・スキルを学ぶと、マネジャーが司会進行することは必ずしも人の力を活用することにつながらないことに気づきます。つまりマネジャーが司会進行をしてしまうと、会議中のマネジャーの発言は、方針提示、意思決定、指示や評価をする職場マネジャーとしての発言なのか、中立的な立場で議論を促進するファシリテーターとしての発言なのかがメンバーから見ると区別がつかず、自由に発言しづらくなってしまうのです。
 
 では、どのような会議開催が理想なのでしょうか。司会進行は、あらかじめメンバーの中から毎回違った人を順番に指名します。そうすることで、自ずと会議運営に対してメンバーの主体性も高まっていきますね。
 
 司会進行を任せられたメンバーには、会議の進め方を事前に考えてもらって、マネジャーに提案してもらいます。これを「会議デザイン」と言います。主なデザイン項目は次の通りです。

 ①目的:何のために議論するのか(目的が明確でなければ、会議はなしです)
 ②議題:何について議論するのか(議題がなければ、会議はなしです)
 ③ゴール:どこまで議論して、何をアウトプットするのか?(議題とゴールは違います)
 ④議論の進め方:どんなプロセスで議論をするのか、時間配分はどうするか(時間配分まで決めて、議論の前にメンバーと共有することが時間内で議論するポイントです)
 ⑤参加メンバー(目的に応じて選定することで、なぜ参加するのかという参加者の疑問を解消します)
 ⑥議論に必要な情報(創造重視、決議重視、実行重視の目的によって異なります)
 ⑦所要時間(いつ、どのくらいの時間で実施するのか。長すぎないことが大切です)
 ⑧場所(会議室、オンライン、外部施設など、目的に応じて選定します)
 ⑨準備事項(会場設営、備品、準備資料、参加者の事前検討事項などを明確にします)
 ⑩運営ルール(「ひとり一言発言」など、目的達成に有効な決めごとは大切です)
 
 特に①②⑤⑥⑦⑧は、事前に参加メンバーへ会議開催案内しましょう。会議運営をレベルアップしていくには、このプロセスが欠かせません。

■議論でマネジャーに必要な3つの振る舞い

 会議が始まったら、マネジャーは自分の場に対する影響力を理解して、メンバーの力が最大限に活用できる自らの振る舞いを選択する必要があります。マネジャーは、ファシリテーターとして、会議に中立的な立場で参加します。決して、議論を強引に方向づけたり、結論を急いだり、落としどころを決めつけたりしてはいけません。
メンバーを信じて、「皆の意欲や能力がうまく引き出されて議論できているか」(場の状態)、「会議の目的に必要な議論が十分にできているか」(議論の内容)の両面から、中立的な立場で観察し方向づけを考えて場にかかわります。これを「インタラクション」と言います。
 
 たとえば会議の冒頭で、マネジャーとしての意志を示します。具体的には「なぜ集まってもらったかというと・・・」(場を設定した背景を共有する)、「○○と思っている」(自分の意思をはじめに伝える)、「今日はみんなの意見を聴いて○○したい」(決め方を最初に伝える)、といった振る舞いです。議論が始まったら、場の状態と議論の内容に応じて投げかけをします。「○○さんはどう思う?」(意見を促す)、「○○の視点でみるとどう?」(視点を示す)、「○○についてはどう?」(論点を明らかにする)といった具合です。ゴールを迎えたら、意思決定の会議であれば決めます。会議の冒頭で決め方を最初に伝えていますから、「議論ありがとう。ではこうします。なぜなら・・・」と結ぶことでメンバー間に達成感が感じられます。必ずしも、時間内に議論が尽くせない場合もあるでしょう。その場合には、時間を延長する、場を改めて設定するなどの選択肢も出てきます。

 マネジャーは、会議の場であっても、メンバーの力を信じて彼らの力を引き出すのが最大の役割です。またメンバー間には「私たちの中の私」という感覚を実感してもらう場が重要です。認知心理学の世界では「We- Mode認知」と呼ばれ、上手な会議はチームワークのベースとなる感覚が醸成される大切な場でもあるのです。

【参考】

  • ●山田豊・横舘暁郎著「会議の上手なやり方が面白いほどわかる本」(中経出版)
  • ●山田豊・笠井洋著「本物の会議」(日刊工業新聞社)
  • ●山田豊著「会議で事件を起こせ」(新潮新書)

>> 佐伯 学 のコラム 前号(第4回)はこちらから

>> 管理職・マネージャー研修

コンサルタントプロフィール

シニア・コンサルタント
佐伯 学 

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経営コンサルタントをなりわいとして今年で30年目。これまでのプロジェクト経験を集大成して、ここ10年は経営幹部やマネジャー、次世代リーダークラスの育成に力を注いています。
経営環境は極めて厳しい状況にありますが、こういう状況だからこそマネジャーの発する言葉や振る舞いは組織の成果に大きく影響します。
ピンチにいかにリスクテイクして、メンバーの力を引き出し、次のチャンスと希望を見出すかが問われています。
コンサルティングプロジェクトや実践研修、階層別研修を通じて、クライアントの心ある皆さんと日々一緒に考え、実践しています。

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