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「製造現場における人材育成」
第1回 :人材育成

インテリジェントメンテナンスセンター チーフ・コンサルティングプランナー
山元 康信

1.社会情勢と人材育成課題の変化

 1980年代後半までは右肩上がりの経済で、作れば売れる時代であり、製造現場では1つでも多く、早く製品を作ることが求められていた。
 そのため、製造現場の一番の課題も「故障・不良の低減」であった。

 もちろん、この時代も人材育成は大きな課題ではあったが、多くの人員を採用できた時代は人材育成も職場内のOJTで対応できていたので、今ほど大きな課題として認識されてはいなかった。また終身雇用と年功序列制度が当たり前の時代は、個人の育成というよりは、画一的な横並びの人材育成が重要とされてきた。
 その後、バブル経済の終焉で「失われた20年」が始まるわけだが、2000年代に入って人材育成という課題がより大きく注目されるようになった。
 その1つ目のきっかけは2007年度問題である。

 2007年問題とは1947年頃に生まれた「団塊の世代」が大量退職を迎え、技術やノウハウの継承が追い付かず、生産性の低下を招くのではないかと懸念された問題である。もともとはIT業界でクローズアップされた問題であったが、他の業種でも同様の問題が懸念されるようになった。2007年度問題は結果的に大きな影響はなかったが、人材育成の必要性を強く意識させられる機会となった。

 「失われた20年」では社会情勢が大きく変化した時代でもあった。まずは製造現場の人員の変化である。つまり正規社員の減少である。
 減少が生じた理由として①国内製造業の海外への移転、②非正規社員の増加、③生産設備の自動化などがあげられる。

 ①の国内製造業の海外移転 は国内製造業の空洞化を生む一方、海外での人材育成という新たな課題が生じたのである。
また②の派遣社員やパート、アルバイトなど非正規社員の増加 は、製造現場の課題として「標準化」や作業の簡易化(or単純作業化)」が必要となっただけでなく、入れ替わりが激しい非正規社員に対しての教育が必要となってきた。

 しかし、2004年の改正労働者派遣法による製造業への派遣労働者が解禁され、そして2007年には派遣期間の1年から3年への延長、さらにはリーマンショックによる非正規社員の契約解除が社会問題になった。その結果、請負職場業者への製造委託が増加し、製造現場での技能伝承に対する問題が指摘されるようになった。

 ③の自動化 はIoTへの対応など、新たな保全力のスキルが求められることになるのであるが、一部設備は今までのスキルでは対応しきれなくなっていった。

2.なぜ今、人材育成が必要か

 その後もIoTやAIなどコンピューターの発達は著しく、私たちを取り巻く社会環境は大きく変化した。社会環境の大きな変化は「働き方改革」や「ビジネスのグローバル化」、「IT技術の進化に伴うビジネスモデルの変化」、「全員参加の社会の実現」などにより、各人の業務スキル向上が急務となっている。

 また今後、益々少子化が進み、生産年齢人口の減少も言われている。現在はコロナ禍による景気減退で求人倍率は減少しているが、これは一時的なもので2030年には約1000万人の労働力が不足すると言われている。今までのように多くの人材に頼るには限界があり、そのためにも社員の能力を向上させ、生産性を高めることが急務となっている。

 このように社会環境の大きな変化は企業において、今まで以上に社員一人一人の高い能力、つまり高度なスキルを持った人材を求めるようになってきているのである。

3.経営課題における人材育成

 一般社団法人日本能率協会が企業経営者に対して「当面する経営課題」について、毎年アンケート調査を実施しているので、企業経営者が人材育成に対する問題意識についてどのように考えているのか、ここでそのアンケート結果を紹介したい。

 ※このアンケートは経営課題として想定される20の項目を列挙し、重要度の高い順に3つ選択した項目を集計した結果である。

yamamoto_1.png

 ご覧いただければ分かるように、企業経営者が数ある経営課題の中で今後も人材育成が大きな課題であると考えていることがわかる。

 ちなみに想定される20の経営課題とは売り上げ・シェア拡大、デジタル技術の活用、技術力・研究開発力の強化、ブランド強化、財務体質強化などである。
 これら課題を差し置いて「人材の強化」のテーマが上位3位に入るというのは、多くの経営者が事業基盤を支える要素として、中長期的な視点で「人材」を重視していることがわかる。

 もちろん人材育成といっても、モチベーションアップや教育の仕方など、より詳細な課題は各社様々ではあるが、限られた人材をいかに付加価値の高い業務ができるように育てるかという課題はいつの時代も、全ての企業で共通の課題であることは間違いないであろう。

 今回は社会情勢から見た人材育成の課題の変化を述べてきたが、今後このコラムでは我々が考える「人材育成」のためのいくつかの取り組みについて紹介していきたいと思う。
 半年間お付き合いのほどよろしくお願いします。

コンサルタントプロフィール

TPM事業本部 インテリジェントメンテナンスセンター チーフ・コンサルティングプランナー
山元 康信(やまもと やすのぶ)

山元さん

1992年日本プラントメンテナンス協会入職。2013年日本能率協会コンサルティングと合併後現在に至る。

コンサルティングプランナーとして数多くの食品工場を担当し、TPM活動を通じて、 生産性向上、労働安全を含めた改善活動の推進を経験してきたとともに、TPM優秀賞の審査などで診断も経験。

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