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「品質保証を支える品質教育体系とカリキュラム」
第2回:Webでは出来ないセミナー

プリンシパル・コンサルタント 宗 裕二

■「Webセミナー」の依頼を受けて

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 第1回目のコラムでご紹介した「おもしろ体得塾」は、受講生が研修中に行われる数々の実験や実習から、大いに気づいてもらうように設計されている。受講生が、自職場で担当している通常実務の業務内容に対し、疑問を抱いて確認したくなるように考えられているのだ。さらに、複数日で構成されている実験や実習の内容は、回を重ねるたびに難しい内容となるよう計画されている。(受講ニーズによって開催日数は異なる。)

 このセミナーは元々、コンサルティング活動を行う中で、「補うべき事項だ」と強く思った項目を集めて作り上げた経緯もあり、大抵の受講生は「気づき」から自分の実務に疑問を抱き、確認したいと思っていただける。そうした受講生の「気づき」を、しっかりとメモをし、研修が終わってから実務の内容を確かめることが出来るようにするための道具(ノート)も配布して活用してもらっているのだ。
 
 コロナ禍で、「リモートでお願いしたいが、対応可能か?」とのお問い合わせは当然いただいており、私共もWeb化する方向で検討してきた。社内の若手をお願いして、受講生役まで勤めてもらいVTR作成を試みた。出来上がった「おもしろ体得塾」VTRを、セミナーの内容を良く知っていただいているクライアントに、一部をご覧頂き感想をいただいた。

■Webでやってはいけないセミナー

 試作したVTRは、機能するであろうことを十分に検討し、工夫して作ったつもりであるが、見ていただいた感想は「良さが半減する」と言うものであった。気を遣った発言であろうと思われるので、感想を受け取る側の我々としては、「全然だめだ!」とご評価いただいたと思っている。
 
 前述の通り、おもしろ体得塾は受講している皆さんが、自ら気づくことを期待して作られている。Webでの提供はリアルでのセミナー実施に比べると「良さ」が薄れるであろうことは勿論予測できていた。従って、VTRにメーキングしても十分にその内容が伝わると思われる部分だけを取り出して作ってつもりであったが、それでも厳しいご意見をいただくこととなったのだ。

 勿論、クライアントの皆さまもWebでの提供を望まれて、ニーズとして伝えていただいたからこそVTR化を試みたのであるが、無理なものは無理なのかも知れない。と、言うより、やってはいけないのかも知れない。Webを活発に活用する時代がCOVID-19によって早く訪れることになり、焦っていた周りの状況もあるが、対面のコミュニケーションが大切であることには変わりがない。

■緊急事態宣言の解除

 そうこうする内に、全国的に緊急事態宣言が解除され、報道される統計上の数字でもCOVID-19の感染拡大が減少傾向になってきた。予め予測して計画していた「おもしろ体得塾」の開催計画も1カ月ほど延期となったが、無事開催される運びとなった。1年半以上の間をおいた久しぶりの登壇である。わくわくしながら壇上に立った。
 
 もちろん十分な対策を取った広い会議室で、定期的に換気を行い、二酸化炭素濃度を測定して記録を取りながら進行する。入場前には渡航経験の有無や発熱の有無などを記述したチェックリストにチェックしてサインし、発熱状態も非接触の体温計でチェックして入場する。定期的にマイクを消毒し、手消毒はもちろんのことマスクを着用してのセミナー開始である。直接触れないようにビニールの手袋を準備して使用する機材を取り扱う。初めは通常通りにマイクなしで話し始めた。元々地声が大きく通りやすいことからマイクを使うことは少なく、自分自身を高揚させて奮い立たせるためにもいつもマイクを使わない。ところが、5分も話すと息苦しくなってくる。マスクをした状態だと酸欠状態になるようだ。そこで比較的小さな会場でもマイクを使うことにした。
 
 受講生の皆さんもマスクをしているものの、目の動きやちょっとした仕草で反応がわかる。Webでのミーティングや講演を数多く進めてきたが、やはり、まったく異なる手応えである。「体得」には、この反応が欠かせないことを痛感した。

■刺激と議論の大切さ

 目と目が合うと「どうですか?」と言う問いかけが良く伝わる。反応してくれるし、困ったときには困った顔をしてくれる。相手を見ながら程よい「刺激」をすることで、議論に参加してもらうのだ。議論に参加した受講者は刺激された命題について考えざるを得なくなるので、自分の考えを言葉に出して意見を述べてくれる。自分の意見を言葉に出して具体化するとその言葉に責任を持ってくれる。それを聞いていた周りの仲間たちも自然とその議論に参加してくれるし、責任を共有してくれるようだ。みんなが議論に参加してくれると、こちらも俄然やる気が出てきてさらに「刺激」する。どんどん議論が深まってくるのである。こうした議論の深まりが「おもしろ体得塾」の重要な要素であり、真骨頂だとも思っている。
 
 こうした方法は残念ながらWebでは出来ないと思われる。一対一であれば、何とかなるかも知れないと思うが、複数人では無理なのではないだろうか。一体感が出せないからだと思うし、相手の細かな表情が読み取れなければ「刺激」する加減が難しいからだろうと思う。和やかな雰囲気を作り出すことも重要で、和やかでなければ質問が出てこない。和やかな雰囲気を作り出せているかどうかは、Webでは分かりにくい。「とにかく多くの質問をして、自分自身でセミナーの内容を作って欲しい」と思っているし伝えてもいるので、「おもしろ体得塾」の大切な要素のひとつだ。

■より実務に近づき、よりコンサルティングに近く


 sou2-2.jpg久しぶりのリアルな「おもしろ体得塾」を開催させていただいて改めて「体得」することの大切さを私自身が理解したように思う。仲間と共に濃厚なコミュニケーションを取りながら、一体感を持って刺激を共有し、問題意識を醸成させながら、その問題解決の面白さをも共有することの大切さである。議論することは目の前のおもちゃを使った「事実」でありながら、おもちゃは「実務」のメタファー(比喩)である。

 セミナーでは、どのようなメタファー(比喩)であるかも解説しながら考えてもらうのであるが、自分自身の実務に結び付けて考えてもらう時間も取りながら進める。どの程度、受講者の皆さんが実務上の問題点に気付いてくれているかは、内容確認をする時間がその場では取れないので、(宿題が許される場合は宿題で確認出来る)分からないが、少しでも問題意識をもって自職場に戻ってもらえればうれしい。

 逆の見方をすれば、「事実」や「実務」を具体的なテーマと計画に基づいて進める活動が、私たちの本業であるコンサルティングである。その時、私たちと行動を共にしてくれるプロジェクトメンバーは、必要なら教育を受けながらプロジェクト活動を進めてもらうことになる。セミナー中に使う「事実」は一般化をする為におもちゃから得られるデータを使うが、場合によっては開催させていただいているその企業の「事実」を使わせてもらうこともある。その時は、セミナーと言うよりは「ワークショップ」であり、コンサルティングに近い内容となる。「おもしろ体得塾」で目指しているのは、おもちゃで一般化された事実に基づくコンサルティング活動を体験していただくことなのかも知れない。

 

 

■さらなる「体得」に向けて


 COVID-19のお陰でWebを使わざるを得なくなり、「おもしろ体得塾」を開催できずにいた。また、何とかWebで「おもしろ体得塾」が出来ないかと思い、VTR化を試みてチャレンジしてみたが上手く行かず、リアルでセミナーを開催することの大切さを学ぶことが出来た。さらに、「おもしろ体得塾」が目指している方向を再確認することも出来て、大切な様々な要素を確認することが出来た。そして、「おもしろ体得塾」を作る異なるコンセプトとそのアイデアも得ることが出来た。

 全世界を混乱させ、多くの悲しい出来事を作り出したCOVID-19であることに違いない。終息してきたと思われるが、油断は禁物である。しっかりリバウンド防止に努めながら、不幸の中から得られた教訓を大切にし、少しでも私共としてのお役立ちを、私たちが提供すべきサービスを通じて提供することで、日本の産業界のお役に立ちたいと思う。

 

>> 関連する研修「おもしろ体得塾」

>> JMAC品質保証メールマガジン(宗裕二のコラム含む)

>> 宗 裕二 のコラム 前号(第1回)はこちらから

コンサルタントプロフィール

プリンシパル・コンサルタント /品質経営研究所 所長
/技術士(登録番号第25742番;経営工学部門品質管理)
宗 裕二(そう ゆうじ)

宗さん

現場力の重要性を強く意識し、専門領域である「品質」を中心視座として、日々活動している。

モノづくり企業に求められる品質構築機能は、「最大の価値と、最小のリスクを、最短の時間で創出できる変換機能を構築する」ことであり、「結果としてミニマムコストのモノづくりが可能となり、最高の利益を獲得出来る」ことになると考え、「品質経営」として提唱している。その為に、「従業員の一人一人が、無意識のうちに、顧客価値を予見した行動を取れる文化を築く」ことが重要課題と位置づけ、その推進に力を入れている。

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