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女性コンサルタントが語る「一人ひとりが輝く組織とは」シリーズ
第6回:みんながユニークで特別な時代のキーワード「原則、相互理解、違いを楽しむ」
チーフ・コンサルタント 増田 さやか

◆私が経験したライフステージ変化とキャリア形成

 私は大学院修了後、新卒でJMACに入社しました。新人研修の終盤に妊娠がわかり、社会人2年目からは子育てしながら仕事を続けています。
 大きなライフステージ変化である就業と妊娠・育児をほぼ同時に迎えるのは、今考えるとかなり無計画というか無鉄砲でした。
 このように「出産は社会人3年目以降」という一般的枠組みから外れても、子供に手がかかる時期に離職せず、現在までキャリアを継続できた理由は5つあります。
  ①初めてづくしの育児と仕事を乗り切れる体力があった
  ②仕事の成功体験がそもそも少なく、出産前後のギャップを感じにくかった
  ③前例が少ないため、予めリスクを洗い出して対策するより、問題が発生したら対応する方が現実的だった
  ④「自分しかできない仕事」がそもそも少なく、組織としてカバーしやすかった
  ⑤「若者には常識が通じないから仕方ない」と周囲に受け入れてもらいやすかった

 ここでは敢えて「良かった点」を挙げました。
 キャリア開発をご支援する中で、女性は未来を悲観的に見る傾向があると感じます。過度に楽観的になる必要はありませんが、意識して前向きな情報に触れる(提供する)のは自己効力感を高めるために有効です。

◆変化に直面した時のネガティブな反応 ~女性活躍推進はやりたくなかった~

 今でこそ女性活躍をはじめとした多様性活用(ダイバーシティ&インクルージョン、以下D&I)のご支援をしている私ですが、元々は「女性活躍はやりたくない」と思っていました。
 その根底には「女性らしさや出産・育児など私的な経験を仕事に持ち込みたくない」「男性と同じ土俵でやりたい」という考えがありました。
 我ながら凝り固まっています。男女雇用機会均等法前から定年まで勤めた母、自営で男性以上に働く親戚に囲まれていた環境から、男性と同じでなくてはならないと思い込んでいました。
 この思い込みは客観的には「悪いもの、呪縛」ですが、本人にとってはストレスや不安が無く落ち着いた精神状態でいられる拠り所なのです。心理学などではコンフォートゾーンと呼ばれます。
 コンフォートゾーンを出て成長するためには、今までの当り前や常識を終わらせる必要があります。
 何かを終わらせるような大きな変化に直面した時、人は次の反応を示します。

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 「女性活躍はやりたくない」という私の反応はまさに「2.否定的な感情」です。
 女性活躍やD&I推進を直接ご支援する際は効率を優先し、試行錯誤から得た一般化した内容のみをお伝えしています。
 しかし、女性活躍やD&I推進の専門部門を設置し、独力で改革を進める企業が増加している現状を鑑みると、ポジティブになる前のモヤモヤ期の存在をお伝えし、間接的でも推進者の皆さまに寄り添うことが重要だと思っています。
 女性活躍やD&Iを進めるにあたって、従業員の方はもとより、推進担当者ご自身にも「否定的な感情」や「とまどい」などのネガティブな反応が起こります。
 
 前述の通り、専門コンサルタントでさえ経験した自然な反応です。そういうものと捉えて「それぞれの思う女性活躍について話してみよう」など、試行錯誤の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

D&I推進のポイント1 多様性と一体性の両立

 D&IのInclusion(インクルージョン)は含有、包括、包含、一体性を意味しています。自分の能力を活かして組織に参加できる機会を創り、組織に貢献していると感じることができるような日々のマネジメントや文化醸成に焦点を当てています。
 単純に多様な人材を集めて多様性を高めると、チームワークが悪化し生産性が下がってしまいます。
 だからといって、組織に唯一の“標準”を設けて全員をその標準にもっていこうとすると異能人材は離職するか、同質化してイノベーションは起こりません。

 多様性を保ちながら、バラバラにならず一体化するためには、「守るべき原則」を定めて共有することが重要です。
 原則の一例として、JMACではクライアント、同業他社、同僚すべてに適用される「職業倫理」を定めています。「守るべき原則」は、基本的に状況や時代に左右されない「経営理念」に近いものであり、企業・組織の経営層が取り組むべき課題です。

D&I推進のポイント2 みんながユニークで特別な存在

 D&Iを進めるうえでよく出てきて、推進側が説得しづらいご意見があります。
 「(自分が不利益になるので)〇〇だけを特別扱いするのはおかしい」
 「(対立を避けたいので)私だけ特別扱いしないでほしい」
 「(男性と同じようにやっているのに)なぜ女性限定の研修をするのか」
 3つとも特別扱いはダメというご意見ですが、人は根本的に「特別扱いされたい」という欲求を持っているので、本音は「一部の人を特別扱いするのはダメ」ではないかと推察します。

 法令遵守ではなく、広くD&I推進に取り組まれる場合は「みんながユニークで特別な存在」という意識に切り替え対象を広げることで全体の納得を得やすく、本質的なD&I実現に近づきます。
 「みんながユニークで特別」であるとはっきり示す手段として、女性活躍推進室からダイバーシティ推進室など、組織・プロジェクトの名称変更を行う事例もあります。

D&I推進のポイント3 自分を知り、相手を知って、お互いを活かす


 インクルージョンを実現するために重要なことは2つです。  
 ①自分の能力を活かすこと  
 ②能力の違いを活かして組織に貢献したと感じること

 自分の能力に活かすには、まず自分で自身の能力を理解する必要があります。
 自身の能力には、仕事の実績や専門性、肩書など外面的情報に加えて、仲間からの評判や人間力など内面的情報を含みます。

 従来、自己理解は若手の成長課題でしたが、予測不可能なVUCAの時代に長期に渡って活躍し続けるために、無形資産やリスキルした内容も含めて自身の能力把握はベテランやシニアにも必須と言えます。

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 自分の能力を理解した後は、相互理解を深めて、お互いが貢献できる道を探します。
 相互理解の進め方はメンバー同士の①自己開示、②承認、③制約解除、④行動化の4ステップです。

 シンプルなステップなので、部門方針説明会、プロジェクトキックオフ、1on1などメンバーが2人以上集まるほとんどの場面・イベントで使えます。

  D&I推進のポイント2でご紹介した「みんながユニークで特別な存在」という意識が定着している組織では、ストレスなくスムーズにステップが進みます。
 一方、「守るべき原則」以外に"標準"が残っている場合、多くの方がコンフォートゾーンから出ていない場合は、少々ストレスがかかるステップです。   

 結論から言うと、とまどいながらステップを試行し、自分の能力が承認される・活かされる経験、能力の違いを活かして組織に貢献した経験を繰り返して、やっと「みんながユニークで特別な存在」という意識が一般化していきます。

 地道な取り組みです。義務的に取り組むよりも、海外旅行で「この料理初めてだ、面白い」とその国独特の文化を楽しむように、メンバー同士の違いを楽しみながら相互理解を深めることをお勧めします。

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>> コラム 前号(第5回:個を生かす、巻き込み型マネジャーとは ~現場改善の活動事例をもとに~  執筆:チーフ・コンサルタント 沼田 千佳子)はこちらから

コンサルタントプロフィール

経営コンサルティング事業本部、SX事業本部
チーフ・コンサルタント
増田 さやか(ますだ さやか)

増田さん

多様な人材があらゆるライフステージにおいて、その人らしく、自身の能力を発揮できる組織づくりを目指し、組織開発や人材開発、働き方改革、業務プロセス改善など多面的なアプローチでダイバーシティ&インクルージョン推進をご支援しています。

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