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プロフィット・デザイン2.0 ~持続的な利益をデザインする~
第2回:プロフィット・デザインとは
シニア・コンサルタント 横山 隆史

■はじめに

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 プロフィット・デザインは、これまでの戦略・計画立案における手法やプロセスに限界を感じ、昨今の厳しい経営環境下においても持続的に利益を獲得している企業を研究し、新たな戦略発想の基軸として提唱したものです。 
 初版から10数年の時間が経過しましたが、たくさんのクライアントから支持を頂いており、また昨今の厳しい社会・経済環境に対応していくためには必要不可欠となる考え方だと自負しております。
 今般、社会・経済環境の変化に合わせて若干の加筆・修正を行ったものを、本コラムにて計8回にわけてお届けします。

■利益は“しくみ”から生まれる

 「利益に対する理解は十分ですか?」 と質問されたら、みなさんはどうお答えになるでしょうか?
 「利益=売上-コスト」 と考えられた方もいらっしゃるでしょう。もしくは、決算書に登場する営業利益や経常利益といった用語を連想された方もいらっしゃるかもしれません。
 
 ですが、これらは単に決算書を作るための計算式やルールに過ぎないのではないでしょうか。このような計算式やルールを知っていたとしても、儲けられるわけではありません。私が 「利益に対する理解は十分ですか?」 とお聞きしたのは、利益が生まれる “しくみ” を理解しているか、ということを考えて頂きたかったのです。
 利益を単なる結果として捉えてほしくありません。利益は意図して狙っていくものなのです。計算してたまたま黒字だった、というものではないのです。プロフィット・デザインでは、得られるべくして得られた、必然性の高い利益を狙っています。そのためには、利益を生み出すための “しくみ” をひねり出さなければならないのです。

■アップルの“しくみ”

 携帯オーディオプレーヤーのiPodから始まり、スマートフォンのiPhone、そしてタブレットとしての iPad、と連続的にヒット製品を出しているアップル。着眼の斬新さ、デザインの素晴らしさ、容易な操作性、どれをとっても驚嘆に値する製品ばかりです。しかし、とかく製品ばかりに目が向きがちになってしまいますが、何よりも素晴らしいのはアップルが生み出した “しくみ” です。また、 “しくみ” のイメージを理解するためには最も分かりやすい事例とも言えます。
 
 アップル製品ならどれでも同じなのですが、ここでは携帯オーディオプレーヤーのiPodを例に話を進めます。iPodはその製品としての素晴らしさにとかく目が向いてしまいがちですが、すぐれた携帯オーディオプレーヤーは日本のメーカーからもたくさん出ています。デザイン性も機能面も申し分なく、「音質なら日本製の方がいい」 という意見もかなり聞いています。ですが、消費者にはiPodが選ばれています。
 
 アップルは明らかに、「顧客がiPodを購入した後、何をするのか」 を視野に入れています。携帯オーディオプレーヤーを購入した後は、当然ながら音楽を聞きます。また、音楽をどんどん購入するでしょうし、保存することになるでしょう。つまり、顧客の購買後のプロセスをアップルは見据えているのではないでしょうか。
【図3参照】

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 アップルの製品をお持ちになったことがある方ならお分かり頂けるでしょうが、アップルの製品はどれもハードとソフト、そしてインターネットへの接続まで、すべてをシームレスにつなげています。また、クラウドを取り込むことによって、さらに利便性は高まってきています。つまりアップルは、いったん製品の購買を通じてつながった顧客を離さない“しくみ”を構築しているのです。いわゆる 「売って終わり」 という “売り切り” の発想ではなく、持続的な顧客との関係を構築しているのです。

■プロフィット・デザインとは

プロフィット・デザインを、ここで定義します。

持続的に利益を生み出していく、顧客価値の連鎖構造

 
 この定義には、様々な意味が込められています。まず「持続的」ですが、この対義語をあげるならば 「期間損益」 重視、「短期収益」 重視、となるでしょう。企業は決算の対象年度における期間損益で評価されます。また、株主重視の傾向からも、短期での利益獲得が迫られています。しかし、顧客はそのような企業側の論理に関心がありません。「年度」 というような期間に縛られず、顧客との持続的な関係を築いていくことをプロフィット・デザインでは目指しています。
 
 次に 「顧客価値」 という言葉です。これも対となる言葉を挙げるならば 「会社中心思考」「プロダクト・アウト」 ということになるでしょうか。顧客との持続的な関係構築を指向するならば、顧客にとって価値あるものを提供し続ける存在でなければなりません。
 
 最後の 「連鎖構造」 という言葉です。対義語は 「単品売り切り」 という言葉が当てはまります。会社としては “手離れ” のよい製品・サービスの方が都合はよいでしょうが、それではせっかく結ばれた顧客との関係が終わってしまいます。プロフィット・デザインに取り組むと、顧客との持続的な関係が構築されるので、あえて言うなら手離れは悪くなるでしょう。しかし、持続的な関係がもたらしてくれる利益は莫大です。そのためにも、単品にとどまらず、あらゆる製品・サービスを連続的・連鎖的に提供していくことが求められるのです。

>> 「第1回:プロフィット・デザインの背景」はこちら

>> 「第3回:顧客プロセスとプロフィット・ステップ」はこちら

>> 関連する研修:「プロフィット・デザインを活用した新規事業発想研修」

コンサルタントプロフィール

経営戦略事業部 シニア・コンサルタント
横山 隆史(よこやま たかし)

横山さん

政府系金融機関で、営業・審査業務を経験し、当社入社。
前職での経験を活かしてアカウンティング・ファイナンス等の分野で強みを発揮しながら、経営戦略、マーケティング等へ領域を広げてきた。
新規事業検討、ビジョン・中期経営計画策定、ビジネスモデル構築、企業/事業再生等といった分野で実績がある。
近年においては、新たなビジネスモデルの概念「プロフィット・デザイン」の普及に取り組むと同時に、次世代の経営人材育成支援に取り組んでいる。

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