コラムCOLUMN
事業開発実践力養成研修
第5回:新商品・新サービス企画開発に必要な情報力
シニア・コンサルタント 池田 裕一
■はじめに
情報力とは市場や競合などを徹底的に調査し、得られた事象を分析し適確な方向性を見出すスキルです。新商品・新サービスの企画・開発では情報力が不可欠で、「情報無くして発想なし」「発想無くして情報なし」と言われており、情報力と発想力は車の両輪と言えるでしょう。新商品・新サービスで必要となる情報とその分析方法を事業環境アセスメントと称しています。
■事業環境アセスメントを構成する要素について
事業環境アセスメントでは、企画する新商品・新サービスを取り巻く事業環境を総合的に分析して評価することにより、事業機会を整理します。事業環境アセスメントは、下記の要素で構成され、事業の方向性を検討する上での重要な基礎資料となります。
①マクロ環境動向分析
事業を取り巻く環境変化としてはまず、社会、政治、経済、技術のなどのマクロ環境があります。その中で、業界、顧客、競合といったミクロ環境が存在します。
マクロ的な環境変化を見過ごしがちですが、いかなる事業でもマクロ環境の変化要因から何らかの影響を受けます。現在~将来のマクロ環境変化に対応しているか、将来のマクロ環境変化を先取りしているかが重要な判断視点となるのです。
新商品・新サービスの定石は「成長分野に身を置くこと」ですが、いいかえれば「今後の環境変化に対応していること、環境変化の波に乗っていること」が成功要件と言えるでしょう。どのようなマクロ環境が当該新商品・新サービスと関連を持っているかを分析する必要があるのです。
②市場動向分析
新商品・新サービスの市場における規模や成長性、ニーズの動向を分析します。市場が複数ある場合は、セグメンテーションを行い、セグメントごとの市場規模、成長性、主要顧客およびその顧客のニーズを明らかにします。
顧客のニーズは、文献調査のみならず購入者、使用者に対するインタビューやアンケートを実施しましょう。
③競合動向分析
調査をしてみると、これまで認識していなかった企業が直接の競合であったり、逆に競合視していた企業とは棲み分けがされていたりすることが分かってきます。
調査で明らかになった真の競合企業に関して、その企業の販売数量、シェア、強み・弱み、事業戦略を分析して、競争優位となる視点を明確にしましょう。
④チャネル動向分析
直接販売以外の事業では、小売、問屋、卸、商社などその商品・サービスの流通に関わる事業者(チャネル)の動向も分析していく必要があります。各チャネルの市場規模や成長性、シェア、主要企業の動向などを明らかにしていきましょう。参入前には分からなかったチャネル企業の実力や方向性を分析し、どこのチャネルを強化すべきかを明確にしましょう。
⑤技術動向分析
顧客ニーズや競合企業の認識とともに世の中の技術動向も分かってきます。参入前は重視していなかった新技術がすでに実用化されていたり、他の技術方式が市場に出現してきたりといった動向について分析し、今後の技術開発の課題を明確にしましょう。
⑥事業成功の主要因
新商品・新サービスの企画・開発では活動を進めていくにつれて、その事業のツボというか、勘所を得ていかないとなりません。漫然と企画・開発活動を行うのではなく、「調べながら開発する」「開発しながら調べる」行動をとっていく必要があるでしょう。それをしないとその事業の勘所がわからないまま開発を続けることになるためです。
事業成功の主要因を導き出すには、他社の事例が参考になります。同業他社のみならず異業種でも似たようなビジネスモデルであれば、他社がどのような所を重視しているかを見ることで自社にとっての成功の鍵を類推することができるのです。
⑦戦略機会
マクロ環境動向分析、市場動向分析、競合動向分析、チャネル動向分析、技術動向分析から、機会、脅威を導き出します。つぎに機会の中で自社の強みで獲得できる機会がどれか、弱みを克服することで獲得できる機会がどれかを明確にします。
こうして選び出された機会に対して、事業成功の主要因を結び付けることによって中期的に経営資源を投入して獲得すべき機会(戦略機会)を明らかにしましょう。
つまり、機会に対してこういうやり方をすれば、果実が得られる、競争に勝てるというのが戦略機会と言えるのです。
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from 日本能率協会コンサルティング on Vimeo.
コンサルタントプロフィール
R&Dコンサルティング事業本部 技術戦略センター
シニア・コンサルタント
池田 裕一
機械販売会社の財務部門を経て、1990年(株)日本能率協会コンサルティングに入社。
以降、メーカーやサービス業を対象とした新製品・新規事業探索、開発テーマ設定、新製品・新規事業企画、新事業評価などのコンサルティング、研修、講演にあたる。
著書「新規事業・新用途開発技法とテンプレート」日本能率協会総合研究所「開発者のためのマーケティング」同文館出版など