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MOT:技術を核にした事業化展開
第12回(最終回):事業化計画の評価と経営成果
シニア・コンサルタント 細矢泰弘

■はじめに

 本コラムでは、著者 細矢 泰弘が40年経験した新商品・新規事業のコンサルテイング事例から原理・原則的なポイント、基本的な考え方・進め方をこれまで計11回に渡って連載してまいりました。
 最終回は「事業化計画の検討 ~マスタープラン作成~」についてお話しします。

1.事業化計画の評価

 以下に3つの視点で記しています。
 自社適合性は、経営リソースをフルに使い、事業の勝ち筋が作れるかが最大のポイントです。自社の特性として、個別受注型企業と多品種大量、多品種少量型、BTOB型、BTOC型、オーナー型、サラリーマン型のタイプがあり、それぞれに応じた強みを活かして、事業計画を評価する必要があります。個別受注の企業がいきなり何千台、何万台の量産事業に出たいという場合もありますが、得策は少ないと思います。
 また、BTOB型の企業がBTOC型の企業に出る場合、品質保証体制も変わり、それらのリスクをどう考えるかの議論が大切です。

 日本企業は、積み上げてきたコア技術が源泉になることはいうまでもありませんが、大企業、中堅企業では、技術M&Aも選択の重要な要素になります。推進力に関しては、CEO/トップの姿勢は当然ですが、担当の熱意と役員レベルのバックアップが大切です。
 サラリーマン型企業では、CEO、研究所長、役員が変わる場合も多いのですが、マネジメントのしかけとして、事業化の基盤つくりと人材育成をしたたかに進める必要もあると思います。市場の魅力度に関しては、中堅企業では、市場規模が500億前後で大企業が進出するにはメリットが少ない事業領域もおもしろい市場と考えます。

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2.経営成果

 以下に素材系A社での成果イメージを記しています。
 この会社は毎年事業化チームを立ちあげ、初期には3事業が売りにつながった事例です。初期のプロジェクトは、筋のいいテーマ、強いリーダー、CEOの強い思い、経営陣のバックアップありました。成長市場の自動車分野では、数年後に数十億、半導体分野では、20億強、そしてエネルギー分野では、時間がかかり売りがたつまでに8~9年かかっています。3テーマともいまでもリーダーの顔が忘れないほど「強烈な個性と思い」、あきらめない気持ちがありました。典型的なチーム編成としては、事業を冷静に俯瞰できる方と技術研究の達人がペアでいるチームは最強と思います。時代が経過するにつれて、事業化の確度が低くなり、ネタ探しに苦労することになります。事業化確度に関しては昔は3/1000との通説もありましたが、現在は自社、市場、事業モデルを俯瞰しながら進め、経験的ですが、6つの筋のいいテーマで1つは数年後には売りにつなげるようにしています。
  
 事業化でもうひとつ重要なことがいつやめるか、撤退するかの判断で、多くの企業はズルズル引き延ばし、結果人材リソースのモチベーションを下げることになっています。担当の本人は、やればやるほど思いが強くなり、冷徹な判断が不能になります。数年たつと経営陣、上司も変わり、だれも責任を取らないケースも多く見受けられます。撤退の条件は、時間で区切るのもひとつの手段と考えます。3年、5年を目処に撤退と継続・進出の意思決定するのは上司・役員の役割でまたそのしくみを意識的に経営にいれる必要があります。

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■執筆書籍・論文のご案内

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>> 「第11回:事業化計画の検討~マスタープラン作成~」はこちら

コンサルタントプロフィール

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
早稲田大学大学院非常勤講師
全日本能率連盟MC(マスターマネジメントコンサルタント)審査委員
細矢 泰弘

細谷さん

技術を核にした事業化を専門とし200以上の事業化をてがけてきた。リサーチ・提案だけでなく、研究開発からマーケテイング、コスト開発、生産技術まで一貫して支援し、キャッシュを回収するまでの"創って、作って、売る"実践を重視することである。技術特性をわかりやすい"顧客価値ことば"に変換して経営者と技術者の橋渡しと 技術者の事業家育成をライフワークにしている

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