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  3. 新入社員研修オンライン化の実践ポイント第1回:研修設計プロセスから見るオンラインでの新入社員研修設計のポイントチーフ・コンサルタント  丹羽 哲夫 

新入社員研修オンライン化の実践ポイント
第1回:研修設計プロセスから見るオンラインでの新入社員研修設計のポイント
チーフ・コンサルタント  丹羽 哲夫 

■はじめに~

 コロナ禍により企業を取り巻く環境だけでなく、働き方といった社内の環境も大きく変化しました。働き方の変化に伴い、人材育成が大きな課題となってきています。

・在宅ワークや間引き出社のため現場でタイムリーにOJTが実施できない
・感染リスクを低減させるため集合研修を実施できない

 など従来の人材育成施策が機能しづらい環境になったことが原因です。コロナ禍の長期化を受け、研修の中でも「集合」が暗黙の前提だった新入社員研修はやり方を大きく変えることが求められています。本コラムでは新入社員研修をオンラインで実施する際のポイントについてシリーズで紹介していきます。

■研修設計プロセスから見るオンラインでの新入社員研修設計のポイント

 集合形式で実施する場合とオンラインでの実施では何が違うのでしょうか。今回は新入社員研修をオンラインで実施する際に考慮すべきポイントをADDIEモデルに沿って紹介します。ADDIEモデルとは教育プログラムを設計するプロセスのフレームワークです。教育プログラムを設計するプロセスである分析(Analysis)、設計(Design)、開発(Development)、実施(Implementation)、評価(Evaluation)の頭文字から来ています。(表1 研修設計プロセスから見るオンライン化の留意点)

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1) Analysis(分析)段階でのポイント

 この段階では研修の目的を明確にすることが大切です。2020年度は緊急事態宣言を受け、いかに短期間でオンライン化へ対応するかが課題でした。2020年度は急なことだったため「オンライン化」が目的になった側面もありました。しかし、本来オンライン化は目的ではなく手段です。オンライン対応を目的化せず、手段としてとらえ新入社員研修の目的、教育課題、目標を明確化することが形式を問わず重要です。

 一方、オンライン化する際に考慮すべき内容は「ハード面の学習環境」です。拠点や部署、一緒に研修を受けるグループ会社によっては「配布用のPC端末が不足している」「カメラ付きの端末が認められない」「利用予定ソフトのインストールが許可できない」など条件が揃わない場合があります。また、通信環境も研修の質に大きな影響を与えます。受講者によっては家にWiFi環境がない場合もあり、通信をどう担保するかも考慮が必要です。オンラインでの新入社員研修では集合研修とは異なる学習環境の整備が求められます。

2) Design(設計)段階でのポイント


 この段階では新入社員研修の目標達成に向けたカリキュラム、実施方法、評価方法などの検討を行います。 オンラインでの新入社員研修では「育成ステップの観点に使用ツールの習熟を盛り込む」ことが必要です。オンライン研修では研修で使用するWeb会議システムやメーラー、共同編集用のソフト(Googleスライド、パワーポイント、ホワイトボードツール)、その他必要な社内システムについて理解しておいてもらわないと受講者とコミュニケーションが取れなくなってしまいます。学習のための行動(操作)面で脱落者が出ないようにフォロー体制含め事前検討や準備が必要です。

  設計段階での2つ目のポイントは「オンラインの強みを活かす」ことです。講義や交流をWeb会議システムでの実施に切り替えるだけでは集合型研修の劣化版になってしまいます。集合研修にはないオンライン研修の強みとしては「動画化しておけば繰り返し学ぶことができる(重要な部分を聞き直す、必要なタイミングで振り返ることができる)」「距離を超えて必要な人材を巻き込める(事前録画であれば、集合研修と比べ時間や時期の制約も小さくすることができる)」「受講者のアウトプットを蓄積・活用しやすい」などがあげられます。集合型研修の強みをいかにオンラインで再現するかに腐心すると"よい解が出てこない"、"使用するツールが多岐に渡り、複雑な運営となる(受講者にも混乱や苦手意識を与える)"といったリスクが高まります。オンラインを集合研修に寄せるのではなく、オンラインの強みを活かし新入社員にどのような成長の場を提供できるかを検討する方が効果的かつシンプルな施策を発想することができるはずです。

  設計段階での3つ目のポイントは「アウトプットを設計する」ことです。オンラインの研修では必然的に演習などのアウトプットは電子ファイルとして作成されます。保管や蓄積が容易なため、翌年の新入社員研修のインプットとして活用する、受講者が2年目、3年目などのタイミングで振り返りの材料として活用することもできます。教育プログラム全体と紐づけてアウトプットを設計することで、オンラインでの実施を強みに転換していくことが出来ます。

3) Development(開発)段階でのポイント


この段階では設計に従って具体的な教材の開発や購入などを行います。オンライン研修の資料では通常の資料よりもフォントサイズを大きくするといった見やすさの工夫が必要です。 教材の準備も必要ですが「ハード以外の学習環境の整備」も必要です。使用するソフトウェアの整理や選定、サーバー上にアウトプット提出などの場をつくる、使用ツールのガイド作成、通信トラブルなどの対応整理など研修期間に受講者が悩まずに研修を受けることができる環境整備の課題を洗い出し、準備をしておくことが大切です。 

4)Implement(実施)段階でのポイント


実際に企画した研修を実施する際のポイントは「実施側もオンラインツール活用の習熟度を上げておく」ということです。オンライン研修ではファシリテーションのやり方、講義の留意点が対面での集合研修とは異なります。"実施側のこなれている感"が受講者へ安心感を与えると同時に研修のダレを防ぎます。トラブル時や脱落者が出た際の対応についてもシミュレーションや準備しておくことが大切です。

5)Evaluation(評価)段階でのポイント


研修後に受講者の習熟度や行動変容といった教育効果を測定し評価を行います。アウトプットを蓄積しやすいのがオンライン研修の特徴です。アウトプットの水準を評価項目に入れる、新入社員を受け入れる部門にアウトプットを評価してもらうなど評価方法もオンラインの強みを意識して検討すると効果的です。

初回は研修設計プロセスであるADDIEモデルからポイントを紹介しました。
次回は新入社員研修の目的に立ち返り、代表的な目的に対してのポイントを紹介します。

>>丹羽 哲夫 のコラム 次号(第2回)はこちらから

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新入社員研修をオンラインで実施する際のポイント_オリジナル版(約23分)

新入社員研修をオンラインで実施する際のポイント_ダイジェスト版(約1分40秒)
from 日本能率協会コンサルティング on Vimeo.

コンサルタントプロフィール

チーフ・コンサルタント
丹羽 哲夫(にわ てつお)

チーフ・コンサルタント 丹羽さん

分子生物学の世界から「研究・開発の生産性」に興味を持ち、JMACに入社

研究・開発部門の知的生産性向上やマネジメント革新に関するコンサルティングを中心に、 幅広い業種のクライアントを支援している。

ロジカルシンキング研修やプレゼンテーション研修、 プロジェクトマネジメント研修など様々なテーマで幅広い業種のクライアントを支援している。

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