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  3. 「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント第3回「マネジャーがダイバーシティを体現する意味」~多様性の受容とは~シニア・コンサルタント   佐伯 学

「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント
第3回「マネジャーがダイバーシティを体現する意味」
~多様性の受容とは~

シニア・コンサルタント   佐伯 学

第3回「マネジャーがダイバーシティを体現する意味」
~多様性の受容とは~


■なぜマネジャーはイライラするのか

 マネジャーであるあなたは、日々メンバーの言動に、ついイライラしてしまうことはありませんか?なぜイライラしてしまうのでしょうか。それぞれの人間の感情には「べき」つまり「譲れない価値観」があります。たとえば「人に会ったらあいさつすべき」「約束の時間は守るべき」「迷惑をかけたらあやまるべき」といった譲れない価値観です。

 人は理想と現実にギャップが生じると悩みやイライラにつながり、二次的感情として「怒り」となり、それが結果としてストレスにつながっていきます。つまり「べき」の境界線はひとり一人違うため、イライラが募ることになります。

 ではマネジャーは、いちいちイライラしないためにどんなマインドチェンジが必要なのでしょうか。「べき」の程度は人それぞれ異なります。人の力を活用するマネジャーは、「許容ゾーン」を広げることでイライラは軽減します。さらに自分がどのような「べき」を持っているのかを、1on1ミーティングなどの場を活用して、マネジャーとメンバーとお互いに伝え合うとズレがなくなり、信頼関係のベースになります。
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■多様性を組織の活性化に結び付ける

 現代は「多様性Diversityの時代」と言われます。多様性が加速した背景には、情報社会の進展があると考えられています。従来は、皆が同じようなテレビ番組や新聞記事を見て、同じようなドラマや音楽、スポーツ、ニュースを話題にしていました。しかし個々人がネットを通じてそれぞれ興味にある情報に触れ、共通する趣味を持つ世界中の人々とSNSで意見交換することができる現在、一人ひとりのスマホの中身は、それぞれ好みのアプリとコンテンツで大きく異なったものになってきているのです。
 
 そもそも「同じ会社の社員なんだから、考え方はそうは違わないはず」「同じ日本人なんだから、考えることはだいたい一緒」といった考え方を、これからのマネジャーは否定するところから始めなければなりません。
 
 たとえば、マネジャーが「Aくんは頭がいいね」とほめたとします。しかしAくんにとって「頭がいい」はほめ言葉ではないかもしれないのです。もしかしたら「馬鹿にされている」ととらえているかもしれないのです。試しに「Aくんは何とほめられるとうれしいの?」と聞いてみてください。「ぼくは『面白い』って言われるとうれしいんですよ」と答えたら、「やっぱりAくんは面白いね」ってほめてあげたほうが、Aくんはうれしいですね。

 多様な価値観を経営に取り込むことによって成果に結びつけ、イノベーションにつなげていく考え方を「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)=多様性の受容」と言います。インクルージョンとは、ただ受け入れるのではなく、多様性をどう活用してイノベーションに結びつけるのか、という積極的な意味が込められています。性別、年齢、人種、身体障害の有無といった外的な違いだけでなく、価値観、宗教、性格、態度、考え方などの内面の違いも含めて、「こうあるべき」と画一的な型にはめることを強要するのでなく、各自の独自性や強みを活かして能力を発揮できるような組織をつくり、経営環境の変化に柔軟に対応して大きな成果に結びつけるこれからの経営思想です。
 
 多様性の時代は、自分がしてほしいことは、相手はイヤかもしれない。自分がイヤなことは、相手は大好きかもしれないという前提に立つ必要があります。自分が苦手な仕事は、メンバーの中に「その仕事、得意です!大好きです!」という人がいたら、その人に任せたほうが仕事ははかどる、という考え方にほかなりません。
 
 たとえば、マネジャーであるあなたが海外出張の候補者を決めるとき、若い独身の男性社員と、小さな子供の母である女性社員がいたら、あなたならどちらを選びますか?「小さな子供がいるのに、海外出張はたいへんだろう」と考えて、無意識のうちに彼女の可能性を閉ざしてしまっていませんか?あるいは、自分より若い上司から「こうしたほうがよいのではないでしょうか」とアドバイスされたとき、あなたは彼の言葉を年齢のバイアスなく、ありのままに受け止めることができるでしょうか?「ダイバーシティ&インクルージョン」の視点から、あらためて自分と職場を点検してみてください。

■あなたの価値観はなんですか?

 さらにマネジャーであるあなたは、どのような価値観を持っていますか?「あなたの価値観は何ですか?」と言われて、すぐに答えられるでしょうか。
 
 私の実体験では、欧米の人は、比較的すぐに答えられる人が多いようです。それに比べてアジアの人は、答えに窮してしまうようです。もしかしたら宗教などの思想が、関係しているのかもしれません。
 
 価値観とは「ワクワクの源泉」あるいは「喜怒哀楽に触れるもの」と言われます。よい成果を上げるためには、よい行動が必要です。よい行動のためには、よい思考が求められます。ではよい思考とはどこから来るのでしょうか。意識の階層構造である「ニューロ・ロジカル・レベル」からたどると、そこには「価値観」が存在します。
 
 たとえばマイク・マクマナス氏は、ソースというワークショップで、価値観を探索しようとアプローチしました。ネッド・ハーマン博士は、脳研究のハーマンモデルで思考の好みを解き明かしました。またドナルド・O・クリフトン博士は、ポジティブ心理学からクリフトン・ストレングスを開発し、才能を科学しています。
 
 「リーダーはブレてはいけない」「リーダーには軸が大事」だと言われます。このリーダーのぶれない軸こそが、価値観にほかなりません。つまり、リーダーシップを発揮するためには、自身の価値観を明確にすることから始めなければならないということです。自分は何にワクワクするのか。何をうれしく感じ、何を許せないのか。自身のワクワクの源泉を言葉にすることは、リーダーシップに欠かせないだけでなく、自分らしいキャリアを描いたり、自分らしい人生を歩んだりするときにも重要な羅針盤になるのです。
 
 さらにマネジャーであるあなたは、あなたにとって大切な価値観があるように、メンバーにもそれぞれ大切な価値観があるのだということにも気づき、関心を寄せる必要があります。多様性の時代は、お互いの信頼関係を築き、お互いの価値観を自己開示し、尊重することから、チームビルディングが始まっていくのです。

【参考】

  • マイク・マクマナス著「ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。」(ヴォイス)
  • ネッド・ハーマン著、高梨智弘翻訳「ハーマンモデル―個人と組織の価値創造力開発」(東洋経済新報社)
  • トム・ラス著、古屋博子翻訳「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0」(日本経済新聞出版)

>> 佐伯 学 のコラム 前号(第2回)はこちらから

コンサルタントプロフィール

シニア・コンサルタント
佐伯 学 

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経営コンサルタントをなりわいとして今年で30年目。これまでのプロジェクト経験を集大成して、ここ10年は経営幹部やマネジャー、次世代リーダークラスの育成に力を注いています。
経営環境は極めて厳しい状況にありますが、こういう状況だからこそマネジャーの発する言葉や振る舞いは組織の成果に大きく影響します。
ピンチにいかにリスクテイクして、メンバーの力を引き出し、次のチャンスと希望を見出すかが問われています。
コンサルティングプロジェクトや実践研修、階層別研修を通じて、クライアントの心ある皆さんと日々一緒に考え、実践しています。

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