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「自社らしさを活かしてCS・EXをつくる」
第5回:WEBから始まるマーケティング/データ活用の仕組みと体制づくり
チーフ・コンサルタント 皆越 由紀

■WEBによる情報収集は、もはや顧客にとって欠かせないプロセス

 インターネットやスマートフォンの普及により、消費者の購買行動はWEBへ移行しました。もはや、情報収集は、顧客自らがWEBを検索し、基本情報を入手する(その上で問合せする)流れが主流です。また、お得な情報の入手やポイント割引に端を発したアプリのダウンロード、お友だち登録、◯◯pay決済なども、もはや若者に限らず利用され始め、それらの情報は企業へと提供されています。
 この傾向は、B to Cに限らずB to Bにおいても変わりません。仮に、日頃からお付き合いのある営業担当がいたとしても、顧客側は直接相談の前(少なくとも並行して)、「WEBによる情報収集」を行っています。
 最終的なお問合せの頃には、相談の範囲がある程度固まり、個社の具体的な要素をも組み込んで内容が深くなっていることでしょう。既存顧客との接点がどれだけ強固なものであったとしても、顧客は自ら最新情報を収集し、各社比較を行える環境にあります。
 WEB起点となったことで、その時点では曖昧な・将来の新規潜在顧客との接点が広がりました。情報収集の段階で、「自社が対象である」と認知される必要があります。そのためにも、定期的な情報発信も欠かすことはできません。営業担当者が、それぞれの顧客にアンテナを張り、常にアプローチし続けるには限界もあります。WEBを介した情報発信と営業担当者の対応はセットで進めていく必要があります。

■多くの企業がWEB・SNSによる情報発信の強化を課題としている

 2021年秋、JMACは「営業に係るDXの実態調査」を行いました(回答数1,000)。
 現在の取り組みは次の2つに集中しています。
 
  ①提案力の強化に向けた提案情報・ノウハウの共有
  ②受注後の商品・サービス提供プロセスの生産性向上
  (手続きの効率化および受発注情報の共有・一元管理・活用)
  加えて、今後の取り組み強化としては、回答企業の6割が次をテーマに掲げています。
  ③WEB・SNSによる情報発信
  ④インサイド・セールスの組織体制整備

 弊社への問合せをみても、提案力強化、営業業務の負荷軽減・効率化とともに、新規案件数の拡大に向けた問合せ数の拡大や潜在案件の育成・案件化といったテーマが増えつつあります。今回は、BtoBを中心としたWEB起点の情報収集・提供~案件化までのプロセスにおいて、顧客情報の活用や組織間連携の実態把握のポイントをたどります(下図)。
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■WEB発信情報・コンテンツへのアクセス解析プラス仮説検証による改訂

 まず、自社サイトが顧客の目に止まり、必要なタイミングで想起されるには、少なくとも次のようCX(顧客体験)が不可欠です。
  ① 検索時、ある程度上位に掲載される 
  ② 掲載情報が読みやすい
  ③ 内容としてわかりやすく、納得感がある
  ④ 顧客にとって欲しい・参考になる情報を比較的労せず得られる
  ⑤ 企業の特徴がよく分かる(有効なだけでなく、面白そう/他社と比較しても優良)
  ⑥ 詳細を確認したい/継続的に情報を得ておきたいと思える
  ⑦ 以降、想起される機会がある(そのための仕掛けがある)
 
 昨今、お客さま自身の情報を登録させることで資料のダウンロードを可能にする企業が飛躍的に増えました。最初から詳細に公開し過ぎれば、不特定多数・競合先に対し広く開示するばかりです。そのため、対価としてお客さまの情報をいただく背景があります。しかし、当初の開示情報が少なすぎれば登録いただくまでに至らず、その加減は難しいところです。少なくとも「ダウンロードしてみたい」と思っていただけるレベルのコンテンツ開示が求められます。
 
 また、日頃はアクセス・データ等をもとにからサイトの回遊状況や、情報登録・最終受注に至った層の動きを分析し、仮説を立て、コンテンツのアップデートをされていることでしょう。しかし、サイト離脱の本当の要因は、データのみでは本来判断できない内容でもあります。頻度は少なくても良いですが、お客さまへ直接働きかけ、確認・検証するプロセスも必要です。

■組織間連携による顧客情報入手後の継続アプローチ

 さて、細かく具体的なお問合せを受けた場合は、そのまま営業組織が個別に対応していることも多いことでしょう。また、リアルの展示会やセミナー等で一度に顧客情報を得た場合も、全体数が見えるため、そのまま営業組織側で優先順位を付け、手分けし対応してきたのがこれまでの流れではないでしょうか。
 
 しかし、WEB登録段階のお客さまはすぐに案件化に至るとは限りません。これまで同様に営業組織が直接アプローチするには限界があります。当面は、情報発信をしながらそのお客さまの動き(=データ)を静観する必要があります。

①潜在顧客の分析・抽出をどこが担っているか
 現在、そのような分析はどこが担っているでしょうか。個々の営業担当が担うには、もちろん負荷が高すぎます。多くは、マーケティング組織か営業組織内のインサイド・セールス部門が対応しているのではないでしょうか。しかし、各組織がそれぞれ仕事をしていると、その狭間で当該分析が抜け落ちることがあります。
 マーケティング組織はコンテンツが参照されて情報が登録されるまでを担い、インサイド・セールス組織では、情報を発信し続け、問合せが入れば営業担当が対応する…これでは、それまでの営業スタイルと大して変わりません。せっかくシステムが導入されデータが蓄積されているにも関わらず、活用されているとは言い難い状況です。対象として案件を温め、個別対応すべき群を抽出できてこそのデータ活用と言えます。

②どのような分析をし、対象データを抽出しているか
 また、案件化見込みの高い顧客群をどのような分析で抽出されているでしょうか。一般的なツールとして、顧客個別のデータ確認は比較的容易に行えます。しかし、個々に抽出していては時間がかかります。フォローの鮮度も落としかねません。特定のお客さま群をシステムで自動抽出するにも、どのような動きがあるデータを抽出対象とするか定めることが出発点となります。現状、MAツールのデフォルト設定を利用されている企業も多いかもしれません。その設定をどこまで納得して用いることができているでしょうか。
 案件化や受注に至った顧客は、そのような動きをしているといえるでしょうか。マーケティング組織側が持つ潜在顧客情報と営業組織側の案件化・受注顧客情報が別管理で途切れている場合、肝心なパラメータを用いることができていないことも多いようです。各組織が関わった情報を組み合わせ、傾向を捉える分析がされているかどうかが重要です。

③各組織間情報共有の仕組みは十分か/どの組織も役割発揮ができているか
 顧客接点は、大きく 「WEB上のコンテンツ/ダウンロード資料・発信情報→インサイド・セールス→フィールド営業担当」と変化します。接点が深まるにつれて個別対応度合いは高まりますが、各段階でどのような顧客情報をどのように取得し共有しているでしょうか。また、営業担当が対応した後の結果・傾向値をもとに、インサイド・セールスは以降の他案件で対応を変える取り組みができているでしょうか。
 次のような実態はよくある話です。
  ・そもそも潤沢にリストが存在しない・優良なリストが限られている
  ・リスト特性に応じたアプローチはない(どのリストにも、結局同じアプローチ)
  ・顧客へのアプローチ・ストーリーが定まっていない(インサイド担当者任せ)
  ・類似の情報提供ばかり・提供コンテンツに乏しい
  ・インサイドの聴取に漏れがある・確度判断・引き継ぎ判断が甘い
  (インサイド担当者によるバラツキが大きく、引き継いだ後のギャップが大きい)
  ・フィールド営業担当の登録負荷が大きく、結果フィードバックがされない
  ・上記のような問題認識・不満を持つばかりで、解決に向けた取り組みが無い

 インサイド・セールスには、拡大した潜在顧客へのアプローチと、これまでフィールド営業担当が個別にアプローチしてきた内容を部分的に巻き取った活動があります。カスタマージャーニーといった全体のストーリーづくりはもちろんですが、既存データを活用したフィールド営業担当からの業務切り出し&インサイド担当の標準業務設計・評価の仕組みづくりが求められます。

>> 「第4回:顧客接点において人がやるべきは状況判断による個別応対」はこちら

>> 「第6回:自社らしさを活かした新入社員研修」はこちら

コンサルタントプロフィール

経営革新コンサルティング事業本部 チーフ・コンサルタント
皆越 由紀(みなこし ゆき)

皆越さん

営業・販売やコンタクトセンターといった顧客接点機能を中心に「顧客満足」と「従業員の満足度(働き方・働きがい)」の双方を満たすサービス開発・顧客体験づくり、実現のための業務・マネジメント改革を支援しています。

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