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プロフィット・デザイン2.0 ~持続的な利益をデザインする~
第5回:プロフィット・デザインを成立させる3つの要素 ~その2~
シニア・コンサルタント 横山 隆史

■はじめに

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 プロフィット・デザインは、これまでの戦略・計画立案における手法やプロセスに限界を感じ、昨今の厳しい経営環境下においても持続的に利益を獲得している企業を研究し、新たな戦略発想の基軸として提唱したものです。 
 初版から10数年の時間が経過しましたが、たくさんのクライアントから支持を頂いており、また昨今の厳しい社会・経済環境に対応していくためには必要不可欠となる考え方だと自負しております。

 今般、社会・経済環境の変化に合わせて若干の加筆・修正を行ったものを、本コラムにて計8回にわけてお届けします。

3.チャージ要素

顧客の負担を軽くする
 顧客と持続的な関係を構築するためには、やはり顧客の負担は軽くすることが望ましいと言えます。裏を返せば、短期的な目先の対価を重視するのではなく、顧客のライフサイクルを見据えた課金の方法を検討する、と言うことになります。どのように対価を頂くか、という点もプロフィット・デザインの重要な要素となるのです。


まず、企業側の “論理” は捨てる
 多くの企業は価格設定において、「利益=売上-コスト」 を意識しています。また、企業には必ず決算があるので、期間損益を意識して価格設定がなされます。
 ですが、プロフィット・デザインのチャージ要素を考える上では、この呪縛とも言える既成概念からぜひ解き放たれて頂きたいと思います。顧客は企業側で生じていることに一切関心がないのです。あなたはこれまで、
  

 企業側で発生したコストを考えて購入を決めたことがありますか?
 企業の決算をみて購入を決めたことがありますか?
 例えば、化粧品を購入する際、そのメーカーの原価を思い浮かべて購入するでしょうか?
 もしくは、自動車を購入する際に、トヨタ自動車の決算書をみて、
 製造原価を確認してから購入したことがあるでしょうか?


 おそらくないと思われます。


顧客のライフサイクルを意識する
 企業の “論理” から解放される第一歩としては、

 顧客のライフサイクルコストを重視する

 発想への切り替えです。顧客のライフサイクルコストを意識すると、企業側は顧客との取引全体での累積利益を重視する発想へと切り替えることができます。
 顧客との継続的な取引においては、その局面に応じてプラス・マイナスが生じることが想定されます。ですが逆に、累積で利益がプラスとなればよいのであれば、一時的に大胆な価格設定を行うことが可能となり、マイナスの局面も許容されるようになってきます。
 
 一時的なマイナスや大胆な価格設定により市場を創造・拡大した事例は数多くあります。今ではスーパー・コンビニでホットの飲料が当たり前のように並んでいますが、かつてはメーカー側が無料でウォーマーを設置したという経緯があります。コーヒー豆を販売するメーカーも同様で、各社はコーヒー豆を購入してもらうため、飲食店にドリッパーを無料で設置してきました。浄水器メーカーも、機器本体だけでは赤字でしょうが、その後に生じるフィルタの交換で利益を上げています。初期はマイナスであっても、ライフサイクルで捉えれば大胆な価格設定が可能になるのです。


課金の発想転換
 従来型の課金方法から発想を転換するために、課金方法そのものをゼロベースで見直して下さい。課金のパターンは色々と想定できるのです。
【図9参照】

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 課金の対象者である “Who” を見直すことはできないでしょうか? 
 まずは

 負担者を変える

 という視点です。製品・サービスの受益者が必ずしも費用を負担する必要はありません。他の人が負担できる可能性は十分にあります。例えば、フリーペーパーは読者ではなく情報の提供者へ課金しています。また、無料で利用できるクレジットカードも同様で、利用した店が課金されています。
 
 さらに、“Who” の見直しとして

 負担者を増やす

 ということができないでしょうか? “シェア” がまさにそれであり、一人当たりの負担を大幅に減らすことが可能になります。カーシェアリングやシェアハウスなどが該当します。また、ネットジェッツという会社では、プライベートジェット機の共同所有というサービスを提供しています。エグゼクティブは時間を惜しむ傾向にあり、プライベートジェット機を使用したいものの、その稼働率の低さ、固定費の高さがネックでした。共同所有によってそれが解消されたのです。
 課金の “What” という視点をみてみましょう。

 課金の対象を変える

 という考え方です。従前から典型例とされているのが、男性用のカミソリです。本体は割安に提供し、替え刃で利益を得る仕組みです。また、プリンタも同様で、機械本体ではなく用紙やインクで利益を確保しています。

 「課金の対象を変える」 という場合、通常 “はじめは安く、あとで高く” という傾向にあるようです。しかし、アップルはその逆だと言われています。例えば、iPhoneやiPadを購入すると、かなりのアプリが無料で使用することができます。その魅力度が高いために、あえて高い機器であっても顧客は購入する、と言うものです。アプリはデジタルコンテンツなので、変動費がほとんどゼロに近いことに着眼した巧みな課金であると考えられます。
 次に、課金の “How” という視点はどうでしょうか?ここでは

 課金の単位を変える

 という視点をご紹介します。課金の単位は製品・サービスによって様々です。ですが、この課金の単位は業界・業種における慣行・習慣的な側面が強く、ごく “当り前” となって見落としがちな視点です。
 
 この事例をペンキで紹介します。通常ホームセンターなどで売られているペンキは 「1缶」 という単位で販売されています。ですが、購入者が 「1缶」丸々使い切ることは稀で、多くは残してしまう傾向にあるようです。そこで、使用した分に応じて、つまり 「リットル」「ミリリットル」 単位で従量課金販売することで、購入者のこのような不便を解消した事例があります。このようなムダが排除されるなら、多少単価が上がっても購買者はその価格を受け入れるでしょう。
 さらに、課金の “When” という視点ですが、

 課金のタイミングを変える

 ことはできないでしょうか? 「初回無料」 などが典型例で、後々の継続利用で課金しています。また、クレジットカードも典型例として当てはまります。多少余談となりますが、クレジットカードには興味深い副次的効果があります。本来なら製品・サービスの購入と支払は同時ですが、それを切り離す(支払いを後にまわす) ことで、購入者の支払負担感が減少するようです。そのため、現金支払いよりも多くの購入を促す心理的効果があるようです。
 
 さらに、リースや割賦払いもこの課金視点に該当します。よく言われる事例がゼロックスで、高額な複写機をリースにすることで販売台数を増加させたと言われています。
 最後に、課金そのものをしない、という視点もあります。

 一部の顧客を無料にする

 ことはできないでしょうか? 
 
 Skypeが典型的な事例になります。インターネットを利用して無料の電話サービスを提供していますが、他のインターネットを通じたサービス会社のように、広告宣伝収入に多くを依存してはいません。大多数の顧客は無料で利用でき、一部の有料顧客が全体の収益を支えているとされています。
 音楽配信のSpotifyも、従前はプレミアムへのアップグレードの広告はあったものの、第三者の広告はほとんど入りませんでした。これも同様の課金モデルだったと言えるでしょう。

>> 「第4回:プロフィット・デザインを成立させる3つの要素」はこちら

>> 「第6回:様々なプロフィット・デザイン」はこちら

>> 関連する研修:「プロフィット・デザインを活用した新規事業発想研修」

コンサルタントプロフィール

経営戦略事業部 シニア・コンサルタント
横山 隆史(よこやま たかし)

横山さん

政府系金融機関で、営業・審査業務を経験し、当社入社。
前職での経験を活かしてアカウンティング・ファイナンス等の分野で強みを発揮しながら、経営戦略、マーケティング等へ領域を広げてきた。
新規事業検討、ビジョン・中期経営計画策定、ビジネスモデル構築、企業/事業再生等といった分野で実績がある。
近年においては、新たなビジネスモデルの概念「プロフィット・デザイン」の普及に取り組むと同時に、次世代の経営人材育成支援に取り組んでいる。

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