コラムCOLUMN
MOT:技術を核にした事業化展開
第9回: 事業化計画の検討~コスト開発~
シニア・コンサルタント 細矢泰弘
■はじめに
本コラムでは、著者 細矢 泰弘が40年経験した新商品・新規事業のコンサルテイング事例から原理・原則的なポイント、基本的な考え方・進め方を計12回に渡って連載します。
今回は「事業化計画の検討~コスト開発~」についてお話しします。
1.コストを作りこむ(コスト開発)
事業は、技術、コスト、売りの3つの壁があります。今回はコストについて解説します。
JMACでは、90年代のバブルがはじけた日本の苦境時期にクライアントからコスト(原価)を半分にしたいとの要求でコストハーフという手法を開発しました。
コストは最初の戦略・企画段階が重要で、このフェーズでコストの大半が決まります。コスト構造を把握した上で、コスト目標・割付けをします。その上で全体戦略を練ります。
コスト戦略は、方式・構造革新、工法・生産技術革新、調達戦略、生産拠点構想の4つがあります。新規事業では、開発費を抑える要求が強く、既存設備の流用、中古機購入での試作開発も多くみられます。またキーパーツ購入品では、開発購買(開発段階からパートナー企業とコストを作りこむ活動)が必要になります。この活動では、顧客の要件、仕様までさかのぼりコストを作りこむケースが多くあります。また開発費は、企画台数で案分する場合も多いですが、この台数がサバ読みがあり、経営を悩ます種にもなります。この場合は企画台数の楽観、非観トレンドの2つの場合で検討します。
2.コスト発生要因の検討
下図はコスト発生要因を2つに分けて記しています。
左側は製品構造に起因するものです。構造の上では、シンプル構造、シンプル工程が目指す姿です。逆に「精度」とか「スキル」がいる工程で、結果的に差別化する場合が多いですが、これはコスト増加要因でもあり、機能とコストのバランスをどのように考えるかが課題になります。
右側は事業構造に起因する要因です。新規事業では、内外作区分、SCM、バリューチェーンをどのように企画するかも大きなポイントになります。日本の企業は、一貫ビジネスとして、自社ですべてを実施する場合が多かったです。最近では、自社の強みの部分のみで、あとは外に依頼する場合も多くあります。いずれにしても、自社の強みを活かしたバリューチェーンを構築できるかが事業成功のターニングポイントになることは間違いないです。
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コンサルタントプロフィール
R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
早稲田大学大学院非常勤講師
全日本能率連盟MC(マスターマネジメントコンサルタント)審査委員
細矢 泰弘
技術を核にした事業化を専門とし200以上の事業化をてがけてきた。リサーチ・提案だけでなく、研究開発からマーケテイング、コスト開発、生産技術まで一貫して支援し、キャッシュを回収するまでの"創って、作って、売る"実践を重視することである。技術特性をわかりやすい"顧客価値ことば"に変換して経営者と技術者の橋渡しと 技術者の事業家育成をライフワークにしている