コラムCOLUMN
「自社らしさを活かしてCS・EXをつくる」
第2回:オンライン営業への変化
チーフ・コンサルタント 坂田 英之
■コロナ渦で変わる営業部門を取り巻く環境
2020年初頭から始まったコロナウィルスの影響により、ワークスタイルがコロナ前とでは変わってきました。オフィス用品通販のアスクルの調査によると、テレワーク制度について「恒久的な制度になる予定」と答えた企業の割合が、2020年5月では10.9%であったものが、2021年4月では24%になっています。それだけテレワーク=リモートワークが常態化してきています。
営業部門でも、オンライン営業がコロナ渦発生当初は緊急避難的に行われていましたが、テレワーク同様に常態化してきています。そのような環境変化の中、常態化しつつあるオンライン営業をどのようにしていけば良いかをお伝えします。
■変わる営業スキル
まず「オンライン営業における商談の傾向について、どのような変化があったのか」をみていきましょう。
通常弊社がオンライン営業支援を行う場合、その企業の実態を調べるために、商談内容を録画(または録音)してもらい、その内容を分析します。その結果、オンライン商談では、対面商談と比べて以下の傾向が見られました。
①共感的態度が少なくなる
これはすべての人に共通した傾向である。共感的態度すなわちあいづち、うなずきが減ります。具体的には「なるほど。」「そうですよね。」の一言が出なくなり、首も下がらなくなります。オンライン営業では、相手の会話との間合いが掴みづらい。従って、対面では相手の表情や動作がわかり、会話の間のタイミングが掴めていたものが、オンライン営業ではそうもいかずあいづちが減る。うなずきについては、アイコンタクトが影響しています。相手に目を見られていると、聞き手は反応を返さなければと思うが、アイコンタクトがないと、(無意識で)反応を返すことを怠ってしまうのです。
②会話を深められる人とそうでない人の差がでる
対面営業ではそれほどではなかったが、インタビュースキルにはっきりと差がでます。インタビュースキルの差がどこにでるかというと、深堀り質問です。買い手が話しをする、または質問をする。それに対して対面営業であったら(会話の間合いがわかるからか)、「それはどのような理由ですか?」「それはどのくらいですか?」など質問をして、深堀りして商談を進めます。ところがオンライン営業だと、インタビュースキルがない人は、その質問が少なくなります。その結果表層的な会話で終始してしまい、会話は成立するが、売り手にとっては情報収集が浅くなり、買い手にとっては印象に残らない商談になります。
③個別顧客に応じて提案ができる人とできない人の差が出る
これは上記②とも関連する現象です。深堀り質問ができていないため、個々の顧客の個別事情に応じた提案ができる人とできない人の差がでます。しかしながらそれだけの現象ではありません。深堀り質問ができて顧客の個別事情が掴めている人でも、(対面営業ではできていたが)個別事情に応じた提案ができなくなります。要は情報収集と提案が分断される傾向が強くなります。理由は、オンライン営業だと、相手の反応がわからないため、商談を先に先に(短く短く)しようとする意識が働き、結果としてよほど意識していないと、情報収集した内容で、的を絞った説明をする、個別事情に特化して提案をするという意識が弱くなります。
■CX(=顧客体験)の観点からみたオンライン営業の問題点
前述したオンライン営業の商談傾向をまとめると、「オンラインにより買い手の反応が読めないため、共感的な態度が減り、会話が事務的・表層的なものになり、情報収集はするものの提案が薄い。」となります。このような商談は、CXの観点で見た場合、以下の問題点があります。
①会話が楽しくない
商談といえどもコミュニケーションです。そこには、売り手と買い手という関係性の以前に、人と人の関係性が必要です。従って、顧客は営業から尋問をされたいのではなく、会話・対話をしたいのです。
②メリットがない
商談は売り手・買い手双方にメリットがあって成立するものです。上記のような商談では、顧客側も気づかなかった課題やニーズが引き出されない。そして、“ハッ”とする提案が受けられません。
③ストレスがたまる
買い手も売り手の主張がすんなり理解できるとストレスが軽減します。(その結果購買につながるかどうかは別にして)共感的態度の欠如、的を外した提案は、買い手側の理解不足につながり、ストレスフルな商談となります。
■オンライン営業スキルのポイント
では、前述したCX上の問題点も踏まえてどのようにオンライン営業スキルを向上させていけばよいのか?ポイントは以下3点です。
①カメラを意識した共感的態度づくり
オンライン商談は、お互いの反応が見えづらいため事務的に進みがちです。そこでまずできることは、営業担当者が共感的な態度をつくることです。そうすると、お客様も返報性の法則により、反応を返してくれるようになります。ポイントは、「オーバーアクション気味にうなずく」「カメラ目線を外さない」「表情は常ににっこり(コロナ禍でマスクをしている場合は頬で笑う)」です。
②顧客を巻き込むインストラクション
実はオンライン商談でも、顧客は積極的に反応を示したいのです。でもいつ反応してよいかわからないのです。そこで、営業担当者には意図的に顧客を巻き込むインストラクション(進行)が必要になります。「●●様この部分については、いかかでしょうか?」「■■さん、この部分で質問ありますか?」などです。目安は5分に1回程度です。そして、今このタイミングでは、だれが話すパートなのかを明確にすることも忘れてはいけません。
③的を絞った提案=ベネフィットトークの活用
前述しましたが、対面商談に比べてオンライン商談は、情報収集と提案が分断される傾向が高いです。そこで営業担当者は、質問によって期待察知することで的を絞ること行うことが必要です。そのためには、深堀り質問を多用することです。深堀り質問のポイントは、なぜ(=背景・理由を聞く)、いつ・どんな場面で(=事実を掴む)、どのように感じたか(=感情を聞く)と良いです。そうすることで、顧客の期待察知ができます。要はどの部分に興味・関心を持ったのかがわかります。次はできるだけコンパクトに、的を絞った提案をするためにベネフィットトークを使います。ベネフィットトークとは、「商品の機能・特徴+聞いた興味・関心に基づくお客様のメリット」を訴求するトークです。
ここまで、オンライン・リモート商談への変化をお伝えしてきましたが、まだまだお伝えしたいことがあります。さらにご興味関心のある方は、AI+コンサルタントによる「オンライン営業スキル研修」 をご確認の上、お問合わください。
>> 関連研修「AI+コンサルタントによるオンライン営業スキル研修」
>> 「第1回:顧客体験(CX)から新規事業を開発する」はこちら
>> 「第3回:従業員体験(EX)でつくる働きがいのある組織」はこちら
コンサルタントプロフィール
経営コンサルティング事業本部 CX・EXデザインセンター
チーフ・コンサルタント
坂田 英之(さかた ひでゆき)
製造業、サービス業、情報・通信産業などのマーケティングおよび営業競争力革新を専門領域とする。
営業マネジメントシステム開発、セールススキル評価および強化、営業部門情報武装化(SFA)支援、ソリューション営業実践支援などの コンサルティングの経験を有する。
その他にも全社業務改革、CS対応マネジメント、中期事業戦略策定、組織編成の支援を行う。