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事業開発実践力養成研修
第2回:新商品・新事業開発のガイドライン設定
シニア・コンサルタント 池田 裕一

1.新商品・新事業開発のためのガイドラインの必要性

 新商品・新事業開発は、誰かのアイディアにすぐに飛びついてしまったり、流行に便乗する、他社の成功をそのまま模倣する、など安易に事業参入してしまう傾向が多いように感じます。

 しかしながら、社会の変化や業界・市場の動向を十分に情報収集・分析せずにブームに乗ってしまったり、表面的な流行りを追うなどの行為は失敗につながりがちです。

 また、いくらその事業が有望であっても、自社の実力が伴わなければ意味がありません。自社の技術や販路を活かすことができる分野、自社の人材やノウハウを活かすことができる分野を客観的に判断することが大切です。

 そこで、新商品・新事業開発を有効に進めるためには、個別のテーマ探索に入る前に、
 
 ①新商品・新事業に関する考え方の明確化
 ②新商品・新事業に向けた経営資源の投入活用方法

 といったガイドラインを設定することが有効だと言えるでしょう。

2.外部環境・内部環境の把握

 新商品・新事業開発のガイドラインを設定するためには、各種の分析を多面的に行い、客観的な判断のもとで方向性を議論することが重要です。

 新商品・新事業は会議の雰囲気や好き嫌いで参入分野が検討されることが多いのではないでしょうか。そのため、ガイドラインを設定することは、そういった主観的な議論の抑制につながるのです。

 重要となる客観的な分析として、大きく分けて①外部環境の分析と②内部環境の分析があります。

 ① 外部環境の分析:マクロ環境分析、ベンチマーク企業分析など
 ② 内部環境の分析:現事業動向分析、企業特性分析、自社経営資源分析など


■ベンチマーク企業・組織を見つける
 ベンチマーク企業の分析は、自社の企業活動にとって、パイロット的な役割を果たしてくれます。まず、ベンチマーク対象として、同様な規模感をもつ企業を選びましょう。そして、その企業のもっとも注力しているビジネス分野、企業ビジョン、中長期の事業計画や事業展開に関しての取組みの考え方や取組方向を把握します。

 ベンチマーク企業は自社の競合企業のみならず業界内の上位企業や先進企業、異業種での参考企業を幅広く対象とします。他社の事業展開から、自社の新商品・新事業展開にあたってどのような教訓をえることができるかがキーとなります。

 たとえば、自社が製造業の場合に「他社が積極的にサービス化を進めている」など今後の事業展開としての考え方を他社から学びましょう。

 一方、成功事例だけでなく失敗事例を他社から学ぶことも重要です。自社と類似している事業体質の会社が、新商品・新事業や新分野で失敗した経緯などを分析することで、リスクの予見、成否のポイントなどを予想することができるためです。


■新商品・新事業のための経営リソースを把握する
 新商品・新事業開発では、「世の中を知る、市場を知る、ライバルを知る」こととあわせて「自らを知る」ことが重要となります。

 「自らを知る」とは「自社の強みを知る」ということです。ここでいう自社の強みとは、開発・技術力、生産力、販売力、資金力、組織力などがあげられます。


■技術資源を把握する
 技術資源を把握するには、技術の分類を整理する必要があります。まず、自社の要素技術について分類を行いましょう。

 次に製品について製品群、製品名およびその用途や競合企業を整理し、図表の表側に位置付けます。そして技術分類と製品分類のマトリックスのなかで自社技術を位置づけます。
 こうして製品と技術がマトリックス上に位置付けられることになるのです。

 次に各技術について
 

  ・ユニークな技術(オンリーワン技術)
  ・他社より強い技術
  ・他社並みの技術
  ・他社より劣る技術
  (その製品に必要ない技術はブランク)

  
 の評価を行います。

 客観的に自社と他社を相対比較することは難しいことと言えます。自社内で行う場合には1人の担当がすべてを評価するのではなく、技術と市場の分かるメンバーが複数参画しワークショップ形式で評価を行うのが望ましいでしょう。
 最終的には技術全般が分かるマネージャーが確認を行います。こうしてメンバー全員の合意形成が目標となるのです。

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■自社の営業力を把握する
 現在、自社が持っている販売資源(チャネル)を分析し、今後の活用を検討しましょう。

 事業部門別に
  

    ・売上
    ・営業人員数
    ・重点顧客
    ・情報源
    ・広告の方法
    ・販売チャネル
    ・その他、販促等、売り方の特徴

 
 などを整理します。

 販売資源分析の実施は、これまであまり社内で認識されていない顧客への接点であったり、特定の販売ルートを持っていたりすることを発見するという点でメリットが大きいです。それらの顧客や販売ルートが今後注目され、新商品・新事業に有効な販路になり得る可能性があるのです。

3.新商品・新事業探索ガイドラインの設定

 これまでの分析結果を踏まえて、新商品・新事業探索のガイドラインを設定しましょう。そしてガイドライン段階でトップや関係者と合意形成を行います。


①探索方針
 探索方針は今回の新商品・新事業開発の全社的な方針を示すものです。
 まずは何のために新商品・新事業を行うかを定義しましょう。
 「売上拡大」「新たな収益の柱」だけでなく、「雇用確保」「企業ブランドの向上」などの狙いも想定されています。

 さらに、前提を明らかにすることも重要です。「過去やらないと決めた分野」「グループ会社と重複する分野」は先に除外するなど、参入しない分野は、明記しガイドラインに事前に組み込む必要があります。


②新事業展開方向
 探索方針を踏襲して、今後の成長方向を示しましょう。

 これまでの事業展開の特徴や成功・失敗要因からどのような成長方向が考えられるか、自社新商品・新事業展開の視点を明らかにしておきます。


③探索視点
 探索視点とは、「既存技術応用」「既存顧客対応」「グローバル」「スタートアップ」など新商品・新事業を探す切り口です。新商品・新事業のメンバーが複数の場合、探索視点ごとに分担し探索していくと有効だと言えるでしょう。

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コンサルタントプロフィール

R&Dコンサルティング事業本部 技術戦略センター
シニア・コンサルタント
池田 裕一

池田さん

機械販売会社の財務部門を経て、1990年(株)日本能率協会コンサルティングに入社。
以降、メーカーやサービス業を対象とした新製品・新規事業探索、開発テーマ設定、新製品・新規事業企画、新事業評価などのコンサルティング、研修、講演にあたる。
著書「新規事業・新用途開発技法とテンプレート」日本能率協会総合研究所「開発者のためのマーケティング」同文館出版など

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