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「ラインに貢献!スタッフ人材として「共通の心得」を学ぼう」
第7回:リッチスタッフ論①
シニア・コンサルタント 塚松 一也
■はじめに
それぞれのスタッフの業務内容・職務分掌は社内規定や一般書籍等で詳しく語られていますが、スタッフ職に共通に言える基本姿勢や仕事の考え方について書かれたものは、これまであまり見かけたことがありません。
本コラムでは、職務内容に係わらず、誰かを支援することが貢献になるという意味で、スタッフたる人が共通して心得ておくべきことについて、8回に分けてお届けします。
今回は、第7回「リッチスタッフ論①」をお届けします。
3-1.スタッフの脆弱化がもたらす問題
近年、企業の開発部門では、顧客・市場が求める開発スピードアップと開発費削減の要請に対して、開発のラインの人数を増やし、(間接費である)スタッフ人員を減らすことで対応してきたところが、少なくありません。ライン人数規模の拡大は、確かに「猫の手も借りたい」現場からすれば、何もされないよりは助かってはいるものの、人数が増え分業が進んだが故に、調整業務の増加、関係者で合意を必要とする意思決定の増大、その結果としての意思決定の遅延(関係者が多いため、タイムリーな打合せが持ちにくくなると)といった問題も生み出してきています。また、スタッフの削減により、(昔と仕事のしかたがかわらないままでの)ラインの「がんばり頼り」や「ラインの付帯業務の増大による業務効率低下」などをもたらしています。ひどい場合には、本来スタッフがやるべき仕事をラインが肩代わりするような本末転倒な症状もあったりします。適切なスタッフがいれば、標準化や知識蓄積等ができるはずなのに、そういったことが滞っているところもみうけられます。スタッフ機能が非常にプアな状態に陥っているのです。
3-2.スマートライン&リッチスタッフ化仮説
ラインとスタッフの分化は、ラインの効率を高めるために、実動部隊と支援部隊をわける発想です。スタッフが十分に機能していないためにラインの効率が落ちてしまうというのは、健全なライン&スタッフ分業とはいえません。「スタッフの間接費が目立つので・・」といった理由で徐々に削られていき、ラインがどんどん大変になってしまっている今の状況は、「ヘビーライン&プアスタッフ構造」とでも皮肉れます。ある種の悪循環です。この悪循環に歯止めをかけ、本来のあるべき姿に近づける努力をすべきだと考えます。あるべき姿の仮説として、専門性、先行性、革新志向の高いスタッフを潤沢に配置し、その貢献により、ラインがより少人数で効率的に仕事ができるような構図があると考えられます。右の「スマートライン&リッチスタッフ構造」がそれになります。
3-3.スマートライン&リッチスタッフ業務のイメージ
それでは、あるべき姿のひとつである「スマートライン&リッチスタッフ構造」について、開発部門を例にしてその役割分担を考えてみます。
ラインの役割は2つです。ひとつは、ラインの本業である製品の開発です。もうひとつは、技術研究や先行プラットフォームの開発です。
スタッフの役割も2種あります。ひとつは、製品設計ラインがより効率的になるように開発環境をよりよくする支援です。CAD・CAE等の整備や、情報や知識をラインが使いやすくする類の仕事です。有用なナレッジを蓄積し、活用しやすくするようなことも含みます。もうひとつは、未来の製品はどうあるべきかを考える「未来構想」的な仕事です。ライン業務に追われていると、目先の商品改良な発想に留まってしまいがちです。思い切った未来をイメージすることを、スタッフが担うのです。
コンサルタントプロフィール
R&D組織革新センター シニア・コンサルタント
塚松 一也
R&Dの現場で研究者・技術者集団を対象に、ナレッジマネジメントやプロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとして、魅力的なありたい姿を真摯に構想し、現場の組織能力を信じて働きかけ、じっくりと変革を促すコンサルティングスタイルがモットー。
ていねいな説明、わかりやすい資料づくりをこころがけている。