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「自律的に考え、自発的に行動できるマネジャー」を養成するためのヒント
第4回「マネジャーはメンバーとの信頼関係づくりがベース」
~内発的動機づけと心理的安全性~

シニア・コンサルタント   佐伯 学

■マネジャーの行動がメンバーのやる気を引き出す

 マネジャーのあなたは、朝、職場でどのようにメンバーとあいさつを交わしていますか?①メンバーが「課長、おはようございます」と言うのを確認してから、「おはよう」と声をかける。②職場に着いたら、メンバー全員に「おはよう」と声をかける。③職場でメンバーを見かける都度、「〇〇さん、おはよう」と声をかける。いかがでしょうか。
 
 動機づけには2つあると言われています。「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」です。外発的動機づけとは、アメとムチ、いわゆる外部からの報酬や刺激によってやる気になる動機づけです。すぐ行動に移りますが、「やらされ感」が伴って長続きしないという特徴があります。一方、内発的動機づけは、気持ちの中から「やりたい」と思う動機づけで、なかなか火は付きませんが、火が付くと長続きするという特徴があります。
 
 マネジャーは、自分の動機づけもメンバーの動機づけも、これらをうまく使い分けていくことが求められます。できれば内発的動機づけに火を付けたいですね。どうしたら、人は気持ちの中から動機づけされるのでしょうか。

■内発的動機づけに欠かせない「自己肯定感(自尊心)」と「自己効力感(自信)」

 心理学では、いろいろな内発的動機づけのエンジンが研究されていますが、その中でも代表的なエンジンは、「自己肯定感(自尊心)」と「自己効力感(自信)」の2つです。
 
 自己肯定感(自尊心)とは、「私は誰かの役に立っている」という気持ちです。「私は会社の役に立っている」「私はお客様の役に立っている」「私は職場のみんなの役に立っている」「私は家族の役に立っている」、そう思えると人は頑張れるのだそうです。
 
 自己効力感(自信)とは、新しいことをやるときに「よし、やってみよう」と思える気持ちです。自己効力感の高い人は、「よし、やってみよう」と思い、その後の行動につながりやすい。しかし、自信のない人は「私にはできないかもしれない」と尻込みする傾向があり、その後の行動につながりにくいのです。

 自己肯定感や自己効力感は、一朝一夕に高まるものではありません。基本的には「スモール・ステップ」「スモール・ウィン」が重要だと言われますが、小さなチャレンジが成功体験として認められ、ほめられることを繰り返しながら、徐々に高まっていくものです。

 また、「ほめる」と「しかる」はどのような割合が人はやる気になるのか、という研究も多くあるようです。一般的には、3:1や4:1などと言われており、「叱ったほうが頑張れる」という研究は、私が知る限り見当たりません。メンバーを上手に認めてほめること、認知と賞賛は、マネジャーがメンバーの力を引き出すときに欠かせない行動です。

■生産性の高い組織に重要な「心理的安全性」と「信頼関係」

 2012年から4年に渡ってGoogleの社内で行われたプロジェクト・アリストテレスの調査は有名になりました。「生産性の高い組織」とはどういう組織なのか、という調査です。ネットにもたくさんの情報が開示されているので、ご覧になった方も多いでしょう。 

 組織の生産性にいちばん相関の高かったキーワードは、「心理的安全性」だそうです。わかりやすく言うと、組織のマネジャーやメンバーに言いたいことを何でも言える風土です。Googleには優秀な社員が集まり、日々、高い目標に向かってイノベーションを起こそうとしています。前例はありませんし、失敗はつきものです。決してぬるま湯的な職場ではなく、高い目標にチャレンジする厳しい職場だからこそ、心理的安全性が求められるのです。
 
 二つ目に相関の高かったキーワードは、「信頼関係」でした。マネジャーによっては、「うちはコミュニケーションだけはいいから大丈夫」という方も多いのですが、メンバーから見た信頼関係は健全でしょうか。最近では、「退職代行サービス」という事業会社が増えており、問い合わせもかなり多いようです。嫌な上司と顔を合わさず、社員本人に代わって「彼、彼女は会社を辞めたいそうです」と3~5万円で退職手続きをしてくれるサービス。法律的には問題もあるようですが、昨今、マネジャーが考える以上に、職場の信頼関係はかなりこじれているように感じます。ウィズコロナで世間に不安が広がる中、自粛が続く職場では、マネジャーは、「メンバーはちゃんと仕事をしているのか」と不審に思い、メンバーは「マネジャーはちゃんと自分が仕事をしていることを評価してくれるか」と不安に思っています。オンラインでも1 on 1ミーティングが盛んに行われるなど、組織運営にとって「信頼関係」は改めて重要な課題になっています。

■認知と賞賛でメンバーを「自然体」におく


 マネジャーはメンバーの力を借りて成果を上げることが求められていますが、まず大前提は職場の「信頼関係づくり」。次に「動機づけ」です。

 マネジャーは、メンバーを各自がいちばん力の出せる状態におくことが求められます。キーワードは「自然体」です。自然体とは「自分らしくありのままの状態」のことで、不安で委縮したり過大に自己顕示したりせず、等身大でいることを指します。

 では、メンバーを職場で自然体におくには、何が重要でしょうか。マネジャー自身の自然体のストローク(やりとり)が、メンバー各自の自然体を引き出します。まずは日ごろの認知と賞賛です。メンバー同士はもちろん、マネジャーに欠かせない行動です。マネジャーが不機嫌だったり、大きな声を出したりすれば、職場には緊張が走ります。マネジャーが名前で呼んで個々人にねぎらいの声をかけたり、いつなんどきでも冷静にしっかりとメンバーの話を傾聴したりすれば、メンバーは安心して仕事に集中できます。

 さて、最初の質問に戻りましょう。メンバーがあいさつしてからマネジャーがあいさつするというのは、メンバーが視界に入ってからあいさつするまで、メンバーを無視していることになりますね。マネジャーが職場に向かってあいさつするのは、一見悪くないように思いますが、職場のメンバー個々人を無視しています。マネジャーにとっては、メンバーひとり一人を認知するという意味で、名前を呼びながら表情をみてあいさつし、いつも通りの彼、彼女の良好な状態であるかを確認する行為に、「マネジャーとしてのあいさつ」の意味が宿るのです。


【参考】

  • ・嶋田総太郎著「脳のなかの自己と他者 身体性・社会性の認知脳科学と哲学」(共立出版)
  • ・石井遼介著「心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える」(日本能率協会マネジメントセンター)
  • ・本間浩輔著「ヤフーの1 on 1 部下を成長させるコミュニケーションの技法」(ダイヤモンド社)
  • ・畠山芳雄著「マネジャー・どう行動すべきか」(日本能率協会マネジメントセンター)

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>> 佐伯 学 のコラム 前号(第3回)はこちらから

コンサルタントプロフィール

シニア・コンサルタント
佐伯 学 

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経営コンサルタントをなりわいとして今年で30年目。これまでのプロジェクト経験を集大成して、ここ10年は経営幹部やマネジャー、次世代リーダークラスの育成に力を注いています。
経営環境は極めて厳しい状況にありますが、こういう状況だからこそマネジャーの発する言葉や振る舞いは組織の成果に大きく影響します。
ピンチにいかにリスクテイクして、メンバーの力を引き出し、次のチャンスと希望を見出すかが問われています。
コンサルティングプロジェクトや実践研修、階層別研修を通じて、クライアントの心ある皆さんと日々一緒に考え、実践しています。

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