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「R&D組織・チームを変えていくためのインターナル・コンサルタント養成のヒント」
第1回:インターナル・コンサルタントはなぜ必要か
コンサルタント 仁木 恵理
■はじめに
はじめに、本コラムにおけるインターナル・コンサルタントとは、企業の変革課題に向き合い、変革の当事者に寄り添い、組織をより良くするための関わりをする存在のことを指します。インターナル・コンサルタントは当事者でもなく、社外のコンサルタントといった第三者とも違う存在です。
第一回コラムでは、そのような存在のインターナル・コンサルタント育成の必要性、目指すインターナル・コンサルタントのありたい姿についてお話をします。
1.ICの必要性
昨今の激しい環境変化や顧客要求の高まりによって、R&D組織はこれまで以上にスピーディな成果創出が求められるようになってきています。そのような状況下にあるR&D組織にとっては、一過性の変革ではなく、“変革し続けられる組織文化の醸成”が重要課題となっています。
こういった課題をお持ちの皆さんは、自前で、あるいはコンサルタントの支援を受けて、大なり小なり様々な取り組みを行われていると思います。しかし、各々に難しさがあり、お悩みをお持ちなのではないでしょうか。
まず、自前で行う際には、現場の変革をマネジャー自身が推進していくケースをよく見かけます。その場合、変革の当事者という立場から、自らの過去の成功体験の慣性が働き、変革が進まない。客観的に組織の課題を捉えづらく、変えにくいといった難しさがあります。
加えて、マネジャー教育だけでは変革推進者としての“あり方”までは学べず、”変革し続けられる組織文化の醸成” の実践の難しさに対応できないのが現状です。つまり、組織変革の推進を担うマネジャーが自らの役割拡大の期待に応えられていないというのが、変革が継続しない要因のひとつです。
一方、第三者であるコンサルタントの支援を受けながら変革推進を行う際には、コンサルタントが不在の時には変革が進まず、コンサルタント依存体質に陥りがちになってしまうという難しさがあります。また、予算が豊富にある場合を除いて、コンサルタントの訪問頻度が限られるため、社外にいるコンサルタントではタイムリーに手が打てないということもあります。加えて、コンサルティング支援がおわると、自分たちだけでは変革が継続できないといった悩みをよく耳にします。つまり、第三者であるコンサルタントの支援の限界も変革が継続しない要因のひとつなのです。
そこで、組織変革を担うマネジャーの役割拡大への期待と、コンサルタントの限界に対応するためには、社内でICを育てていくというのが、変革を継続していくひとつのソリューションになり得ると私は考えています。
2. インターナル・コンサルタント養成で目指す、理想的な姿とは
今回ご紹介するIC養成で目指す“インターナル・コンサルタントの理想的な姿”は、変革推進支援の対象となる組織・チームの議論をうまく進めるといった進行役に留まりません。“変革し続けられる組織文化の醸成”のためには、インターナル・コンサルタントではなく、当事者である組織・チームのメンバーが主体となって変革を進めていくというのが大前提です。また、取り組みの横展開などを見据えた動きも必要になってきます。
例えば、弊社には「生産性」と「創造性」を高め、「組織風土の活性化」を実現するKI活動というプログラムがあります。KI活動の考え方や手法をチームで継続実践し、その後、組織文化として定着させるために、インターナル・コンサルタントを養成することがありますが、その場合は理想的な姿として以下のような水準を目指しています。
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◆現状、課題の捉え方
・変革組織・チームの事業環境を理解して、客観的、構造的にチームの現状を捉えられる
・チームのありたい姿を描き、そこに向かうための課題仮説を設定し、リーダーと共有できる(リーダーに押し付けるのではなく、提案、ディスカッションを通じて、リーダーの腹に落としていくというのが肝要)
・目の前の課題のみならず、対象チームにとっての組織的な課題を考察し、重要だが後回しになっていた課題にも打ち手を提案できる
◆課題解決に向けたチームへの介入
・適切に優先度をつけてスピーディかつタイムリーにチームに介入できる
・チームの成果出しや自律的な取り組みへの動機づけを意識した介入ができる
・適切な関係者の巻き込みを提案できる
・打ち手の結果を見て総合的に考察を深め、次の打ち手に活かすなどICとしても振り返りを効果的に活用できる
◆ICとしての自己革新
・ICとして、自分の特性(持ち味)を理解し、チームのために活用できる
・ICとして、自身の変わらなければならない課題に向き合い、意識的に変えていける
◆組織文化の醸成
・振り返りによる教訓を財産化して、組織で共有できる
・良き事例や教訓の発信によって、他のチームを巻き込む等、横展開の動きができる
お気づきの方もいるかもしれませんが、上記のICのありたい姿は、なにもKI活動の継続や組織文化の醸成に限ったことではありません。改善活動のような組織を良くしていく取り組みの発展継続にも、共通して必要な要件になってくると思います。
IC養成では、上記の水準を目指して、アクションラーニングを通して、体系的に学びを深めていただきます。(プログラムの詳細は次回以降にご紹介します)
3.IC候補者選びが成功のカギ
では、どのような立場のどのような人物をIC候補として選抜し、育てていくとよいのでしょうか。 本コラムで取り上げている"スピーディに成果創出できる組織への変革"、"変革し続けられる組織文化の醸成"を目的にした場合の選抜のポイントをご紹介します。
ポイントの一つ目は、マネジャークラスをIC候補として選ぶことです。マネジャークラスをIC候補に選ぶことで、変革への本気度を明確に社内に示すことができます。 実際、シニアクラスのマネジャーがインターナル・コンサルタントとして現場チームに顔を出し、変革に寄り添ってくれることで「会社の本気を感じて、気合が入った」とメンバーの士気が上がったという例があります。
また、インターナル・コンサルタントとして支援するチームでリスクの兆候が見られたり、経営的な判断が伴う課題に気づいたりした場合、いち早く他のマネジャーや経営と連携してスピーディに手が打てるというメリットもあります。
二つ目は、変革の思いに共感し、チームの変革と同時に自己変革にも向きあえる人物を選ぶことです。相手に変わることを求めるのであれば、変わる勇気をもつことの難しさと重要性を理解し、率先垂範できることが大切です。
特に、マネジャーという立場での成功体験や価値観を一旦手放して、インターナル・コンサルタントとしての"あり方"を描き、そこに向けて自分自身を変えていくことができるか、というのがICとしての成長に大きく影響します。
三つ目は、支援する側とされる側の垣根を取り払い、チームと信頼関係が構築できる人物を選ぶことです。いかに早い段階で、チームのリーダー、メンバーとのフランクな対話を通して、同じ目線で彼らの悩みや苦しみに共感できるか。そして、未来に向けた変革の土台を作っていけるかが、変革を前に進める重要なポイントになります。 上記、二つ目と三つ目のポイントについては、本人の素養をベースとしつつIC養成プログラムのなかでも促進していきます。
第1回コラムはここまでになります。次回はIC養成の全体像についてお話します。
コンサルタントプロフィール
コンサルタント
仁木 恵理(にき えり)
2010年にJMAC入社以来、主にR&D部門の組織変革や技術KI活動、チームやプロジェクトのマネジメント力強化、企画提案力強化を中心にコンサルティング経験を積む。
最近は、"変革し続けられる組織文化の醸成"を目的としたインターナル・コンサルタントの養成に力を入れている。
コミュニケーション、ファシリテーション、ダイバーシティといったテーマで新人から管理職まで幅広い研修実績がある。
臨床心理士というバックグラウンドを活かして、ひとりひとりと向き合い、多様性を尊重した適切な関わりやフィードバックを行う。また、フィードバックによって、人の自己効力感を高め、「わたしならできる!」と一歩を踏み出すことを促していく活動スタイルを大切にしている。