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プロフィット・デザイン2.0 ~持続的な利益をデザインする~
第8回(最終):プロフィット・デザインの社会性
シニア・コンサルタント 横山 隆史

■はじめに

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 プロフィット・デザインは、これまでの戦略・計画立案における手法やプロセスに限界を感じ、昨今の厳しい経営環境下においても持続的に利益を獲得している企業を研究し、新たな戦略発想の基軸として提唱したものです。 
 初版から10数年の時間が経過しましたが、たくさんのクライアントから支持を頂いており、また昨今の厳しい社会・経済環境に対応していくためには必要不可欠となる考え方だと自負しております。

 今般、社会・経済環境の変化に合わせて若干の加筆・修正を行ったものを、本コラムにて計8回にわけてお届けします。

■プロフィット・デザインの社会性

これからのビジネスには社会性が要求される
 企業は、これまでになく社会性を要求される傾向にあります。これまでは単純に顧客と企業、つまり1対1の関係でビジネスを検討すれば十分だったと言えます。しかし、マルチステークホルダーという言葉が登場してきている通り、このような1対1でビジネスを発想することには限界が生じてきています。
 
 自動車業界を例にとりましょう。良い自動車を販売できれば、顧客側はその車の利用を通じて満足しますし、企業側には利益がもたらされ、お互いに利となる構図を実現することができます。一方、このような1対1の発想だけですと、地域や社会、そして地球環境などといった外的要因を完全に無視してしまうことになります。自動車の増加は交通渋滞を引き起こしますし、CO2の排出によって地球環境に悪影響を及ぼします。つまり、1対1というクローズされた世界でビジネスを語る世界は限界に近づきつつあり、地域や社会、地球環境といった外的要因をも利するようなビジネスが求められているのです。【図15】

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 このような話をすると、「プロフィット・デザインは利益を追求するような概念なのに、矛盾するのでは」 と感じられた方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。プロフィット・デザインの実現は、同時に企業の社会性を高める可能性を秘めています。
 
 ロック要素を例にとって説明すると分かりやすいでしょう。ロックの対象としては、

 顧客が有している “情報”

 があると説明しました。もしこの意図する通りに顧客の情報をコントロールすることができた場合、どのような社会的責任が生じるでしょうか。ロックした情報は、顧客にとっては唯一無二の大切な情報であるはずです。その情報が流出したり、守秘義務や個人情報保護を無視して他に転用された場合の企業責任はどうでしょうか? 大きな社会問題としてクローズアップされるに違いありません (逆を言えば、そのような大切な情報を預かるからこそ、顧客とは持続的な関係を構築できる、というものです)。
 
 また、

 顧客が有している “関係性・つながり”

 をロックできた場合はどうでしょうか? さらに企業側の責任は大きくなるはずです。顧客相互のコミュニケーション手段を企業が握っているわけですから、サービスの中断・停止などはできるはずもありません。
 
 プロフィット・デザインは、顧客をロックすることで持続的に利益を生み出す考え方です。であるがゆえに、ロックすることの責任は重大で、その一方でもたらされる利益は莫大である、という構図になるのです。つまり、利益の獲得と社会性は矛盾するものではなく、プロフィット・デザインにおいては逆に正比例の関係にあるとも言えるでしょう。


プロフィット・デザインによる成功は、企業の社会的責任を強める
 プロフィット・デザインを実現した企業をみると、その企業の社会的責任は強まる一方になると認識しています。この事例として、プロフィット・デザインを実現しているマイクロソフトを取り上げて考えてみましょう。
 
 いま、ほぼすべての企業でパソコンを利用しており、その多くはマイクロソフト社が提供する何らかのアプリやサービスを利用していると思われます。マイクロソフト社が提供するサービスには、非常にロック要素が強いであろうことは想像に難くありません。我々の大切な情報・知識はエクセルやマイクロソフトが提供するサービスの上に乗っており、その情報量の膨大さからも、他のソフトへ簡単にスイッチすることができません。さらに、マイクロソフト社のサービスにはネットワーク効果もあり、その互換性によって第三者との情報のやりとりも可能です。つまり、他のサービスへスイッチしようにも実質的に不可能と言っていいでしょう。
 
 そのようなマイクロソフト社が、度々行うサービス内容やインターフェイス、操作方法の変更を皆さんはどう思われるでしょうか? 変更があるたびに操作方法を覚えなければならず、仕事の効率性・生産性を大きく下げたことは記憶にないでしょうか?マイクロソフト社のサービスはすでに公共財としての性格を強めています。すなわち、マイクロソフト社の提供するサービスが社会の効率性・生産性に直結している、ということです。プロフィット・デザインを成功させた暁には、このような社会的責任が待っていると考えていいでしょう。
 
 このような観点からみると、今後の動向が気になる企業がいくつかあります。フェイスブックやグーグルはどうでしょうか?卓越したサービスによって個人情報をどんどん吸い上げています。その個人情報の取り扱いについては、度々マスメディアで取り上げられているところです。また、JR東日本が提供する 「Suica」 はどうでしょうか? 利用できる場所も広がり、ますます利便性が高まる 「Suica」 ですが、まさに財産である “おカネ” をロックしています。さらに、そのおカネの利用を通じてJR東日本には個人情報がどんどん蓄積されていきますし、またJR東日本がその情報を活用することも可能です。あるクライアントとの会話ですが、「確かに便利なのだが、これだけ情報を吸い上げられていくことはどうなのだろうか。“丸裸” にされているようで怖い」 という意見をお聞きしたことがあります。まさにその通りであり、それがゆえに企業側には責任ある行動が求められてくるのです。
 
 プロフィット・デザインは、社会性と利益を両立できる概念です。それを踏まえ、顧客との持続的な関係を構築し、価値ある利益を実現してほしいと願っております。

>> 「第7回:様々なプロフィット・デザイン ~その2~」はこちら

>> 関連する研修:「プロフィット・デザインを活用した新規事業発想研修」

コンサルタントプロフィール

経営戦略事業部 シニア・コンサルタント
横山 隆史(よこやま たかし)

横山さん

政府系金融機関で、営業・審査業務を経験し、当社入社。
前職での経験を活かしてアカウンティング・ファイナンス等の分野で強みを発揮しながら、経営戦略、マーケティング等へ領域を広げてきた。
新規事業検討、ビジョン・中期経営計画策定、ビジネスモデル構築、企業/事業再生等といった分野で実績がある。
近年においては、新たなビジネスモデルの概念「プロフィット・デザイン」の普及に取り組むと同時に、次世代の経営人材育成支援に取り組んでいる。

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