コラムCOLUMN
Withコロナ/Afterコロナ時代の「新しい学びのスタイル」とは
第2回: 『with/after COVID-19時代の「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査』からみた人材育成の課題(その1)
チーフ・コンサルタント 小河原 光司
■ピンチは改革のチャンス
先日、人材育成の責任者の方とお打合せをしている中で、とても興味深い話を伺うことができました。その方は、「コロナ禍の状況はピンチだけれども人材育成領域においては、実は、改革のチャンスでもある」と仰っていたことがとても印象に残りました。
このような各社様の人材育成に対する取り組みの現況を踏まえ、コロナ禍における各社の人材育成に関する現状を調査し、これからの人材育成の方向性を提言すべく、弊社JMACでは、『with/after COVID-19時代の「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査(以下、本実態調査と記載)』を実施しました。
本稿では、「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査結果からみた人材育成の課題と方向性について、数回にわたりお伝えしてゆきたいと思います。
人材育成に関わる皆さまに、アフターコロナ時代に向けた人材育成の方向性を共有、再認識して頂くことで、自社の業務機能強化に向けた活動における、ある種の羅針盤として、ご活用頂ければと思います。
■実態調査のフレームワーク
本実態調査においては、「JMACラーニングピラミッド」というフレームワークを開発しました。このフレームは人材育成レベル向上においては、『人材育成に直接関わる諸機能』だけではなく、人材育成を支える基盤であるタレントマネジメントなどの『人材育成インフラ諸機能』の両面から人材育成を検討するものです。
今回実施した実態調査は、この「JMACラーニングピラミッドの7領域毎に設問を設計し、最後に各社様の人材育成に関する総合達成度を記載する、という設問にて、ご回答を頂いた結果を集計・分析したものです。■実態調査結果サマリー
本実態調査結果から見えてきたWithコロナ/Afterコロナ時代の人材育成におけるポイントは、「研修実施後の積極的な上長関与」、つまり、管理者層のリーダーシップ発揮による、研修と研修後の現場でのOJTを連動させた組織的・日常的・継続的な育成が求められている、という点であると考えています。
調査結果の全体傾向を見ると、「育成フォロー」と「タレントマネジメント」に対する達成レベルが低い調査結果となっていることが、特徴的な点ではないでしょうか。
筆者は人材育成に関して、様々なご相談を受ける機会がありますが、ここ最近増えているご相談は、「研修した内容を現場で生かし、成果に結び付けてゆくか」という内容であり、また、「一律ではなく次世代を担う人材を選抜育成してゆくための仕組みをどう構築してゆけばよいのか」というご相談です。 筆者が、日々接しているクライアントの皆様の課題感が、この実態調査結果である、「育成フォロー」と「タレントマネジメント」に対する達成レベルの低さとして、調査結果に表れているものと考えております。
それでは、達成レベルが低く、課題として認識している「育成フォロー」と「タレントマネジメント」の領域に対する機能提供レベルを高めてゆくためのポイントを見てゆきましょう。
■「育成フォロー」機能の強化:BOA設計に基づいたAfter(実践学習)の仕掛けづくり
実態調査結果を見ると、人材の育成~実行領域における重点課題は「育成フォロー」領域になっています。
これまでの人材育成において、そのタイプを一言で表現すると、「一時的_集合型_知識学習偏重_実践学習分離」と表現できるのではないでしょうか。つまり、研修日だけ集まって知識を習得し、その知識の現場適用は各個人に一任、という育成スタイルです。
このスタイルでは、研修を実施する場合、受講生が現場業務から数日間離れることになります。現場管理者の中には、部下が研修に参加することに対して、本音では、良い顔をしない方も少なからずおり、そのため、育成部門より、研修後のフォローを現場管理者に依頼しても、上手く行かないケースが一定数存在していたかと思います。
こうした例に代表されるように、研修後の事後学習(事後実践)は、人材育成領域における長年の課題であったかと思います。
しかしながら、コロナを契機としたトレーニング環境の劇的な変化は、人材育成における「一時的_集合型_知識学習偏重・実践学習(OJT)分離」タイプからの変革をもたらしています。
Withコロナ/Afterコロナ時代の目指すべき人材育成タイプは、「継続的_分散型_知識学習~実践学習(OJT)連動」タイプと表現することができるのではないでしょうか。
リモートでのトレーニング環境が整備されたため、人材育成は「継続的」に、「一ヵ所に集まる必要なく」、「いつでもどこでも誰とでも講義やディスカッション」ができるようになりました。
このような環境下においては、知識学習は動画コンテンツなどで事前学習し、その反転学習としてリモート環境で集合し、ディスカッションを通じた知識の定着化を図り、その後、習得した知識を各職場で実務の課題解決として活用する実践学習として実施し、経営成果を上げる、という一連の学習プロセスを運用することが可能となります。
この事前学習(Before)~反転学習(On)~実践学習(After)という3つの学習ステップを通じた成果創出プロセスをトレーニングコースとして設計、提供することがBOA学習です。
トレーニングコースをBOA型に設計すると同時に、分散型の研修にすることで、これまでの集合研修参加に伴い発生する、『現場の欠員業務支援負荷』を低減することが、人材育成部門と現業部門間の軋轢を減らしてゆくことへと繋がります。
また、重要なポイントである「事後学習に対する現業部門の実践学習に対する積極的な関与」、すなわち「実践学習(OJT)連動」を実現してゆくためには、下記の3点に留意し、BOA設計することが大切です。
①育成する側である現場管理者が、受講生(部下)が何を学んでいるのか、その内容を知り、理解すること
②「現場管理者が抱える現場課題」と「人材育成トレーニングの実践学習すべき課題」をリンクさせること
③上記の活動が推進するような仕掛けが駆動するプロセスを設計し、そのプロセスを仕組み化すること
これまでご説明してきたように、これからの人材育成においては、管理者層のリーダーシップ発揮による、 OJTとリンクした組織的・日常的・継続的な育成が求められており、その実現に向けては、上記の3つの留意点を再確認し、BOAを意識した包括的な研修プロセス設計が必要となります。
■まずは、現場の実態を把握しよう
BOAを意識した包括的な研修プロセス設計に向け、まずは、なぜ現場管理者が、部下の人材育成に対して積極的に関与しないのか、その理由を探索してみてください。「忙しいから」という理由の背後に隠されている本当の理由、真因がなにか、を探りあてることが、現場成果に直結する研修を企画するファーストステップです。
もし、その真因がわからなくても心配いりません。仮説でも良いので、まずは、検討をはじめることで検証ができるようになります。仮説~検証を繰り返してゆく中で、研修の企画のブラッシュアップ、研修体系のブラッシュアップを段階的に実現してゆきましょう。
次回は、本稿にて提示した「実践学習(OJT)連動」を実現してゆくための3つの留意点に関して、その詳細内容と課題解決に向けたポイントをご説明してゆきたいと思います。
弊社JMACでは、研修に関わる企画・実施に関わる様々なサービスを提供しております。ご興味のある方、お悩みのある方は、無料相談会も随時開催しておりますので、本サイトのお問合せよりご連絡をください。本稿が人材育成に携わる皆さまの一助になれば幸いです。
本稿にて触れております「with/after COVID-19時代の「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査」結果を動画セミナーにて公開しております。ご関心がある方は、下記のURLをクリックの上、ご視聴可能です。
⇒ 「with/after COVID-19時代の「新しい研修・学習スタイル」提供に向けた実態調査」セミナー動画の視聴はこちらから
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コンサルタントプロフィール
ラーニングコンサルティング事業本部
チーフ・コンサルタント
小河原 光司
経営者目線の戦略推進と現場の制約条件双方から見た「実現可能な戦略の実行」に対するコンサルティングと成果創出型の実践研修を支援している。
上場小売業において、商品本部長兼事業開発室長として事業構造改革を主導し収益改革を実現した経験を持つ。
現在、事業開発室長としてリモートコンサルティング・研修の開発と普及を推進中。
ラーニングマネジメントシステム構築を主導する第一人者でもある。
中小企業診断士