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「品質保証を支える品質教育体系とカリキュラム」
第4回:やる気、やる場、やる力

プリンシパル・コンサルタント 宗 裕二

■「やる気」、「やる場」、「やる力」ということ

 「やる気」、「やる場」、「やる力」、という言葉がある。随分と昔、本で読んだ考え方だが、人材育成や教育について考える時にはこの視点を役立てている。言い方や解釈も幾つかあるようだが、私は私なりの解釈をしている。
 教育を企画する側と、教育を受ける側とで、理解や解釈に違いが出るであろうが、前述の3つの中で「やる場」を設定することが最も重要であり、難しいことであると考えている。
 教育を受ける側の立場から、「やる気」は勉強を真剣にしようとする意欲であるから、勉強をする本人の問題であり、勉強する目的をしっかりと持って最後まで気力を持たなければならない。何の為に勉強をするのか、その動機付けを自ら意識して自分自身を鼓舞することが必要だが、誰に頼ることもできず、自身の問題として捉えるしかないであろう。
 教育を企画する立場から、「やる気」は、如何に受講生のニーズに合ったタイトルにしてやる気を引き出すか、内容構成などで如何にして興味を持ってもらうかが重要であろう。
 また、「やる力」は、教育内容そのものであり、知識を身に着けたり、経験を積んだりすることである。こうした理解は、教育を受ける側も、教育を企画する側も同様に充実して内容を準備することであろう。

■「やる場」の設定

 「やる場」は、受けた教育を活かすことの出来る場のことであり、教育を企画する側が、「やる場」を設定することが望ましいのだが、なかなか難しい。教育を受ける側も、受けた教育内容を活かす場がすぐにあるとは限らない。しかし、この「やる場」がないと、折角受けた教育内容が風化してしまい、何処かへ行ってしまう。
 「知識としては知っているのですが、実務に生かせていないことが多くて・・・しっかり教育機会を設けて受講してもらっているのですがね・・・」というご意見は、教育企画担当者から良く聞く。特に、品質管理や品質保証の教育の根幹となる部分に「数理統計学」があり、統計的品質管理が日本の製造業では中心的な考え方になっているのだが、数学に近いイメージでとらえられている「数理統計学」の教育は受講生からは敬遠されていることが多い。
 教育を企画担当する重役の方は、統計的品質管理の重要性を理解しているので、自分自身の経験からも、教育すべき項目として理解しているようで、教育項目に「数理統計学」を入れるべきであると判断していただいているようだが、応用力が必要であるため、「やる場」の設定が難しく、苦労されているようだ。

■本当に必要な力

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 企業で企画する教育は、企業活動に貢献する人材は育成する為に企画されているはずなので、本来は「やる場」が先にあって、教育項目が決まるはずである。しかし、組織の専門化が進んだためなのか、先達の定めた体系が継承されるのか分からないが、「やる場」とのつながりはあまりないままに教育項目が企画されてはいないだろうか。「やる場」があって、その為に必要であるから「やる力」を付けなければならない。「やる力」は即ち教育項目であり、従業員に教育を受ける「やる気」を出してもらうのが、真に教育担当者の企画力であり、説明力であろう。
 さらには、現在の「やる場」だけではなく、将来の「やる場」の為に、教育を企画することも重要だと考える。将来の「やる場」を考える為には、その企業に比較的長期のビジョンや目指す姿が無いと考えることができない。その企業の将来像を描くことと、教育を企画することは大いに関係が深いのである。
 また、大企業であれば当然のこととして、中小企業にとっても、この教育を企画し実施することは大切な成長戦略の一端を成すことは言わずとも知れたことである。教育費用は、支出に対してすぐに効果を発揮してくれることはなく、比較的長期に渡る投資であると考えなければならないこともあり、その企業に体力がなければなかなか大変なことを理解できる。しかし、将来、長きにわたり成長を続ける企業を創出したいと思っている中小企業の指導者は、早い時期から教育の企画を意識すべきであると考えている。人件費は決して費用ではなく、投資であると考えるべきだと思う。

■研修後のテスト実施

 教育企画の担当者から、「教育効果の評価」をどのように行うべきであるかという相談を時々受ける。また、教育研修の実施要望を受けて私が講師を務める場合もあり、研修の実施時には、「テストを実施して欲しい」との要望を受けることもある。
 私が実施する研修では、原則としてテストを行わないことにしているのだが、テストの実施を要望する担当者によると、「教育内容を理解したかどうかを知りたい」と考える場合と、「テストがあると言わないと教育を真剣に受けてもらえない」からだと考える場合とがあるようだ。内容を理解したかどうかを知りたいと思うのは、学生の時の名残だろうか。講師が内容を理解したかどうかを知って、教育コンテンツや構成にフィードバックをし、より良い教育内容とすることが目的であれば理解できるので、きっと、教育企画担当者も、次の企画時に役立てるつもりなのだろうと理解して「理解度テスト」を実施することがある。
 社会人教育において、その教育効果があったかどうかを測定したいのであれば、教育の内容の理解度ではなく、どれだけ業務(実務)に役立てられたかを図らなくてはならないと思う。「やる力」を測定するのではなく、「やる場」での活用度合いを測定しなければ、本来の教育効果を測定することにはならないと思う。
 従って、教育を実施した直後にテストのような形で教育効果を測定することはできず、受講した教育内容を業務(実務)に生かしたであろう頃合いで、どれほどの役立ちがあったかを測定しなければならない。受講した本人が「役にたった」ことをどれだけ実感しているのか、本人の評価を受けるのが良いと考えている。さらに、結果として業務(実務)の成果が出ているかどうかを客観的に評価し、教育を受けた本人のアクションと成果との因果関係が理解できれば最高であろう。

■評価するということ


 人は皆、一様に成長するわけではない。誰一人として同じ人はおらず、ユニークな個性を持っている。同じように教育を受けたからと言って、同じように成長するわけではないことぐらい誰でも知っていることだ。誤解を恐れずに言えば、「人が人を評価するなどおこがましい」と私は基本的に思っている。企業内教育を企画し、実施することで経費を支出し将来の人材に対する投資を行ったのだから、組織としてその効果のほどを知りたいのは十分に理解できる。しかし、教育によってのみ、人材育成ができるわけではない。

 「やる場」の大切さはある程度ご理解いただいたと思うが、重ねて申し上げれば「やる場」が十分醸成されていなければ、人を育てることはできない。良い「やる場」の醸成に必要なポイントは「マネジメント」であろう。今、流行りの言葉を使えば、「多様性を十分に尊重した」マネジメントである。能力のない人などこの世にひとりもいないのだし、ましてや皆さんの会社に入られた人たちは十分に高い能力を持っているはずだ。そして教育を受講してくれた。教育の内容や教育を受けた人を評価するのではなく、「やる場」が醸成されているのかどうかを評価することも考えていただけるとありがたい。「やる場」の醸成度合いに見合った教育を企画することを考えるべきなのだろう。

 ただし、「やる場」の醸成度合いをどのようにして測るのか、また、自社の「やる場」はどこなのか、どの程度のレベルなのかを知ることは大変に難しい。特に、その組織の中で長い年月を過ごされている方には分かりにくいし、測りがたいことだと思う。「外から穴を明けて覗く」必要があるのだ。私のようなコンサルタントは、「外から穴を明けて診る」ことを仕事としている。皆さんの周りにも意見をいただける方は多くおられるであろう。そうした人たちを活用してみるのも良いかも知れない。但し、活用の仕方はよく考えていただければ幸いである。

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コンサルタントプロフィール

プリンシパル・コンサルタント /品質経営研究所 所長
/国際経営コンサルティング協会評議会認定CMC
/技術士(登録番号第25742番;経営工学部門品質管理)
/(公社)全日本能率連盟 専務理事(兼業)
宗 裕二(そう ゆうじ)

宗さん

現場力の重要性を強く意識し、専門領域である「品質」を中心視座として、日々活動している。

モノづくり企業に求められる品質構築機能は、「最大の価値と、最小のリスクを、最短の時間で創出できる変換機能を構築する」ことであり、「結果としてミニマムコストのモノづくりが可能となり、最高の利益を獲得出来る」ことになると考え、「品質経営」として提唱している。その為に、「従業員の一人一人が、無意識のうちに、顧客価値を予見した行動を取れる文化を築く」ことが重要課題と位置づけ、その推進に力を入れている。

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