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「実践的人事評価関連研修のポイント」
第4回:人事評価(能力・行動評価編)

チーフ・コンサルタント 中村 文生

■はじめに

 本コラムでは、人事部門・人材育成部門の担当者向けに、評価者研修の効果を高めるためのポイントをお伝えしています。
 第4回目となる今回のテーマは「人事評価(能力・行動評価編)」です。

1.「プロセス評価」の意義

 今回取り上げる能力評価や行動評価は、一般的な評価要素の分類において「プロセス評価」に位置付けられるものです。

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 このプロセス評価に苦手意識を持つマネジャーは少なくなく、JMACが実施する人事評価者研修に参加するマネジャーからは、次のような悩みが聞かれます。
  「プロセス評価は評価基準が抽象的なため判断しにくい」
  「実際の部下の業務とプロセス評価の項目がリンクしない」
  「複数の部下の日常行動を細かく把握することは現実的に難しい」
 結果として、自信を持った期末評価ができず、明確なフィードバックもできないため、部下の不満が生じているケースは珍しくありません。

 たしかに、期末の目標達成度をある程度定量的に判断できる「結果評価」に対し、「プロセス評価」は文字通り期中のプロセス(部下の行動や能力の発揮度合い)全体を総合的に判断する力量が求められるため、評価者にとっては難易度の高い評価項目といえるでしょう。

 では、なぜ多くの企業は、「結果評価」のみならず「プロセス評価」を実施するのでしょうか。
 一つには、結果評価は環境要因に影響を受けるため、100%本人要因であるプロセス評価を加えることで、多角的に社員を評価することに繋がるというメリットが挙げられます。もちろんこの点は評価制度の公正性を担保するという観点で重要です。

 しかし、本質的に重要な点は、多くの日本企業が「良いプロセスが良い結果を生む」「プロセスには再現性がある」という価値観を重視しており、プロセス評価そのものを人材育成活動と捉えているという点でしょう。
 プロセス評価の一つ一つの項目や評価基準には、その企業が社員に期待したい行動や能力のエッセンスが凝縮されています。
 また、プロセス評価において定義された基準の行間には、その企業が大切にしている仕事のやり方やマネジメントポリシーがあり、評価制度においてプロセス評価を毎年継続して運用していくことは、その企業にとっての正しいプロセスを社員に浸透する人材育成活動に他なりません。

 つまり、人事評価の目的を「人材育成」と位置付ける企業であれば、このプロセス評価の意義を現場のマネジャーにしっかりと伝え、「評価しにくい」プロセス評価とどのように向き合えばよいかを教育することは極めて重要なことなのです。

2.「プロセス評価」を適切に行うとはどういうことか(3つの手順を理解する)

 では、なぜ、プロセス評価を適切に行うことができない事態が発生するのでしょうか。
 その要因を考える前に、まず、そもそもプロセス評価の手順とはどういうものかを見ておきましょう。
 簡潔に言えば、以下の3つの手順に整理することができます。それは、①自社のプロセス評価そのものについて正しく認識する、②部下の行動事実を把握する、③ ①と②を往復し解釈しながら評価ランクを判断する、の手順です。

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①自社のプロセス評価そのものについて正しく認識する
 あなたの会社のマネジャーは、そもそも自社のプロセス評価の項目を十分に理解しているでしょうか。

 期末の評価の時になって「そういえばこういう項目だったなあ」と思い出すようでは適切にプロセス評価を運用することはできません。なぜならば、評価項目が頭に入っていないということは、どういう視点で日常的に部下の行動を見ればよいかというマネジャーが有すべき「部下指導の視点」がないことと等しいからです。

 もちろん各評価項目の全ての基準を丸暗記する必要はありません。そうではなく、例えば「企画力」という能力評価項目が定められているとしたら「なぜ”企画力”という項目が必要なのか」「この部署でいうと”企画力”が発揮される場面というのは具体的にどういう場面なのか」といったことを自分なりに解釈することが大事なのです。

 すると、評価基準に対する表面的なレベルの理解が、腹落ちレベルの理解に変化していきます。つまり、「部下指導の視点」がマネジャーの中に醸成されることを意味します。

 もちろん「部下指導の視点」は、会社が定めた評価項目だけではありませんが、評価者という権限を会社から与えられているマネジャーであれば、自社のプロセス評価そのものについて十分に認識し、日々のマネジメントを行う責任があります。


②部下の行動事実を把握する
 プロセス評価とは何を評価するかといえば、言うまでもなく「部下の行動事実」です。
 そのため、できるだけ部下の行動事実に関する情報を多く収集したほうがよいということはマネジャーであれば全員が理解しているでしょう。

 しかし、評価者研修において「実際の部下の行動事実を複数挙げてください」という投げかけをすると、すらすらとペンが進むマネジャーとピタッと手がとまってしまうマネジャーに分かれます。

 この違いはどこから生まれるのでしょうか?

 先ほどの例の後者(行動事実を挙げられないマネジャー)からは「部下の人数が多すぎて一人ひとりの行動事実など把握しきれない」といった声や「リモートワークの進展によってそもそも物理的に顔を合わせる機会がないため把握しきれない」といった声がよく聞かれます。たしかに、これらの要素が部下との十分なコミュニケーション機会を妨げていることは事実でしょう。しかし、これらの要素(部下の人数の多さ、リモートワーク環境)は、先ほどの例の前者(行動事実を把握できているマネジャー)の一部にも当然あてはまるものであり、工夫次第で乗り越えられる要素といえます。もっと本質的な違いがあるはずです。

 行動評価を把握できるマネジャー・できないマネジャーの本質的な違いは、評価者として最終的に部下が納得できるフィードバックをする義務があることを理解しているか否かではないでしょうか。つまり、評価スキル以前のマインドセットの問題といえるのです。
もちろん実際の評価者研修では、マインドセットに加え、図表3のような「どのような場面で評価のための行動事実を把握するのか」といったティップス要素も重要でしょう。一例を紹介します。

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③ ①と②を往復・解釈しながら評価ランクを判断する

 プロセス評価の評価基準は、会社が社員に共通して期待したい能力・行動が定義されています。つまり、評価基準の表現は抽象化されています。よって、マネジャーには評価基準(抽象)⇔部下の行動(具体)を往復しながら置き換えて解釈することが求められます。

 例えば、「計画力」という能力項目が「上位方針および業務上の問題を明確にした上で実行に向けた実現可能な計画を策定する力」と定義されている場合を考えてみましょう。
 例えば、営業部門のマネジャーであれば、この全社共通の定義を営業部門に置き換え「営業第一部の方針に基づき、自身が担当している顧客に対する営業戦略上の課題を明確にして、顧客ごとの重点ターゲットとアプローチ方法を自ら明確にできる力のこと」と具体化して解釈する必要があります。
 さらに、ここで留まるのではなく、「3等級の社員Aに置き換えると例えば・・」といったレベルで部下一人ひとりまで具体的に解釈をし、部下ともこのイメージを共有しておければベターでしょう。

 時々「会社が定めた評価基準は私の部下には当てはまらない」というマネジャーがいますが、前述のように評価基準は抽象化されたものなので、「当てはまらない」ということではなく、実際には「部下に合わせて評価基準を具体化できていない」ということも少なくありません。

 とはいえ、この評価基準(抽象)と部下の行動(具体)を「解釈する」ということは、実際には簡単ではありません。評価者自身が経験を積み重ねることはもちろんですが、評価者同士でこの解釈についての目線合わせを行う機会をより多く持つことが重要です。

 JMACの『実践的評価者研修』においては、この「評価者同士の目線合わせ」を実戦さながらに経験するプログラムを重視しています。

3.プロセス評価に対する評価スキルを鍛えるプログラムのヒント


 ここまで、プロセス評価の3つの手順である①自社のプロセス評価そのものについて正しく認識する、②部下の行動事実を把握する、③ ①と②を往復し解釈しながら評価ランクを判断する、についてそれぞれのポイントを説明してきました。 要はこの3つの手順をマネジャーがしっかりと理解し精度を上げていく状況をつくりたいわけです。もしここまで本コラムを読んで頂き、自社の評価者の現状に問題意識を抱いたのであれば、実践的な評価者教育を検討頂くことをお勧めします。

 その際の効果的な研修プログラムの一つが「評価者同士の目線合わせ」です。

 もちろん、研修の場はあくまでも「トレーニングの場」です。しかし、できるだけ実戦さながらの目線合わせを実施し、研修終了後もマネジャー(評価者)同士がいわゆる評価者会議のような場で同じ議論ができる状態をつくれるようにしなくてはなりません。
 本コラムにおいては、代表的な目線合わせトレーニングの2つの方法を紹介します。

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 「A.ケーススタディ方式」と「B.実在者トライアル方式」がありますが、Aが初級者向け、Bが中級者向けです。より実践に近いのはBですが、評価スキルが未熟な場合はAから段階的に取り組むことをお勧めしています。

 以上、「人事評価(能力・行動評価編)」の研修効果を高めるポイントについてお伝えしました。本コラムが少しでも皆さまのヒントになれば幸いです。

>> 関連する研修:「評価者研修」

>> 関連する研修:「被評価者研修」

>> コラム前号 「第3回:人事評価(業績・成果評価編)」はこちらから

コンサルタントプロフィール

HRM革新センター
チーフ・コンサルタント 中村 文生(なかむら ふみお)

中村さん

メーカーの法人営業、人事系コンサルティング会社を経てJMACに入社。
人事・組織・人材育成領域のコンサルティングを中心に、これまで支援したクライアントは50社を超える。
「クライアント企業が長期的に成長し続けるためには、制度やシステムの変革のみならず、社員個々の意識と組織が変革しなければ意味がない」という考え方を重視し、中小・中堅企業から大企業の変革を支援している。
支援業種は、電機、自動車部品、化学、産業機器、製薬、医療機器、金融、商社、建設、IT、飲食、小売など多岐にわたる。
また、2015年からASEAN地域に進出する日系企業の海外拠点支援も手掛け、海外拠点コンサルティングに関する論文で第70回全日本能率連盟賞を受賞。

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