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「次世代経営人材育成研修のかんどころ」
第5回:「頭だけでなく、手足を動かす。フットワークの軽さが、アウトプットの成否を決める。」
シニア・コンサルタント   横山 隆史

はじめに~

 第5回は、最終報告に向けた取り組みについてご紹介したいと思います。

 次世代経営人材育成研修ですので、単なる知識のインプットだけではなく、そのインプットを活かして、必ずと言っていいほどアウトプットを求めます。そのアウトプットを最終報告会で経営トップに上申し、その内容で経営人材としての資質がはかられることとなります。
 
 そのため、受講者ご自身にとっても、また研修全体の集大成としてもアウトプットは非常に重要な位置付けとなるのですが、その “かんどころ” となる点をご案内したいと思います。

 ちなみに、(“手前味噌” のような話となり恐縮ですが)弊社日本能率協会コンサルティング(JMAC)が次世代経営人材育成研修で選ばれる理由は、このアウトプットに向けたサポートがしっかりできる点にあるのでは、と感じております。
 
 インプット研修のみでしたら、素晴らしい研修をされる同業は数限りなくあると思います。最近は新型コロナウィルスの影響もあり、IT面を駆使して最適な環境を提供する同業があることも十分認識しております。しかし、次世代経営人材育成研修の本来の目的に立ち返ると、やはり経営人材の育成が主眼となります。インプットの良し悪しだけでは決められません。
 
 弊社は、元々の出自がコンサルティングファームであることから、そもそもが個別対応・カスタマイズ対応であり、一品一様の課題・ニーズに対応してきました。次世代経営人材育成研修でも、受講者が掲げるテーマ・課題はまさに一品一様、バラバラです。そのような異なるテーマ・課題に対しても、コンサルティングで培ったスキル・ノウハウを活かして受講者に伴走できることが、選ばれる理由なのではないかと思います。

①現場に行く、聴く、見る

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 アウトプットの検討に向けて、おおよそのテーマが定まったら、かなり早い段階から 「とにかく、その現場に行って、聴いて、見てきて下さい」 と促します。新型コロナウィルスの影響で、現場へ赴くことが難しくなっていることは重々承知ですが、それでも 「オンライン等、代替手段があるかもしれないから、とにかく安全最優先を前提として可能性を探って下さい」 と促しています。
 
 情報には一次情報と二次情報があります。一次情報は、ご本人が探索した結果として獲得した、五感で感じ取った情報です。一方で、二次情報は、誰かが、何らかの意図をもって収集・加工した情報です。
 つまりは、その “誰か” の主観・フィルターを通した情報となるのですが、現在はこの二次情報が本当にあふれています。少し検索すれば、大概の情報は手に入れることができ、“分かったつもり” になってしまいます。しかし私は、次世代経営人材としては、この “分かったつもり” になることが非常に危険だと感じており、現場に実際に行く、聴く、見る、ことを重視しています。
 
 研修に参加される方は、次の経営人材として期待されている方々です。一方、組織の上位へ昇っていくほど、得られる情報は二次情報が中心となってきます。そのため、情報の “真贋判定” が重要となってくるのですが、現場を大切にしないトップは、その判定を下すことができなくなってしまいます。トップに立つ人間としての “目利き力” が欠けてしまうのです。
 
 さらに、二次情報は現在、誰でも入手可能です。ということは、競合他社も十分に把握している、ということになります。競合他社も知っている情報をベースにして対策を検討したとしても、所詮は同質の競争に巻き込まれるだけとなります。
 
 ある大手家電メーカーでの事例ですが、アウトプットに向けて、数時間も会議室で考え込んでいる方がいました。歯科向けのビジネスでよいアイデアが出ずに困っていたようなのですが、「現場で話を聞いてきましたか?」 と聞くと、まったくやっていないとのこと。あたかも思考訓練をやっているだけのような状態でした。そこで、「患者の “ふり” をして電話を何件かしてみては?」 と提案してみました。最初は相当な抵抗感だったのですが、やってみると案外楽しく、また新鮮だったようで、そこから先は堰を切ったようにアイデアが流れ出していました。

②新しいことを “やる”

 一方で、「現場に行く、聴く、見る」 と言われても、また上記のように 「電話かけてみたら」 と言われても、最初は相当な抵抗感です。新しいことを “やる” ことに、慣れていないのです。また、次世代経営人材育成研修ともなると、受講者はどうしても年齢的には “上の方” が中心になってきます。若くても30歳代後半、上の方だと50歳前半くらいの範囲になってきます。経験もスキルも十分にある。そうなると、どうしても過去の成功体験にとらわれているのか、「これでいい」 となってしまうようです。つまり、新しいことに日常的に取り組まなくなってくるのです。

 そこで、私の次世代経営人材育成研修では、「新しいことを “やる”」 という取り組みを毎回の研修でさせています。“やる” という部分がミソで、「分かっただけではダメ、つもりになってしまう、実際に “やって” みること」 としています。
 
 新しいことは、ご本人にとっての “新しい” で十分です。できれば、「最近流行っているもの、最新のもの、話題となっており気になっているもの、がいいですね」 と言っています。
 
 それこそ、テーマは何でも大丈夫です。些末に聞こえるかもしれませんが、今年度の事例を列挙すると
  ・ふるさと納税
  ・メルカリ等の中古品売買
  ・タクシーの配車サービス
  ・ウーバーイーツ等の宅配サービス
  ・カーシェアリング
  ・セルフレジ
  ・オンライン飲み会

 等と言ったものです。「なーんだ」 と思われるかもしれませんが、その人にとって “新しい” ものは、どうしても抵抗感が生じます。今年度も、「ふるさと納税、知っていたし、気にはなっていたけど、面倒だし…でも、やってみると楽しいし、お得だし、なぜ今までやらなかったんだろう、と気づかされました」 というご意見を頂きました。これを研修期間中の半年程度繰り返すと、大きな変化が生まれます。

  ■新たなことを “探す” だけで、情報感度のアンテナが高くなる
  ■経済・社会のトレンドを体感することができる
  ■“やる” ことへのハードルが下がり、おっくうさがなくなり、フットワークが軽くなる
 これは、次世代経営人材育成研修に限らず、ぜひお勧めしたい取り組みです。

③形にしてみる


 また、アウトプットに向けては、資料を作成するだけではなく、形にしてみることも非常に重要です。

 第2回でも触れました 「自社製品で知育玩具を作れないか」 という事例ですが、この会社は活動予算をチーム毎に与えていたので、その予算をフル活用して試作品を製作しました。たとえ試作品だとしても、実際に形にするというのは非常に有意義なことです。制作してみると、3Dプリンタの材料費が思わぬコストアップ要因だったり、組み立ててみるとかみ合わなかったり、入らなかったり...たとえ試作品が拙かったとしても、"気付く" という意味で非常に有意義です。この知育玩具も試行錯誤がありましたが、参加者からは 「いま会社に入って、一番楽しいです」 とおっしゃっていました。

 最近ですと、提案で 「アプリを作りたい」 という内容も多くあります。これはこれでいいのですが、「それでは、どんなアプリを作りたいのですが?」 と問い詰めると、大概は抽象的なことばかりが返ってきます。そこで、「実際にアプリを制作できなくてもいいから、どんなものなのか、"絵"を描いて下さい」 とお願いします。ここで差が分かれるのですが、本気で考えている人はUI:User Interface画面を詳細に描き、さらにどのように画面が遷移していくかも説明するので、非常に説得力があります。一方で、"ITは打ち出の小槌" くらいに捉えている方は具体的にすることができません。中には 「それではシステム部に...」 とおっしゃる方もいますが、「それでは、あなたの役割は何ですか?」 と問い詰めると、ご自身が経営人材として具体化する力、推進する力に欠けていると気づくことができます。

 次回は、このアウトプットに向けて、最終段階ではどう追い込んでいくか、その過程において次世代経営人材としての自覚をいかに高めていくか、について触れたいと思います。



⇒ 関連研修:
「次世代経営人材育成研修」の詳細はこちらから

>> 横山 隆史 のコラム 前号(第4回)はこちらから

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「次世代経営人材育成研修のかんどころ_オリジナル版(約16分)

次世代経営人材育成研修のかんどころ_ダイジェスト版(約2分)
from 日本能率協会コンサルティング on Vimeo.

コンサルタントプロフィール

経営戦略事業部 シニア・コンサルタント
横山 隆史(よこやま たかし)

横山さん

政府系金融機関で、営業・審査業務を経験し、当社入社。
前職での経験を活かしてアカウンティング・ファイナンス等の分野で強みを発揮しながら、経営戦略、マーケティング等へ領域を広げてきた。
新規事業検討、ビジョン・中期経営計画策定、ビジネスモデル構築、企業/事業再生等といった分野で実績がある。
近年においては、新たなビジネスモデルの概念「プロフィット・デザイン」の普及に取り組むと同時に、次世代の経営人材育成支援に取り組んでいる。

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