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新規事業創出ワークショッププログラム紹介
第4回:新規事業アイデアを事業企画に練り上げるポイント

チーフ・コンサルタント  栗栖 智宏

はじめに~

前回は、新規事業の初期アイデアを発想するポイントをお伝えしました。
今回は、初期アイデアを練り上げ、新規事業企画に仕立てていく方法をご紹介します。

1.ペルソナの設定 ~ある特定の一人を特定する~

 新規事業の初期アイデアは一見、画期的で有望に見えます。しかし、この段階では具体的なユーザ像や、サービス内容の抽象度が高い状況です。特に、特定の取引先等から要望された新規事業アイデアでは無い場合、当然ながら、顧客不在の状況です。そして、多くの新規事業アイデアは、具体的な顧客は定まっていません。新規事業検討の落とし穴は、アイデア起点、技術起点で商品、サービス開発を進めてしまう点にあります。いざ、デモやトライアルを行うと、ユーザ候補から期待する反応が得られない状況に陥ってしまいます。

 この様な落とし穴を避ける為に、初期アイデア時点で象徴的なユーザを特定する事が重要になります。この時に用いる概念が「ペルソナ」です。初期アイデアが解決する課題を抱える具体的ユーザ像を設定します。そして、自らがその顧客に憑依(ひょうい)する程、顧客理解を深めていきます。新たな市場を切り開いた事業は、実は創業者が最初の顧客である場合も少なくありません。例えば、世界的に普及するAirbnbは、創業メンバーが自宅アパートに旅行者を泊めたことからサービスから始まりました。また、散髪のカットに特化したQBハウスは、創業者自らが理容室で感じた散髪プロセスに関わるムダな時間を一切削除した、新しい形のサービス形態を実現しました。

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 筆者自身が、ある福祉・介護関連サービスを行う企業で新規事業アイデアコンテストをご支援した事例をご紹介します。このコンテストで、グランプリに輝いた企画案は、起案者自身が、実際にお客様から頂いた“諦めの声”に基づき提案したものでした。起案者は、ある特定のお客様が、法規制や行政ルールで、福祉・介護サービスを受けられず、困られている状況に日々接していらっしゃいました。この方々が助かる、安心できるサービスを提供したい一心での提案でした。勿論、サービス提供には行政との調整など法制度の壁を超える課題はありましたが、想定ユーザが明確であり、そのニーズも特定されている事、さらには社会的に意義のある事業として、会社方針で該当事業を推進する事が決定しました。

2.現場に足を運ぶ、顧客の課題を洞察する

 初期アイデアの具体的な顧客を設定したら、現場に足を運び検証します。我々が起案した画期的なアイデアが世の中に存在しない中で、想定ユーザは現状どの様にその困難を凌いでいるのでしょうか。また、どれだけの苦労や費用を掛けて対処しているのでしょうか。この想定ユーザの苦労度合い、問題の深刻度合いが高い程、初期アイデアは価値があるものと評価して良いと言えます。

 具体的なユーザ調査方法は、密着リサーチやビデオ撮影、グループインタビューなどを行います。その際に、想定ユーザへ下記図表の①~④の観点でヒアリングを行う事で、初期アイデアがユーザの問題解決に寄与するか、どれだけの価値があるのか評価する事が可能となります。

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 初期アイデアの練り上げで重要な点は、初期アイデアがそのまま事業企画になると思わないことです。そして、初期アイデアが変わる事を恐れない事です。逆に初期アイデアのまま企画検討が進行しているとすると、技術やサービス主導でユーザが置き去りになっている可能性が高いです。よりお客様の状況、困りごとを理解し、解決手段である初期アイデア自体を進化させていくことで、魅力ある企画案に仕立てる事が出来るのです。

3.新たな価値軸、指標を作り出す


 顧客評価を得たとしても、競合企業も遅かれ早かれ類似製品、サービスを提供してきます。その際に、自社の独自の勝ち筋を構築する事が重要です。第3回コラムでも触れた様に、最も大切なのは、パラダイムシフトを前提としている事です。従来の顧客の評価軸で優劣を競っていては、先行企業に追いつくことは容易ではありません。更には、コモディティ競争へ陥ってしまうリスクがあります。

 そこで、パラダイムシフトした世界における新たな価値軸の設定を行います。下記の図<図③>はあるプロダクトが生み出した新たな価値軸設定の例です。既存市場は、「処理が賢くない」プロダクトに対し、新規市場として「多少処理が賢い」が「使いにくい」プロダクトに溢れていました。一部ユーザは利用するものの、市場は十分に広がっていませんでした。この市場に対し、「処理が賢く」、「使いやすい」という、今までになかった新しい価値軸を示し、市場シェア構造を大きく変換したプロダクトの事例です。お気づきの通り、iPhoneです。この様に、既存競合製品に無い、パラダイムシフトを起こすだけの価値軸を創造しているかを検討・設定します。
 この市場に対し、「処理が賢く」、「使いやすい」という、今までになかった新しい価値軸を示し、市場シェア構造を大きく変換したプロダクトの事例です。お気づきの通り、iPhoneです。この様に、既存競合製品に無い、パラダイムシフトを起こすだけの価値軸を創造しているかを検討・設定します。

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4.市場の魅力を確認する


想定ユーザを特定し、新たな価値軸の検討と並行して、市場の魅力を確認します。新規事業検討で重要でありながら、見落としがちな点は、想定事業規模の検証です。特に数千億円以上の売上規模を有する企業では、数億円の事業は非常に小さく、単体事業としては魅力的でも、全社の事業ポートフォリオを踏まえると、他の事業に経営資源を配分すべき。という結論になります。

 新規事業検討時に市場の魅力を確認する考え方に、「TAM-SAM-SOM」というフレームワークがあります。

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 まず、TAMは、本企画が事業対象に出来る最大市場規模の設定です。企画内容や自社の販売網も踏まえつつ、エリア展開を国内のみとするか、海外も対象市場とするかなど精査します。その上で、SAMで事業初期段階においてターゲットとする顧客を特定し、具体的な初期セグメントにおける市場規模を推定します。そして、SOMで当社が獲得想定するシェア目標を定めることで、当社の事業規模を想定する事が可能となります。初期は小さな事業規模でも、将来的に対象とする市場セグメントを拡張することで、最終的にどの事業規模まで成長を狙えるか試算する事が可能となります。

 以上の検討により、ターゲット顧客を明確化し、新たな価値軸を設定し、当社が取り組むだけの事業規模がある事を確認する事で、事業企画の練り上げを行う事が可能となります。

 次回は、ビジネスモデル検討や財務計画試算の基本的な考え方をご紹介します。

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from 日本能率協会コンサルティング on Vimeo.

コンサルタントプロフィール

経営コンサルティング事業本部 
チーフ・コンサルタント
栗栖 智宏

チーフ・コンサルタント 栗栖さん

2006年にJMAC日本能率協会コンサルティング入社以来、製造業を中心に100社以上の改革活動を支援している。
経営計画や事業計画策定を中心に、多数の収益改革や業務プロセス改革の支援実績を有する。また、新規事業創出支援も手がけるなど、事業全般のテーマに対するコンサルティングを展開中

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