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技術を核にした新事業開発を担う人材育成を考える
第2回:With/Afterコロナ時代の事業化人材育成とは

チーフ・コンサルタント  小田原 英輝 

◆新型コロナウイルスの新事業開発への影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、日本企業の新事業開発の取組みにも様々な影響を与えています。
 
 市場や顧客ニーズ面では、飲食・旅行・公共交通などの業界に大きな打撃を与えました。しかし一方では、感染症対策や働き方関連市場など、コロナ危機だからこその新たな需要を生み出しており、各社にとっての新事業開発機会となっています。
 
 また、新事業開発における目標面にも影響を与えています。サプライチェーンの混乱や消費動向による影響を受けて収益が低下してしまったため、コロナ禍のような危機下でも安定的に収益を生み出すことができる新事業を生み出したいという観点が、従来よりも重視されるようになってきています。
 
 新事業開発に与える直接的な影響として、予算面への影響も挙げられます。当面の利益を確保するために予算の引締めが行われ、短期的にはキャッシュを生み出さない新事業開発にかけられるリソースは特に削減される傾向が強くなっています。

 これらの変化を踏まえ、With/Afterコロナ時代の新事業開発では、下記のような観点での人材の育成が重要となってきています。

  

①社会課題(SDGs)に着目し、With/Afterコロナの事業機会を掴める人材の育成
②ビジネスモデル革新で、安定して儲け続けられる事業を構想できる人材の育成
③ムダを省いたリーンな事業開発で、事業化を加速できる人材の育成

①社会課題(SDGs)に着目し、With/Afterコロナの事業機会を掴める人材の育成


 コロナ禍のような危機は、危機だからこその新たな需要も生み出します。危機への対応は、社会貢献に繋がると同時に事業機会と捉えることもできます。実際に東日本大震災後にも、再生可能エネルギーやスマートコミュニティ、防災製品といった分野で多くの企業が新事業を生み出しました。

 こういった社会課題を俯瞰して新事業を企画していく際の起点として有効なのがSDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)です。SDGsは2015年に国連本部で150カ国以上の加盟国首脳が参画して採択された"先進国・途上国を問わずすべての国を対象とした社会課題に関する国際目標"で、2030年までの17の目標(Goals)と169のターゲットから構成されます。国際社会が共通認識化した課題であり、投資や規制緩和なども期待できるため、企業にとっては将来の事業機会の見極めに役立つと言われています。

 例として、SDGsの目標から、コロナ危機に関連した下記のような社会課題を挙げることができます。

 目標2:飢餓をゼロに ⇒飲食店の食料需要変動/廃棄問題
 目標3:すべての人に健康と福祉を ⇒公共施設や職場などでの感染症対策
 目標4:質の高い教育をみんなに ⇒リモート教育、教育現場での感染症対策

 こういった社会課題を俯瞰した上で、自社の技術的な強みを活かしつつ、具体的な顧客像や課金の仕組みといったビジネスモデルを構想できる人材が求められる時代になっています。

②ビジネスモデル革新で、安定して儲け続けられる事業を構想できる人材の育成


 経済混乱や不況に強く、安定した事業を実現するための鍵となるのが、ビジネスモデルです。具体例としては、消耗品ビジネス(リカーリング)、サブスクリプションビジネス、アフターサービスビジネス、ストックビジネスなどが挙げられます。

 特に、クラウド型のサービスなどDX:Digital Transformationによるビジネスモデルは、今回のコロナ禍のような実態経済混乱下においても、レジリエンスなビジネスを実現するための有効な手段となります。例えば、ある製造装置を売り切りで設計・製造・販売していたエンジニアリング会社は、AI/IoTを活用したクラウド型の分析/アフターサービスビジネスを展開することで、コロナ禍においても安定的な収益を確保することができました。

 こういった革新的なビジネスモデルを構想できる人材を育成するためには、ビジネスモデルの定石の型を複数学び、自分たちのビジネスに応用発想できるようにすることが有効です。JMACでは、儲け続けられるビジネスを実現している企業事例から抽出した、50を超えるビジネスモデルのデザインパターン集を蓄積しており、そのデザインパターンを基にしたビジネスモデル構想や人材教育を行っています。

③ムダを省いたリーンな事業開発で、事業化を加速できる人材の育成


 コロナ禍のような緊縮予算化では、ムダを省いた事業開発スタイルが必要です。そのためには、現在進めている新事業テーマのビジネスモデル仮説の中で不確実性の高い仮説の検証に特化して事業開発を進めることが有効です。

 例えば、顧客価値のインパクトについて十分な検証ができておらず不確実が高いテーマの場合には、一時的に開発の手を止めてでも、コストや工数をかけて実証に協力してくれるニーズの強い顧客の探索に特化するような進め方のイメージです。顧客価値のインパクトが不確実なまま開発を進めてしまっても、それが後に顧客にとって価値が小さいと判明した場合、開発成果がムダになってしまう可能性もあるためです。

 こういったムダを省いたリーンな事業開発を実現するためには、新事業テーマのビジネスモデル仮説とその検証状況を見える化し、仮説をマネジメントしていくスキルを身に着けることが必要となります。

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◆終わりに


今回のコラムの中で、社会課題(SDGs)に着目した新事業企画について触れました。次回のコラムでは、その他のアプローチも含めて、技術を核にした新事業を企画する様々なアプローチについてご紹介したいと思います

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MOT:技術を核にした事業化実践研修のご紹介_オリジナル版(約14分)

MOT:技術を核にした事業化実践研修のご紹介_ダイジェスト版(2分30秒)
from 日本能率協会コンサルティング on Vimeo.

コンサルタントプロフィール

チーフ・コンサルタント
小田原 英輝(おだわら ひでき)

チーフ・コンサルタント 小田原さん

技術を核にした新事業/新商品創出に関するコンサルティングを中心に、製造業の幅広い業種のクライアントを支援している。 近年は、オープンイノベーションやビジネスモデル策定、特許戦略策定などにも注力しており、継続して成果を出し続けるための仕組みづくりまで支援するスタイルや現場伴走型の支援スタイルが特徴。

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