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女性コンサルタントが語る「一人ひとりが輝く組織とは」シリーズ
第2回:「本当はどうしたいか」が、個性を輝かせる
チーフ・コンサルタント 大崎 真奈美

◆たった15年で価値観は大きく変わった

 私がJMACに入社したのは2005年ですが、当時は今ほど「女性活躍」「ダイバーシティ」といったキーワードは語られていませんでした。しかし同僚やクライアントに恵まれたのか、自分自身が「女性である」ということで差別的であると感じたことはありませんでした。ただ、入社して3年目に結婚する旨を当時の上司に告げた際、数分間沈黙され「歓迎されていないのでは」と不安になったことは今でも覚えています。この上司はすでに引退していますが「この労働条件で続けていたら、退職するのではないか」と懸念したのかもしれません。また、結婚後数年たって別の上司とは「子供を産むなら昇格してから」という話をしたことも覚えています。当時私自身この件は何の違和感もなかったのですが、現在ならキャリアを優先したライフプランを他人が提案するということは、場合によっては問題になるでしょう。

◆自分は「本当はどうしたいのか」とそれに向き合ってくれた会社

 2015年ころ子供を授かりました。私は当然仕事を続けられないと思っていました。モデルケースとなるコンサルタントも見当たりませんでしたし、当時は土曜日の仕事や地方出張も当たり前でその働き方は変えられないと思っていました。私は母が専業主婦だったこともあり、ある程度は子供との時間も持ちたいと思っていたので、ベビーシッターにお願いするという選択肢も魅力的ではありませんでした。仕事への自信も失なわれていたタイミングだったことも、辞めようかなという気持ちを後押ししていました。
 
 産休前に当時の上司に「復帰後はどうしたいんだ」と何度も訊かれました。しかし口から出てくるのは「やめるべき理由」ばかりで、本当はどうしたいんだという問いにずっと答えられませんでした。
 
 育児休暇に入り時間ができたので、生活面も含めて自分はどうしたいのかということをじっくり考え、つぶさに書き出し、上司と共有しました。「続けていく自信がない」という点についても、「自分が続けていきたいかどうかが大事で、続けられるかは私が判断することではない」と自分の中で折り合いを付けました。その後JMACの中で議論がなされ制度が改められ、私は今でも無理なくかつ当時よりも意欲的にコンサルタントを続けることができています。あの時、「本当はどうしたいんだ」という問いがなければ、私は今でも環境のせいにしてどこか不満を抱いたまま人生を過ごしていたかもしれません。

◆「本当はどうしたいのか」はD&Iの必須事項

 さて、「女性活躍」「ダイバーシティ」の取り組みは各社の動機がありますが、私は本コラムのタイトルのように「一人ひとりが輝く組織」つまりD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)こそ、目指すべき姿と考えています。ひとくくりに「女性」といっても、望む働き方はそれぞれ異なります。それを「女性だから」ということで、対策を講じても根本的な解決にはなりません。かといって、マネジャーが部下それぞれの個性を見定めて、個性に見合った仕事の展開をしていくのは、能力的にも時間的にも至難の業です。個性を活かした仕事をしていくのであれば、当事者自らが本心を表現し、できることから働きかけていくことが必須です。その方が、当事者としても「自分で考え選択した」という経験ができ、自信につながります。管理職の仕事は、それを必要に応じて受け止めて組織の意向と調整を図っていくことになりますが、入り口は一人ひとりの「本当はどうしたいのか」なのです。

◆大切なことは、思いの実現ではなく「自覚」

 私はあるシステム開発会社の組織革新を支援していますが、先週若手社員のAさんが「大崎さんにお礼をしたい」と話しかけてくれました。革新活動の一環で、社員の方と個人面談する機会があり、その中にAさんもいました。Aさんは業務へのモチベーションが下がっていましたが、30分の面談でやってみたいことを見出し、実際に上司に伝えてチャンスをつかみました。Aさんが話してくれたのは、「その後チャンスは遠ざかってしまったけれども、今の業務も楽しくなってきた」ということでした。

 実は心理的な視点でも「本当はどうしたいか」という問いかけは、それが実現すること以前に、本当に自分を発見することによって、気持ちが前向きになるという効果を説明することができます。

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「会社の中で、どうせやりたいことを言っても聞いてもらえない」という現場の声を聞きますが、よく聞くと「(70名部下を抱えている)部長に、面談で一回言っただけ」といったケースが多く、自ら実現しようという動きが乏しい。それはその程度の思いだということであり、自分の本心について深く自覚できていません。また、本当は今特にやりたいと思えることがなく模索している状態なのに、期待に応えようと無理に「○○といったことがやりたい」というのも、本心ではありません。「明確にやりたいことは見つからないから、今は言われたことをしっかりやってみよう」という自覚の仕方でも、意欲がわくことがあります。

◆「本当はどうしたいか」を妨げる「セルフイメージ」


 しかしながら、本当はどうしたいかということが自覚できても、その実現に向かおうとすると現実的な難しさに向き合うことがあります。例えば、自分の本心を伝えたときに、思ったほど関心が寄せられないと「自分は人と違うことを言うと嫌われる」と感じてしまい、本心に向き合いづらくなることがあります。しかし同じ状況でも「単にうまく伝えられなかっただけかな?工夫しよう」と思える人もいます。

 この違いは「セルフイメージ」に起因していると考えられます。セルフイメージとは、無自覚にとらえている自分自身のイメージのことです。自分に対する認知バイアス、つまり思い込みの一種です。セルフイメージは、生まれてからの経験の中で作られており、無自覚であることが多いです。しかし自覚ができるようになると、「嫌われる」という負の妄想から解放されて、「もう一度、伝え方を変えてみようかな」という勇気が湧いてきます。「本当はどうしたいか」と合わせて、自分自身の「セルフイメージ」をとらえる内省ができると、本心の表現だけではなく実現に向けた一歩が踏み出せるようになります。

◆違いを認める最初の一歩は、自分を認めること


 今回、D&Iの実現に向けた内省(本心とセルフイメージの自覚)の必要性を、心理的な側面から解説いたしました。ぜひ、部下に対して内省を深める機会を提供してほしいですが、管理職自身も内省をすることお勧めします。

 「相手の個性を認めよう」とよく言われますが、相手を認めるためには自分自身全部を自分が認める必要があります。逆に自分の本心がわからなかったり本心の実現を妨げるセルフイメージに気づかないと、頭では受け入れるべきとわかっていても、無自覚のうちに自分の本心が拗ねてしまい、心から相手を認めることができず、支援ができません。この観点から、管理職も含めた全員が一度業務から離れて、じっくりと内省する機会を得ることをお勧めいたします。


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コンサルタントプロフィール

R&Dコンサルティング事業本部 チーフ・コンサルタント
大崎 真奈美(おおさき まなみ)

大崎さん

「自律性の発揮」を軸に、イノベーションテーマ創出や、組織革新の支援、管理職育成などをしています。カウンセラーのスキルを活かした個人相談も定評があります。

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