「学び」を「実務成果」へ――KDDIが推進する人財育成の進化(後編)
~自律学習×実践研修による成果創出モデル ~
中期経営戦略「Power‑to‑Connect 2028」のもと、AI前提社会における価値創造を加速するKDDIでは、「人財」を実行力の中核(HR Fusion)と位置づけ、人財育成の高度化を進めています。
2020年8月から導入した「KDDI版ジョブ型人事制度」と連動し、社員一人ひとりの自律的な学びを支える基盤として整備されたのが「KDDI DX University(KDU)」です。
さらに今、学びを通じて社員一人ひとりが「夢中に挑戦」し、その挑戦が実務での価値創出につながる循環を生むことが新たなテーマとなっています。
本記事では、その象徴的な取り組みである「業務プロセス設計研修」の狙いと進化について伺いました。
(計2回に分けてご紹介します。今回は前編に引き続き、後編をお届けします)
所在地(本社) 東京都港区高輪2丁目21番1号 THE LINKPILLAR 1 NORTH
創 業 1984年6月1日
資本金 141,852百万円
従業員 73,198名(連結ベース)(2026年3月31日現在)
所在地(本社) 東京都多摩市鶴牧3丁目5番地3
創 業 2019年4月1日
資本金 1億円
従業員 40名(2025年6月末現在)
インタビュー
・KDDI株式会社 コーポレート統括本部 人事本部
人財開発部 タレントマネジメント推進グループ 久保まりな 氏
・KDDIラーニング株式会社 研修事業部 河合 愼一郎 氏
インタビュアー
JMAC経営コンサルティング事業本部
BPXユニット長 シニア・コンサルタント 梅田 修二

(左から)河合さん、久保さん、JMAC梅田
【目 次】
■学びをどう広げるか――目指すは実践・共有・口コミの循環づくり
JMAC:
ありがとうございます。では集合研修についてですが、受講者は事前にeラーニングと課題に取り組んだ上で参加いただく形ですが、取り組み姿勢や負荷感についてはどのような反応でしたか。
KDDI 久保:
やはり両方ありますね。事前課題は負荷が大きいため、直前キャンセルも一定数ありました。一方で、しっかり取り組んだ方からは「業務に持ち帰れてよかった」「振り返る機会になった」という声も多く、アンケートでも前向きな反応が得られています。
JMAC:
多少の負荷はありますが、自身の業務で実践しないと身につきにくい部分でもありますよね。実際に取り組んだからこそ、講師のフィードバックにも納得感が生まれるのではと感じています。参加される方も意欲的な方が多く、積極的に議論や質問が出ていた印象です。
また、実業務に対して講師からフィードバックを受けられる点について、受講者の反応はいかがでしょうか。
KDDIラーニング 河合:
初年度のコメントを見ると、「業務フローの整理や課題解決の良い機会になった」「他グループの事例や講師からの具体的なコメントが参考になった」といった声が多くありました。特に初年度はグループ受講を推奨していたため、業務に直結した形での気づきも多かったと思います。
JMAC:
初年度は発表時間が短かったため、2年目以降は時間を増やしましたよね。
KDDIラーニング 河合:
そうですね。一方で、事前準備の負荷や時間制約から、すべてをやり切るのは難しいケースもありました。ただ、改善のきっかけにはなっていると感じています。
JMAC:
業務テーマによっても取り組みやすさは変わりますよね。
KDDI 久保:
はい。グループワークは同じ事業本部でまとめることが多いですが、発表では他部署の事例も共有されるため、「他部署の視点が参考になった」という声が多いです。異なる業務でも共通課題が見えたり、自部署に応用できるヒントが得られる点は集合研修の良さだと思います。
JMAC:
依頼側・受け側の視点など、普段見えない観点が得られるのも特徴ですね。
KDDIラーニング 河合:
そうですね。自分の業務だけでは気づけない視点や、他者の考え方からの学びは大きいと思います。そこに講師のアドバイスが加わることで、さらに理解が深まる構造になっています。
JMAC:
研修環境についても、各テーブルにモニターがあり、実際の帳票や画面を見ながら議論できる点は非常に良いと感じました。
KDDI 久保:
そうですね。かなり具体的なレベルまで議論できていると思います。
JMAC:
では、研修後の実践についてはいかがでしょうか。
KDDI 久保:
私自身も受講させていただきましたが、日常業務から一度立ち止まって振り返る良い機会になりました。外部の方に説明することで新たな気づきも得られ、「そもそもこの業務自体が必要か」という視点も持てました。その後、グループ内で共有し、プロモーション方法や講座設計の改善につながるなど、実務にも活かされています。
JMAC:
実際に持ち帰って展開されているのは良い点ですね。
KDDIラーニング 河合:
はい。一方で、研修後のフォローまでは仕組みとしては十分ではなく、実践は受講者に委ねられているのが実態です。この点は今後の課題です。
JMAC:
過去の実践事例を共有できると、さらに広がりそうですね。
KDDI 久保:
そうですね。共通のTipsとして展開できるとより良いと思います。
JMAC:
あと、参加者の声として、「周囲の人に勧められて参加した」というケースもありましたが、御社では何か共有の仕組みがあるのでしょうか。
KDDIラーニング 河合:
特別な仕組みがあるわけではなく、基本的には口コミですね。業務で関わりのある近い人からの紹介が多いと思います。
KDDI 久保:
同じ部署の人が参加していて、「良さそうだな」と感じて参加するケースは、この研修に限らず他の研修でもよくありますね。
JMAC:
なるほど、やはり身近な方の声がきっかけになるのですね。受講後に感想を共有し合うような文化があるのでしょうか。
KDDI 久保:
明確に何か仕組みがあるわけではないのですが、日常の会話の中で自然と話題に上ることは多いと思います。
KDDIラーニング 河合:
そうですね。掲示板のような形で評判を可視化したり、アンケート結果を公開したりといった取り組みは、現時点では行っていません。あくまで現場でのコミュニケーションの中で広がっている形です。
JMAC:
確かに、身近な人からの口コミはリアルで信頼性も高いですよね。「あの人が良いと言っていたから受けてみよう」といった動機につながりやすい印象があります。
KDDIラーニング 河合:
おっしゃる通りだと思います。一方で、今後はアンケートで得られたコメントなどを、講座選択の際に見える形で提示することも検討の余地があると感じています。実際の受講者の声を参考にできるようになると、受講の後押しになるかもしれません。
JMAC:
確かに、口コミに加えてそうした情報があると、より参加しやすくなりそうですね。
KDDIラーニング 河合:
はい。これまで蓄積してきたデータもありますので、今後の展開として考えていきたいと思います。
■学びを止めない仕組みづくり――自律と実践をどう促すか
JMAC:
それでは次に、今後これらの研修をどのように進化させていきたいかについてお聞かせください。
KDDI 久保:
はい。個人の学びを、組織としての成果や挑戦につなげていくことを、より強化していきたいと考えています。個人で完結してしまうと組織に還元されませんし、業務と両立しながら学び、実践するのは簡単ではありません。そのため、上司を巻き込んだ実践や、成功事例の展開など、研修で終わらせず業務に戻ってからも継続できる仕組みが重要だと思っています。
これはどの企業でも難しいテーマだと思いますが、「実務に届く」ことは引き続き重視していきたいです。業務プロセス設計研修は、すでにその方向に近づいていると感じているので、他の研修も同様の形に寄せていきたいですね。
JMAC:
なるほど。継続して実践しないとスキルは定着しませんよね。従来の業務改善研修では、計画書を作成し上長に発表・フィードバックをもらう仕組みもありましたが、そうした要素も有効だと思います。中計が変わったとのことですが、今後強化したいスキルや人財像についてはいかがでしょうか。
KDDI 久保:
社長が掲げる「夢中に挑戦できる会社」という方針のもと、社員一人ひとりが仲間とともに高い目標に挑戦する姿勢が求められています。
JMAC:
それに合わせて研修も継続的に見直していく必要がありますね。
KDDI 久保:
そうですね。求められるスキルはAIの進展などで変化し続けますし、学びに終わりはありません。一方で、積極的に学ぶ人とそうでない人の差もある中で、特に中間層に対して働きかけ続けることが重要だと感じています。KDUは自律的に学べる人には非常に良い環境ですが、自律度が高くない層には「やらされ感」が出やすいです。そのため、自律性を高める工夫と、内容を常にアップデートし続けることの両方が必要だと思っています。
■JMACへの期待とその先――求められる"第三者の視点"
JMAC:
それでは、JMACへの今後の期待についてお聞かせください。
KDDIラーニング 河合:
JMACにお願いした理由でもありますが、コンサルティングの知見が入っている点が大きいです。一般的な研修は汎用的になりがちですが、御社のプログラムは実務への接続が意識されている点に価値を感じています。
今後は、実践までどうつなげるかというフォローアップや、研修後の活用を支援する仕組みなど、もう一歩踏み込んだ支援にも期待しています。
また別の観点では、初学者向けのより基礎的なコンテンツへのニーズも出ています。既存プログラムの改善だけでなく、入門レベルの整備にも期待しています。
JMAC:
ターゲット層に応じたプログラム設計が必要ということですね。
KDDIラーニング 河合:
はい。今のプログラムの前段階として、より入りやすい内容があると良いと思います。eラーニングもやや難易度が高く、業務経験がないととっつきにくい面もあるので、より平易に学べる基礎コンテンツがあると望ましいですね。
JMAC:
入門編を経て本プログラムへ、という流れですね。
KDDIラーニング 河合:
そうですね。一定の経験を踏まえてステップアップする位置づけになると良いと思います。
JMAC:
ありがとうございます。我々としても、コンサルティング自体を進化させ続ける必要があると感じています。AIなどの進展も踏まえ、皆さまの変化に対応できるよう取り組んでいきます。
KDDI 久保:
最近は内製の研修も増えていますが、それぞれに良さと限界があります。外部にお願いする意義は、やはり専門性や他社での実践知にあると思っています。そうした視点から、社内では当たり前になっていることにも切り込んでいただけるとありがたいです。
JMAC:
確かに、外から見ると違って見えることは多いですよね。
KDDIラーニング 河合:
社内の常識が、実は一般的ではないこともありますからね。
■自ら挑戦できる環境へ――「人財」とともに進化するKDDI
JMAC:
当コーナーは様々な企業の方や、就職活動の学生さんなど多くの方にご覧いただいています。最後に、KDDIさんの魅力についてお聞かせいただけますか。
KDDI 久保:
そうですね、やはり大きいのは事業領域の幅広さだと思います。通信事業を基盤としながらも、DXや金融などさまざまな領域に挑戦しています。その中で、多様な人財が集まっているので、自分のキャリアの可能性を広げやすい環境だと感じています。
JMAC:
確かに、選択肢が多い環境ですね。
自分の意思でチャレンジできる機会も多いですし、異動や新しい役割に挑戦することも比較的しやすいと思います。人財育成の面でも、今回のような新しい取り組みにチャレンジできているのは、その環境があるからだと思います。
KDDIラーニング 河合:
「安定」と「挑戦」のバランスが取れている点は特徴だと思います。基盤となる事業がしっかりしている一方で、新しい領域にも積極的に取り組んでいます。
JMAC:
そのバランスこそKDDIさんの魅力ですね。
KDDIラーニング 河合:
ありがとうございます。安心してチャレンジできる環境、という表現が近いかもしれませんね。
JMAC:
本日は貴重なお話をありがとうございました。
本日伺った内容からも、KDDIさんが「人財」を軸に、事業と人財育成の両面で進化され続けていることがよく伝わってきました。今後のさらなる取り組みの広がりを楽しみにしております。