技術力と職場力で未来を創る!
出光ルブテクノ千葉事業所の組織改革事例(後編)
技術力と職場力で未来を創る!
出光ルブテクノ千葉事業所の組織改革事例
~機能子会社の価値向上に向け実践する組織づくり~
出光ルブテクノは、出光興産株式会社の潤滑油事業を担う機能子会社として、2002年に設立されました。同社は、高機能潤滑油の開発支援、製造、物流、営業サポートなど、多岐にわたる業務を担われています。
千葉事業所では、プロパー社員による事業運営への移行に伴い、専門性を活かした組織運営や独自性の確立が重要な課題となっていました。この課題に対処するための取り組みの一つとして、JMACケイパビリティ研修が導入されました。
今回は、この研修を実施した背景や目的、さらにはこれまでに得られた成果について、同社千葉事業所の責任者の皆様にお話を伺いました。
(計2回に分けてご紹介します。今回は前編に引き続き、後編をお届けします)
所在地 〒210-0006 神奈川県川崎市川崎区砂子一丁目8番地1 川崎室町ビル8階
設立 2002年6月
資本金 1,000万円
従業員 333名(出向社員含む)
インタビュー
出光ルブテクノ株式会社 千葉事業所
事業所長 佐藤 勝正 氏
所長代理 吉井 啓 氏
副所長 兼 テクノリサーチ課長 佐藤 智則 氏
インタビュアー
株式会社日本能率協会コンサルティング
R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント 塚松 一也

(左から)JMAC 塚松、出光ルブテクノ 長島さん、下妻さん、佐藤所長、吉井所長代理、
佐藤副所長、山本さん、豊田さん
JMAC:
貴社は機能子会社として、いわゆる事業子会社とは異なり、それぞれの役割を担うことが求められていると思います。このような機能子会社において、人材育成で難しい点をぜひお聞かせいただけますでしょうか。
ルブテクノ 佐藤(勝):
人材育成は当社にとって非常に重要なテーマです。これまで積み重ねてきた固有技術も大切ですが、この先この業界で生き抜くためには新しい技術や価値を取り入れる必要があります。そのための人の育成や教育に関しては、まだまだ知見が足りないと感じており、その進め方に悩んでいるところです。
近年、AIやDXなど新しい技術が登場し、定型業務は自動化が進んでいますが、イノベーションやクリエイティブな活動は依然として重要度が高いです。技術者や専門知識を持つ人材の確保が必須であり、これから新しい価値を生み出していくためにも、どういった戦術をとるべきかが課題です。
昨年の中期経営計画では技術力向上を目指すべく、技術部会を立ち上げ、年度計画に基づいて6つの部会が発足しました。この活動は予想を超える成果を上げ、横断的な技術部会活動による組織全体の新たな価値創出にもつなげて頂きました。今年も新たな部会が立ち上がるなど、主体的に活動するメンバーが増えています。このように、社員が主体的に考え、行動する姿勢が千葉事業所の強みであり、技術者の集まりとしての特徴だと感じています。今後もこのような活動が進展することを期待しています。
ルブテクノ 吉井:
当事業所は研究所という性質上、転勤がほとんどない人が多いのが現状です。不安定な変化をもたらすことなく、長期間同じ場所で勤務することにメリットもあります。親会社との関係が強固になり、私たちの方が長くこの地で勤務しているため、過去の状況についてもこちらがより詳しいこともあります。それは強みでもあると思います。
ただ、どうしても同じ考えを持つ人たちで閉じられたコミュニティになりがちです。自分が育った環境の価値観にとらわれてしまって、視野をどう広げていくかが課題ですね。また、技術者の育成も世の中の変化に追いつくためにますます重要になっており、変化のスピードも速まっています。
これまで、実験装置や試験機器への投資には力を入れてきましたが、人への投資はあまり積極的に行ってこなかったと感じています。特に技術者として専門性を高めるほど、その領域に閉じこもりがちになります。そういった環境の中で、人材開発をどう進めるかが、今後の課題だと感じています。
ルブテクノ 佐藤(智):
私たち機能子会社にとって、最も重要なリソースは「人」であり、組織の成長は人の成長によって支えられているといっても過言ではありません。現在の中期経営計画では、部署を越えた横断的な活動やプロジェクト活動を計画し、社員の主体性や自律性を重視しています。具体的には、上から指示するのではなく、社員自らが手を挙げてテーマを企画し、取り組む形にしています。これにより、社員の自主性を尊重し、成長を促すことを目指しています。最終的には、このような人材育成が事業所の発展に繋がるのではないかと思っています。
JMAC:
JMACへの期待などございましたら、率直にお聞かせいただけますでしょうか。
ルブテクノ 佐藤(勝):
どうしても自分たちだけでは視野が狭くなり小さな枠の中で物事を考えてしまいがちです。ですから、外部の視点、特に科学的な観点からアプローチしていただくことで、これまでになかった新しい考え方や視点に触れることができるのではないかと感じています。自分がこれまで描いていた「組織のあり方」とは異なる視点で将来を見据えることができ、この研修を通し大変有意義な時間を過ごせたと実感しました。
これからも塚松さんをはじめ、皆さんとのお付き合いの中で、さまざまな情報やアドバイスをいただけたらと思っています。時には私たちの悩みを聞いていただくこともあるかもしれませんが、そうした言葉のキャッチボールを通じて、より良い形を一緒に築いていけることを期待しています。
ルブテクノ 吉井:
私どもは機能子会社として成長を重ねてきましたが、個人で外に出ることは可能でも、集団で外部に出るという形はなかなか難しい現状があります。そんな中、塚松さんは、外での多くの経験を踏まえ、私たちの目線に合わせた話をしてくださったり、課題を通して新たな視点を示してくださったりと、背中を押していただけたことが大きな自信につながりました。私たちの不足している部分を指摘していただき、それを改善につなげていくことは、組織全体の成長や課長級のリーダーシップの向上、さらには若手人材の育成にも大きく寄与すると感じています。このような機会を得られたことを、大変ありがたく思っています。
ルブテクノ 佐藤(智):
今回のケイパビリティ研修では、教科書的な内容ではなく、オーダーメイドで研修をデザインしていただきました。これこそがJMACさんの強みではないでしょうか。今後も、その時々のニーズに応じた研修を提供していただきたいと思っています。
■最後に貴社のアピールポイントについてお聞かせください
ルブテクノ 佐藤(勝):
千葉事業所のアピールポイントは、何と言っても技術力です。当社は仕事で壁にぶつかったり悩みが生じたりしたとき、職場全体でサポートし合い、助け合う文化が根付いています。社員同士が自然に支え合い、横のつながりが組織全体の強みをさらに高めていると感じています。千葉事業所はとても素晴らしい職場です。皆さんを心から誇りに思っており、これからも一緒に時間を過ごしながら、目標に向かって成長していきたいですね。
ルブテクノ 佐藤(智):
私たちのリソースの核となるのは「人」だと考えています。社員一人ひとりが成長することで、この千葉事業所は継続的に付加価値を生み出していると感じています。当事業所は中途入社の社員がほとんどで、私自身も中途入社です。社員それぞれが異なるバックグラウンドや経歴を持ち、その多様性が事業所の大きな強みであり特徴ではないでしょうか。
そして、この多様な人材が事業所の活性化に大きく貢献していると思います。また、社員同士の横のつながりは非常に活発で密です。そうした関係性が、千葉事業所の良い雰囲気や形を作り上げているのではないかと感じています。
ルブテクノ 吉井:
当社では、採用時に「事業所採用」という形を取っています。他の会社のように人事部門が一括で新卒採用を行い、その後各部門に振り分ける形式ではありません。このような採用の仕組みが、当社の強みの一つではないかと感じています。また、研究所に近い環境でしっかりと試験に取り組みたいと考える方にとっても魅力的な職場だと思います。
さらに、技術向上活動に関しても特徴的な取り組みがあります。同じ部署のメンバーだけでなく、他部署や異なる課の人と協力し、テーマを持って取り組むことができる環境を整えています。たとえば、実験部門の社員同士や試験部門の社員同士が集まり、新たなアイデアややりたいことを実現できる仕組みがあります。このような活動を通じて、社員が自然に「やりたいこと」を見つけ、それを実現できる場が用意されていることは、当社の大きな強みだと思います。実は、この取り組みが始まったのも、私たちの世代ではなく、係長級以上の社員が集まった場で「やりたいことができる会社にしよう」という声から自然発生的に生まれたものです。
このように、現場の声をもとに制度を整えていく文化が、当社の特徴として強みへとつながっています。機能子会社という立場や転勤のない小規模な会社にはもちろん課題もありますが、それを特徴として捉え、活かしていける部分はまだまだ多いと考えています。このような強みをさらに磨いていきたいと思っています。
ルブテクノ 佐藤(勝):
これまで繰り返しお話ししてきましたが、私たちの業態において「技術」という要素は避けて通れません。仕事においてよく「量より質」と言われますが、質を高めるためには一定の量をこなすことも大切です。これらを持続的成長の機会として捉え、挑戦することが成果につながると考えています。
最初は量を重ねることから始まり、やがて質の高い仕事を繰り返すことで、私たちに求められる技術を磨き上げ、基礎力を高めていく必要があります。この取り組みは、現在の中期計画での部会活動や、新しい挑戦を行っている若手社員の取り組みにもつながっています。これら新しい技術への挑戦が、次の世代のベースとなり、新たな知識向上や価値創出へと発展していくと思うのです。
こうした知識向上活動を継続的に行うことで、私たち自身の価値が高まり、事業所としての存在意義や価値も守られていきます。これは私たちにとって重要な財産であり、社員にそのような場を提供することは私たちの責務でもあります。また、これまでと同じことを繰り返すのではなく、新しい工程や技術に挑戦し続ける姿勢を持つことが不可欠です。私たち自身が、固定観念に縛られず新たなことにチャレンジすることで、次世代に未来への道を示していきたいと思っています。
JMAC :
ありがとうございます。本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。